Fine Romance 64/100
2009年4月20日 コミューンと記録メモと書くことマンガ喫茶を出ると、17時半で、暗い店内から暗い街に出ると違和感がなくて、暗い場所しかどこにもないみたいだと思った。雑然とした人ごみに紛れて僕たち3人は渋谷駅のほうに歩いて行った。それぞれ違う服を着て違う考えや違う生き方をしているはずなのに、みんな同じように見えるのはなんでだろう。駅に着くと僕たちは解散した。ユキは東横線に、マリコは井の頭線のほうに、僕は「買い物をしてから帰る。」と言って、また街のほうに歩いて行った。マリコからメールが届いた。メールアドレスを彼女が知っているのはユキが帰りにトイレに行くときに彼女が僕に聞いたからだ。そして、ユキがトイレから戻ってくるまでの数分で連絡先を交換すると、彼女は「パソコン探したいんだけど一緒に探してくれない?元プログラマでしょ。ユキちゃんは門限があるから、別れたあとに、連絡するね。」と言って、僕は断ることができなかった。求められると与えずにはいられなくなったのはいつからだろう。「分かった。いいよ。」とだけ答えて、そして実際に彼女からメールが届いた。「19時にアップルストア前ね。」と彼女は絵にリンゴの絵文字とハートの絵文字をつけてよこした。時計を見ると18時で、彼女が時間を少し遅くしたことに何か意味を見つけようとして、僕はやめた。空いている時間にタワレコの七階の本が置いてあるフロアに行って、僕は小説の参考のために女性のファッション誌を立ち読みを始めた。一ページあたり0.3秒くらいのペースで流し読みをしながら、気に入った洋服か、気に入った女の子か、その両方が備わった写真か、そのどれかが見つかったときだけ、ページをめくるのをやめて目に焼き付ける。海外国内合わせて30種類くらい棚に置いてあったファッション誌のなかで気に入ったのはフィガロジャポン、エルジャポン、ギンザ、ファッションニュース、ギャッププレス、ストリート。それにしても海外のファッション誌はなんでこんなに沢山広告が入るんだろうと考えていた。広告7割、雑誌の内容3割くらい。フィガロジャポンとフィガロはそういう理由もあって全く別物の雑誌みたいに思えた。流し読みをしながら、そのファッションを眺めても、その洋服のブランド名はともかく、スカートとかジャケットとか、そういう名詞をほとんど知らない自分に気付いて文章にすることが難しいことに気付いて、写真集のコーナーを睨んでいると、隣に座っている(立って読むのが辛くなって、長椅子を見つけて座った。)のが、あるファッションデザイナーだってことに気付いた。彼女はアートの写真集を眺めていて、イヤフォンで音楽を聞きながら話しかけないでほしいし、構ってくれるな、という雰囲気を全身から発していたし、その度合いが一種の無礼に当たるんじゃないかとすら、僕は思った。ふと、時計を見ると七時。イヤフォンをつけて知り合いのミュージシャンの曲を聞きながら、もし、しかるべきルートを辿ればどんな有名人や権力者と知り合うことができるんじゃないかと気付いた。例えば、さっきの女の子や、アイドルとか、奇形と言えるくらいの美人とか。そういった卑屈さ、つまり、著名な人間と仲良くなることで優越感を感じることを僕はいつからか認めるようになっていた。誠実という言葉が、欲望に素直であるっていうことだと気付いたからだ。その対象を妬むくらいなら、その対象のようになるか、それが今すぐできないなら、その次に来るのはその対象に近づくことだ。そして僕はそういうったことについて考えるたびに、その社会的な力に基づいた本能とはまったく違う種類の、とても個人的な社会から切り離されたとしても、表現すること自体の純粋な楽しみがあることも知っていた。自分がジャッジを下す善し悪し、それだけを頼りに美しいものや、とにかく素晴らしいものを作り上げるときの、あの自分を忘れて行く感覚。無意識に近いあの感覚があらゆるものを自分から遠ざけていく、あの短い時間が最高の報酬になる。
アップルストアのまえで人だかりが出来ていて、そのなかに彼女を見つけた。「人多いね。」と見たままの情景を彼女に伝えて、いちど店の外に彼女と出た。「知り合い。」と言って指さした先に髪の黄色い男がいて、あぁあれはカロリーメイツの曲作ってるやつじゃなかったけと思い出した。それからふと、数珠つなぎのように別のことも思い出した。フルカワが開いているパーティーで、あの男にほかの女が寄り付かないように、抱くように身体に触れていたのは、この目の前にいるマリコだった。わざわざ僕を連れてくるっていうことは、当てつけのためなのか。向こうが僕たちを見たのかどうかはよく分からなかったけれど、彼女はそれで満足したみたいで、「ご飯たべにいこ。」と言って坂を登ってカフェ・アプレミディに入った。向こうが僕と寝る気があるのかをできるだけ遠回しに「お酒頼む?」と聞いて、彼女は「どっちでもいいよ。」と言った。女の子らしい答えだ。二人で適当にカクテルを頼んで、目についたメニューを二つ頼む。ソファで隣に座る彼女を見て、またおかしなことになったと思った。知り合った女の子がジャンキーだったり女子高校生だったり、今日(しかも誕生日に)はアイドルだ。酒を飲んで女の子と話したことなんて、たいがいいつも忘れるものだから、その日も、とりとめのないことを話して、気付いたらビール5杯目。僕の足と彼女の足が当たる。こうなることは最初から分かっていた気がする。時計をみると10時をまわっていた。中途半端な時間になったし、これより多く酒を飲んでそのままラブホテルに行くのも芸が無いと思って、ダーツに誘った。トイレで前にこの店に来たときのことを思い出していたけれど、僕が思い出せるのは、デートの最初から最後までその女の子が自分に合わないって感じていたことだ。もっと正直に汚い話をするなら、彼女の容姿が自分と釣り合わないと思っていたことだった。そういう違和感を無視できなかった。だからといってその頃は、女の子を口説くのは下手だったから彼女を乗り換えるのも上手くできなかった。彼女といるときに感じていたのは、生温い安心と、そこはかとない敗北感だった。そう、これを読むあんただってちゃんと分かるはずだ。水を流して、彼女と店を出た。振らついている彼女を眺めているときに、そのだいぶ前に付き合っていた彼女のことを思い出した。背が小さくて鼻が低くて口が大きい。彼女はアトピー性皮膚炎で、彼女のザラザラした肌が僕を悲しい気持ちにさせたことを思い出した。初めて投げる彼女が6点の的に当てた。喜ぶ彼女の頭を撫でて、ジントニックを一口飲んで、投げる。このゲームのコツは前に一度(その時初めてだったけど経験者の友人に勝った。)やった時に自分で発見していた。左下の16、7、19、の場所がいちばん点数の配分がいい。だから、意識的に左下を狙って投げていれば、それだけで相手が真ん中を狙って投げて適当な的にダーツが刺さるよりずっと効率よく点数を取れる。どんな世界にもこの左下のような効率よく点数を稼げる部分がある。仕事も、芸術も、女の子だって同じだ。店ではOasisの『Live Forever』がかかっていて、彼らの音楽をきくたびに、彼らは音楽にとってのダーツボードの左下を見つけてそこにダーツを投げ続けたんじゃないかと思った。途中から、自分が勝ったらやっぱり彼女が面白くないだろうと思って適当に放っていた(彼女は僕がその効率の良い投げ方をしていたことには最後まで気付かなかったし、種ばらしもしなかった。)ら、なんとか点数が同じくらいになって、僕は彼女に勝たせた。
アップルストアのまえで人だかりが出来ていて、そのなかに彼女を見つけた。「人多いね。」と見たままの情景を彼女に伝えて、いちど店の外に彼女と出た。「知り合い。」と言って指さした先に髪の黄色い男がいて、あぁあれはカロリーメイツの曲作ってるやつじゃなかったけと思い出した。それからふと、数珠つなぎのように別のことも思い出した。フルカワが開いているパーティーで、あの男にほかの女が寄り付かないように、抱くように身体に触れていたのは、この目の前にいるマリコだった。わざわざ僕を連れてくるっていうことは、当てつけのためなのか。向こうが僕たちを見たのかどうかはよく分からなかったけれど、彼女はそれで満足したみたいで、「ご飯たべにいこ。」と言って坂を登ってカフェ・アプレミディに入った。向こうが僕と寝る気があるのかをできるだけ遠回しに「お酒頼む?」と聞いて、彼女は「どっちでもいいよ。」と言った。女の子らしい答えだ。二人で適当にカクテルを頼んで、目についたメニューを二つ頼む。ソファで隣に座る彼女を見て、またおかしなことになったと思った。知り合った女の子がジャンキーだったり女子高校生だったり、今日(しかも誕生日に)はアイドルだ。酒を飲んで女の子と話したことなんて、たいがいいつも忘れるものだから、その日も、とりとめのないことを話して、気付いたらビール5杯目。僕の足と彼女の足が当たる。こうなることは最初から分かっていた気がする。時計をみると10時をまわっていた。中途半端な時間になったし、これより多く酒を飲んでそのままラブホテルに行くのも芸が無いと思って、ダーツに誘った。トイレで前にこの店に来たときのことを思い出していたけれど、僕が思い出せるのは、デートの最初から最後までその女の子が自分に合わないって感じていたことだ。もっと正直に汚い話をするなら、彼女の容姿が自分と釣り合わないと思っていたことだった。そういう違和感を無視できなかった。だからといってその頃は、女の子を口説くのは下手だったから彼女を乗り換えるのも上手くできなかった。彼女といるときに感じていたのは、生温い安心と、そこはかとない敗北感だった。そう、これを読むあんただってちゃんと分かるはずだ。水を流して、彼女と店を出た。振らついている彼女を眺めているときに、そのだいぶ前に付き合っていた彼女のことを思い出した。背が小さくて鼻が低くて口が大きい。彼女はアトピー性皮膚炎で、彼女のザラザラした肌が僕を悲しい気持ちにさせたことを思い出した。初めて投げる彼女が6点の的に当てた。喜ぶ彼女の頭を撫でて、ジントニックを一口飲んで、投げる。このゲームのコツは前に一度(その時初めてだったけど経験者の友人に勝った。)やった時に自分で発見していた。左下の16、7、19、の場所がいちばん点数の配分がいい。だから、意識的に左下を狙って投げていれば、それだけで相手が真ん中を狙って投げて適当な的にダーツが刺さるよりずっと効率よく点数を取れる。どんな世界にもこの左下のような効率よく点数を稼げる部分がある。仕事も、芸術も、女の子だって同じだ。店ではOasisの『Live Forever』がかかっていて、彼らの音楽をきくたびに、彼らは音楽にとってのダーツボードの左下を見つけてそこにダーツを投げ続けたんじゃないかと思った。途中から、自分が勝ったらやっぱり彼女が面白くないだろうと思って適当に放っていた(彼女は僕がその効率の良い投げ方をしていたことには最後まで気付かなかったし、種ばらしもしなかった。)ら、なんとか点数が同じくらいになって、僕は彼女に勝たせた。
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