部屋のガラス張りからは東京の景色を220度眺めることができた。男が僕の書いたレポートを読んでいる間、僕は自分で用意したビール(ワインを用意していたが、僕はまだ、それに見合うだけの働きをしていなかったのだ。)の缶を持って、蛍光灯と建築と都市計画の産物を睨んでいた。「夢がみれないって?じゃあ、きみは何がしたいんだ?」という歌詞を思い出した。フルカワが僕にいくつかレポートの足りない部分を質問して、その場で答えられるものに全て答え、分からないものは調べて置くと振り返りもせずに答えた。彼が眼鏡を押し上げながら、ソファに身をうずめると、僕は振り返って、部屋一面一杯に生えて天井に届きそうなレコードの一群を眺めて、飢えることについて考えていた。「昨日の夜、こういう夢を見たんです。太った女がひたすら肉を食っている。部屋には僕と彼女以外にはいなくて、ひたすらその女は肉を喰っているんです。僕は恐ろしくなって、彼女を止めようとしたんですが、彼女は構わずひたすら肉を喰っていました。それで、朝目が覚めて、その女の子こと、彼女はアイドルだったんです。ほら、最近流行ってる、あの太ったアイドルの一人で。」僕はビールを一口飲んで、それからフルカワのいつもの会話を引きちぎって全く別の会話に繋ぐ返事を待ったが、あいにく無かった。無かったので、その続きを話した。「実は、一度、僕が書いているブログ、ほら、例の。」「いつか、匿名で書いててもバレるよ。言葉は人の全体を表す。分かる人間なら、すぐにね。」「構わないです。それで、あそこでその夢のことを書いたら、コメントが書いてかって。それが、どうにも、その顔の人からの書き込みたいなんですよ。」フルカワが手前のテーブルに置いてあるノートPCを膝に載せて、開いて、ページにアクセスした。「奇妙な話じゃありませんか?」「確かに。」「でも、もしそうなら、僕はその真相を知りたい。」フルカワは眼鏡を押し上げて、僕を一瞥した。

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