書くことについて(仮) 33/100
2008年8月1日 コミューンと記録メモと書くこと電車で目覚めると電車に乗ってから2時間半乗っていて、端から端までが40分前後だったことを考えて、少しうんざりして自分の最寄り駅に降りた。いつものようにうんざりするような階数を登っていると髪の黄色い男とすれ違った。僕は昨日の夜のことを思い出して、恐れなく「あなたはカロリーメイツの曲を書いている人ですよね。」と臆面無く尋ねると、男はぷんっといった風に目を向けた。きっと困ったときにする癖なんだと思う。酔いの抜けきっていない僕は彼をハグして離すと、彼は驚嘆した表情だけれど、それはどことなく”そうあったはず”のようなことに思えた。僕は「じゃあね。」と手を振って彼の脇をすり抜けて階段をよたよたと登って部屋のカギを手間取りながら探し出すと、やっとだ、と安心してベッドに倒れ込んで夢を見た。
下北沢のラブホテル・アンドレに302にいる男と女を真上から見下ろす構図だった。朝の5時でオールで飲んだ連中の騒ぎ声がときおり聞こえた。女は神経を患っていた鬱病の女で摂食障害と睡眠障害をミックスした鬱病だった。眠りから醒めてしまうことに男は知らぬ間に慣れていて、彼女が起きると、いつもそれに合わせて男はふと眠りから醒めた。「起きちゃった。」と言う女の顔に見覚えがあった。"赤"だ。部屋に喘ぎ声が聞こえた。隣の部屋の声が薄い壁を通して女の高い声が聞こえてきた。男は苛立っていた。部屋は真っ暗で、何の光もなかった。テレビの待機中の蛍光灯も見えなかった。本当の真っ暗闇だった。喘ぎ声ばかりがその二人の間の沈黙を満たしていた。男が苛立っている理由は、その眠りに就く前、散々酒を飲んだ"赤"が理由もなく男が求めるのを拒絶したからだった。いや、理由はきっと十分にあったんだと思う。けれど、男にはもうそれが本当にインチキで取るに足らないものだと分かっていた。そのホテルに入って喋った時、女は「昨日セックスしたわ。」と言ったことを思い出した。隣の部屋から聞こえる声は理不尽な暴力みたいだった。男は隣の部屋の男と自分に成り代わりたいと思った。何事も難しくしようとしない、シンプルで実直な女を抱きたいと望んだ。"赤"が男を抱き寄せようとしたが、男はそれを拒んで背を向けて、それから身体を丸めて目をぎゅっとつむった。女の声が聞こえなくなった。僕はその男が段々と握りつぶされた煙草の箱に見えてきた。箱の中には血と肉が詰めてあって、ぐちゃぐちゃになった箱から血が流れ出して、中の内蔵がめちゃくちゃになった。なんで、こんなに複雑になってしまうんだろう。いつもいつもいつも男を囲い込む環境は複雑で、直線的に手に入った物は何一つ無く、正しい場所にあるべき物は間違った場所に置かれ、複雑さはその難解さを深めた。はなんでこんなことになったのか必死に考えたが、男すぐにどうでもよくなって、その思考の無い場所に注ぎ込まれたのは理不尽な世界に圧縮される自分だけだった。女の声がまた聞こえ始めた。その声はさっきより少し高く本能的というよりも少し意識が感じ取れた。「もう・こんなところには・いられない」そしてそのとき突然、男は"赤"を殺したくなった。声にならない呻き声を吐き出した。誰かを殺したいと思ったのは生まれて初めてだった。身体がこわばって行くのが分かったし、全身の骨格が不快さでもって感じ取れた。振り返って首をしめたいと。振り返って罵声を浴びせるのでもない、平手や拳で殴るのでもなく、髪を掴んで部屋中を引きずり回るのでもなく、有無の余地無く、最小限の動作で両手を首に当てたいと思う純粋な、そう、混じりっけの無いピュアな殺人衝動で一杯になった。
男は振り返った。自分が無表情なのが分かった。一瞬、怯えた表情で身体をびくっと震わせた"赤"の顔を見て、それから男がしたのは、全くの無感情で持って女を抱き寄せることだった。髪を梳きながらながら抱いていると、女の声がまた聞こえ始めた。首筋に荒い息がかかるのが分かった。
下北沢のラブホテル・アンドレに302にいる男と女を真上から見下ろす構図だった。朝の5時でオールで飲んだ連中の騒ぎ声がときおり聞こえた。女は神経を患っていた鬱病の女で摂食障害と睡眠障害をミックスした鬱病だった。眠りから醒めてしまうことに男は知らぬ間に慣れていて、彼女が起きると、いつもそれに合わせて男はふと眠りから醒めた。「起きちゃった。」と言う女の顔に見覚えがあった。"赤"だ。部屋に喘ぎ声が聞こえた。隣の部屋の声が薄い壁を通して女の高い声が聞こえてきた。男は苛立っていた。部屋は真っ暗で、何の光もなかった。テレビの待機中の蛍光灯も見えなかった。本当の真っ暗闇だった。喘ぎ声ばかりがその二人の間の沈黙を満たしていた。男が苛立っている理由は、その眠りに就く前、散々酒を飲んだ"赤"が理由もなく男が求めるのを拒絶したからだった。いや、理由はきっと十分にあったんだと思う。けれど、男にはもうそれが本当にインチキで取るに足らないものだと分かっていた。そのホテルに入って喋った時、女は「昨日セックスしたわ。」と言ったことを思い出した。隣の部屋から聞こえる声は理不尽な暴力みたいだった。男は隣の部屋の男と自分に成り代わりたいと思った。何事も難しくしようとしない、シンプルで実直な女を抱きたいと望んだ。"赤"が男を抱き寄せようとしたが、男はそれを拒んで背を向けて、それから身体を丸めて目をぎゅっとつむった。女の声が聞こえなくなった。僕はその男が段々と握りつぶされた煙草の箱に見えてきた。箱の中には血と肉が詰めてあって、ぐちゃぐちゃになった箱から血が流れ出して、中の内蔵がめちゃくちゃになった。なんで、こんなに複雑になってしまうんだろう。いつもいつもいつも男を囲い込む環境は複雑で、直線的に手に入った物は何一つ無く、正しい場所にあるべき物は間違った場所に置かれ、複雑さはその難解さを深めた。はなんでこんなことになったのか必死に考えたが、男すぐにどうでもよくなって、その思考の無い場所に注ぎ込まれたのは理不尽な世界に圧縮される自分だけだった。女の声がまた聞こえ始めた。その声はさっきより少し高く本能的というよりも少し意識が感じ取れた。「もう・こんなところには・いられない」そしてそのとき突然、男は"赤"を殺したくなった。声にならない呻き声を吐き出した。誰かを殺したいと思ったのは生まれて初めてだった。身体がこわばって行くのが分かったし、全身の骨格が不快さでもって感じ取れた。振り返って首をしめたいと。振り返って罵声を浴びせるのでもない、平手や拳で殴るのでもなく、髪を掴んで部屋中を引きずり回るのでもなく、有無の余地無く、最小限の動作で両手を首に当てたいと思う純粋な、そう、混じりっけの無いピュアな殺人衝動で一杯になった。
男は振り返った。自分が無表情なのが分かった。一瞬、怯えた表情で身体をびくっと震わせた"赤"の顔を見て、それから男がしたのは、全くの無感情で持って女を抱き寄せることだった。髪を梳きながらながら抱いていると、女の声がまた聞こえ始めた。首筋に荒い息がかかるのが分かった。
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