「そこでいきなり彼女の隣に行って始めるんでも良かったけど、こういう経過はゆっくり楽しみたいし、彼女が緊張している様子を見ているのが楽しかった。とりあえず、ここまで来てるんだから彼女が酔っぱらっている必要もない。課金制の冷蔵庫からポカリスエットを取り出す。あのボタンを押すとカシャッとなるのも好きだ。ホテルでセックス以外のお楽しみの3つに入っている。風呂、冷蔵庫、それから、オモチャが入っている販売機。3つ目に関しては、これ使ったことないからやってみたい、という初めて感を出しながら、毎回ピンクローターを買うのが僕のなかで恒例になっている。ポカリスエット2本を買って、彼女に渡す。両手で缶を持ってゆっくり飲んで虚ろな顔をして、唐突に『トイレどこ?』と訊くから、僕は指さしてトイレとバスルームが透明のガラスの仕切りで区切られた部屋への扉を指差す。彼女がいなくなったとき、なんとなくテレビをつける。初めてラブホテルを使ったとき(確か高校2年の時だったと思う。出るときに金が足りなくなるかと思ったあのときだ。)に、ZAZEN BOYSの『USODARAKE』のPVが流れていた。あのとき、あの場所で彼らが椅子に座ってセッションしている映像を観ていたときの、あの感覚をそれからもずっと振り払えない。AVの内容は、ひとつはコンパをやっているうちに段々と乱交になっていくという内容のものと、綺麗な女性(35過ぎで疲れた顔と幼い子供みたいな期待に満ちた目をした不思議な顔つきをしていた)が車でフェラチオしたりする内容だった。前者は、コンパの途中で抜けて行った男女がトイレでセックスして戻ってきて、二人は何事もなかったみたいな素振りをするのだ。これと同じ経験をした女性を僕は知っている。コンパの途中の移動のときに二人で消えて、ホテルに行っていきなりセックスをしてしまう、という話をその女性のブログで読んで、僕は世界の果てで起きたみたいに距離を感じた(なぜなら当時僕はそのブログの一読者だったし、彼女もまた、僕のブログの読者にすぎなかった。僕は彼女に憧れていた。僕にとって彼女は、偶像だった。それと同じくらい、彼女も僕に気持ちを寄せていたと、後々知った。)けれど、それと同じくらいアブノーマルな経験を彼女(そのブログを書いている女の子に)としたときに、奇妙な感覚になった。ある場所とある場所は、現実感覚で遮られているはずなのに、いつのまにか、気付くとその反対側に自分がいて、ありえないはずの現実にいる。僕は後にこれを模倣したちょっとした遊びをすることになる。彼女が長めのトイレから戻ってきた。代わりに自分がトイレに入って、用を済ませる。バスタブにお湯を張る。鏡をみて自分の顔を見ていると、なんとなく、冴えていない気がした。酔っていて赤らめた顔のせいか、深刻そうな顔つきのせいか、備え付けのプラスチックのコップで水を飲んで、顔を洗って、鏡をみたけれど、そこにいる男はどこかに閉じ込められているみたいだった。部屋に戻って彼女はさっきのAVを眺めていた。『あんな綺麗な人がなんでAVに出るんだろう。』と独り言みたいに言った。『いちど有名な私立大学のミスキャンパスを取った女の子が出ているAVをみたことがあるよ。なんかナルシストみたいなセックスの仕方だったな。』と答えた。なんでこんなことを話しているんだろう。場所が悪いのかもしれないと思った。家でするときはもっともっと穏やかで親密にいることができるのに。借り物の空間が僕たちのナイーブさを奪ってしまうのかもしれない。テレビの電源をリモコンを使わずに本体のスイッチから切って、僕はベッドに座って、靴下を脱いだ。かすかにお湯が湯船に溜まる音が聞こえてそれが無音を壊していて、やっぱり、お湯を張る必要はなかったと思った。『こっちに来なよ。』と僕は言った。」
「キスをして、服を脱がして、身体を舐めて、入れて、終わり。で、済めば良かったんだけど、彼女に触れているうちに、その未発達さに気付き始めたんだ。鈍く削げ落ちていない身体の肉や、大きくなっていない胸とか、それよりも僕を躊躇させたのが、彼女のぎこちなさだった。乳首を舐めているときのどうすればいいのかがはっきりしないような反応もそうだし、『舐めて』って僕が彼女に頼んだときに、彼女がアイスクリームを舐めるみたいにしたときとかね。別にそれが悪いって言っているわけじゃないんだけど、ほんとにそれで終わり。ぺろぺろ、はい、終わり。っていう感じ。」と僕は言って自分で笑った。ちょっと可愛らしい表現だと思った。「もしかして、って、思い切って不思議そうに僕のあれを眺めている彼女に訊いてみたんだ。『初めてなの?』って。彼女は頷いた。『訊いてなかったけど、年いくつなの?』って言うと彼女は平然と『17』と答えた。それで考えが混乱した。『ごめん、とりあえずちょっと舐めて。』彼女が熱心にそれを舐めたり擦ったり捻ったりしているあいだ、横たわって彼女の頭を撫でながら、天井を僕は見上げていた。」いつの間にか耳栓を外していたユキが僕に訊いた。「どうやって舐めればいいの?」急いでマリコは耳を塞ごうとしたけれど、席を立って僕の膝の上に飛び乗った。そこは勃起していてヤバい!と思ったけれど、もう遅かった。ユキは嬉しそうに笑っているし、窓からスクランブル交差点で何方向からも交差していく粒のような人達をもっとシャープな表情で見ていた。僕はユキを隣の席に戻すと彼女は僕に「それでどうなるの?入れちゃうの?初めてなのに。痛いんでしょ。泣いた?」と質問を何個もしたけれど、僕は周りを見回してから、答えた。「まだ知らなくてもいいんじゃないかな。」と彼女にいうと「私、小説家になりたいの。」と言った。それがなぜか僕を納得させたし、なんとなく敬意を起こさせた。「別に僕は彼女が女子高校生で、しかもヴァージンだからって興奮したりしなかったよ。むしろ、気が重くなった。ひと仕事やらなきゃいけないっていう感じかな。楽しいことなんて何もない。彼女の身体をたぐり寄せて、彼女のあそこを触り始めるとばっちり濡れていたよ。彼女が固くなっているから指に涎をたっぷりつけて彼女を擦ったんだ。」「彼女のどこを擦ったの?」とユキは訊いたところで、マリコが口を挟んだ。「ねぇ、あんた絶対頭おかしいと思う。」物凄く怒っているように見えたし、実際に怒っていたんだと思う。「そのへんは自習して。」と言って話を続けた。「彼女の身体がビクついて腰が動いていた。腰が動くと、彼女を触るのが難しくなるから、彼女の身体を押さえつけた。とにかく、いつもより時間をかけてしていた。たぶんそれだけでも30分くらいそうしていたと思う。でも彼女はイったりしなかった。」「どこに行ったの?」僕は無視しようかと思ったけれど、それはよくない気がして「それも自習して。で、彼女の中に入れるときにはできるだけ丁寧にしようと思ったけれど、それでも痛がったよ。物凄く痛がって『痛い。』って下唇を咬みながらシーツをぎゅっと握っていたよ。できるだけ、早く済ませようと思ったけど、そういうときに限って全然終わらないんだ。たぶん、昔、物凄く沢山手で擦られて、イかないまま入れて、3秒くらいで終わって、その女の子に『えっ』って言われたときのトラウマのせいだと思う。無意識のなかで身体が失敗を繰り返さないようにしているんだと思う。結局5分くらい動かしていたけど、彼女が涙をすこしだけ流したときに気持ちが沈んで抜いたよ。ゴムを取ってゴミ箱に捨てて、彼女を抱き寄せて毛布をかけて声をかけた。『痛かった?』って訊くと彼女は僕に甘えるように抱きついて何も言わなかった。心のなかで溜め息をついた。僕は2重にフラストレーションを溜め込んだまま彼女を慰めていた。彼女が眠ったところでシャワーを浴びて返り血を流して、風呂に浸かりながら自分が何をしているのか分からなくなったよ。初めてナンパした女の子が実は女子高校生で、しかもヴァージンで、初めてのデートで僕はその女の子とセックスをした。21才の思い出。」

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