それから僕はブログに最近あったことを書いた。小説が進まないときはいつも、小説ではない形式で文章を書くことにしている。
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2009/8/16
20:00頃 フランフランとクレープ屋の間の坂道 1
綺麗な女の子を見つけてつけて行くけれど、パルコの前のユニクロに入って、地下一階で試着待ちになって声のかけようがなくて終わる。
20:20頃 渋谷ビブロ 2
料理の本を探している女の子に声をかけようとした。レジ前の料理本のところから、料理の本だけが置いてあるところにいるところで声をかけようとして、彼女がまたレジ前のほうに移動して、そこで距離をつめようとしたところで逃げていった。
地下から一階に登るエスカレータで後ろにいたけれど、凄い歩行速度で地上で距離を開けられて逃げられる。黒い服。ジルスチュアートのカタログに出ているような服。黒い髪。幼い顔立ち。ある種の雑誌のモデルにはうってつけ。
20:40頃 渋谷ツタヤ3階 3
一瞬目があって、R&Bのコーナーで二人でかなり良い感じの雰囲気になる。ところどころの湿疹と、何かがねじ曲がっているように感じる歩き方。
二人でいるときの濃密な空気で心臓が高鳴り過ぎて気を落ち着かせようと息を整えた。
彼女のそばにもう一度寄ると、彼女は手に持っていたCDがどこにあるかを示す紙を落とす。僕が拾うにしては彼女との距離がありすぎる。拾いようがない。それとも、心がそこにないことを僕に示すジェスチャーだったんだろうか。だとしたら、結構気が利いている。昔、いちど声をかけようとした女の子がそういう本棚にある本を片っ端から何度も落としているんだけど、顔は平然としている、というのを目前にしたことがあって、それを思い出した。ちなみにその時は声をかけなかった。
彼女は2の彼女にルックスが似ている。テンプレート。3の彼女のルックスといえば、シャープな顔つきで、どちらかといえばつり目(そのせいで僕は人は自分に似た人といると安心するという法則を思い出す)で、目にピンク色のアイラインをしていた。ジーンズ生地のミニスカート、灰色のニーハイソックス、他は覚えていない。僕が緊張し過ぎていた。彼女との今にもその場で繋がってしまいたくなるような直接的な空気を文章で表現するのは難しい。親密な。2分くらい、彼女の左右でCDを探すフリをしていると、
彼女の友達が携帯片手にいきなり来て「アサコ、お好み焼きでいいってー!」と割って入ってくる。まったく。それに答えた彼女のいつもより2オクターブくらい高い声は、きっと僕のために用意されたもののはずだったのに!それで一種のタイムアップというか、チャンスを潰されたというか、彼女を手に入れるチャンスを失った。
彼女が最後にその友達に「少しの間しか居れないね。」と言ったのは、靴屋の髪の短い女の子にたいしての言葉を黒い髪のながいほうの女の子が僕のデートの誘いを断ったときに、間接的に「気にしないで。」と言ったのと同じ種類の、2重の意味での遠回しの言葉。
僕は昔の恋を忘れるために、誰かれ構わず求めている。与えるようにすがっている。考えすぎることは良くないし、女の子達が僕の顔立ちの良さを必要としていたり、僕が彼らにとって都合良く欲望を満たすことをするなら、誰も不幸にはならない。
****************
ムラハシは今日は恋人と、12時から16時まで一緒にいた。ムラハシの家の近くで遊んだ。
お洒落なレストランでカジキマグロのソテーのランチを食べた。1200円。コック兼店長のおばさんがお洒落でしかもセクシー。入って行った彼女が手にしていた袋をお店に入った直後に「ハリウッドランチマーケットのでしょ。」と指摘した。彼女の着ている服は、黒字に白い鳥の小さな刺繍が左上(つまり彼女の右肩のすぐ下あたり)が飛んでいて、右下の鹿と兎の刺繍が入っていて、そして彼女の胸元のペンダントは、白い鳥、でそれが彼女の洋服の不自由から解き放たれるみたいに、ぶら下がっていた。ムラハシはそれを褒めた。彼女はムラハシが描いた絵のことを知っているんだと分かった。なぜかといえば、ムラハシが昔、鳥の絵を描いて、その絵は彼女が着ている服と同じように黒地に真っ白な鳥を描いたものだったからだ。
恋人の会話には僕の知らない固有名詞が沢山出てきた。知らない有名人、知らない場所、会話をするために近い趣味が必要なんだろうけれど、そのためにわざわざ興味のないことを覚えるのは彼の性格上できないことだった。会話がぎくしゃくして、その理由を考えていたけれど、それは彼女が茶色い瞳をしているからだと思う。これは持論なんだけど、目が茶色いひとはサディスト、黒いひとはマゾヒスト、という区分けをしている。
彼女とそのお洒落なレストランを出て、目白台の通りを進んで行く。途中で、公園があって、そこには野球場があって、バッターボックスの裏側のベンチに座って草野球を眺めていた。お腹がいっぱいで、女の子と一緒に草野球を眺めるっていうのは、春の晴れた日には最高の選択だと思った。
ゆるやかに時間が進んで、それから僕たちはまた道を進んで教会に行った。有名な建築家が立てた大聖堂で、外から眺めると、前衛的な形をしている。教会では何かの行事でバザーをしていた。日本人にとっての典型的なキリスト教徒のイメージと違ったのは、そこにいた多くの人達は日本人以外の有色人種、東南アジア系、アフリカ系、そういった人達がほとんどだったと思う尼さんはみんな日本人だった。
出し物の音楽が聞こえる教会の広場で、東南アジア系の人達やアフリカ系や、どこの国だか分からないけれど、とにかくなかなか見かけない感じの人達が生春巻きとかホットドッグとかを売っていた。その収入はやっぱり教会への寄付金になるんだろうか。
教会に入ると、前衛的な形の聖堂だった意味が分かる。木の椅子の真ん中を抜けて司教座(段になっていて登ることは許されない)の前に来ると、信徒も、そうでない連中も、威厳を感じずにはいられない形状に施設がなっているのだ。三角柱を半分に切ったその内側のように包み込むような内側に圧迫するように包み込む形状が、荘厳さを心に呼び起こすように作っているのだ。とても大掛かりな仕掛けで、その教会の資金源がどのような仕組みで成り立っているのか僕には気になった。
前からに3番目の真ん中に近い席に二人で隣り合って座っていると、キリスト教徒の人達がぽつぽつと祈っている。それを横目で見ながら、恋人はムラハシにミンティアをくれた。その時ちゃんとそれがキスをしてもいいっていう、回りくどい彼女の要求だと気付いたけれど、でも、彼女が腕を組んだり足を僕のほうでは方に向けているせいで、隙が全然なかった。身体の横の部分が触れ合っているのに、彼女はそんな態度だった。どちらかといえば怖い気持ちが先立って、結局彼女の要求を満たすことはできなかった。礼拝する連中なんてそっちのけで僕たちはキスをすることばかりを20分くらいずっと考え続けていた。ボサノヴァが教会の外から聞こえてきた。結局彼女はプレッシャーに負けて、すこしどもったりしながら、「出よっか。」と言った。その日初めて彼女の声を聞いた。
ムラハシはその女の子が求めるものを与えることができなくて、すこし後悔した。
帰り『ママタルト』に寄って二人でタルトを食べて、それから帰った。彼女の言葉は行きより少なかった。いつも思うんだけど、誰かが不器用で二人が結ばれるには、もう片方がそれを補うくらい器用じゃなきゃ上手くいかないってこと。
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2009/8/16
20:00頃 フランフランとクレープ屋の間の坂道 1
綺麗な女の子を見つけてつけて行くけれど、パルコの前のユニクロに入って、地下一階で試着待ちになって声のかけようがなくて終わる。
20:20頃 渋谷ビブロ 2
料理の本を探している女の子に声をかけようとした。レジ前の料理本のところから、料理の本だけが置いてあるところにいるところで声をかけようとして、彼女がまたレジ前のほうに移動して、そこで距離をつめようとしたところで逃げていった。
地下から一階に登るエスカレータで後ろにいたけれど、凄い歩行速度で地上で距離を開けられて逃げられる。黒い服。ジルスチュアートのカタログに出ているような服。黒い髪。幼い顔立ち。ある種の雑誌のモデルにはうってつけ。
20:40頃 渋谷ツタヤ3階 3
一瞬目があって、R&Bのコーナーで二人でかなり良い感じの雰囲気になる。ところどころの湿疹と、何かがねじ曲がっているように感じる歩き方。
二人でいるときの濃密な空気で心臓が高鳴り過ぎて気を落ち着かせようと息を整えた。
彼女のそばにもう一度寄ると、彼女は手に持っていたCDがどこにあるかを示す紙を落とす。僕が拾うにしては彼女との距離がありすぎる。拾いようがない。それとも、心がそこにないことを僕に示すジェスチャーだったんだろうか。だとしたら、結構気が利いている。昔、いちど声をかけようとした女の子がそういう本棚にある本を片っ端から何度も落としているんだけど、顔は平然としている、というのを目前にしたことがあって、それを思い出した。ちなみにその時は声をかけなかった。
彼女は2の彼女にルックスが似ている。テンプレート。3の彼女のルックスといえば、シャープな顔つきで、どちらかといえばつり目(そのせいで僕は人は自分に似た人といると安心するという法則を思い出す)で、目にピンク色のアイラインをしていた。ジーンズ生地のミニスカート、灰色のニーハイソックス、他は覚えていない。僕が緊張し過ぎていた。彼女との今にもその場で繋がってしまいたくなるような直接的な空気を文章で表現するのは難しい。親密な。2分くらい、彼女の左右でCDを探すフリをしていると、
彼女の友達が携帯片手にいきなり来て「アサコ、お好み焼きでいいってー!」と割って入ってくる。まったく。それに答えた彼女のいつもより2オクターブくらい高い声は、きっと僕のために用意されたもののはずだったのに!それで一種のタイムアップというか、チャンスを潰されたというか、彼女を手に入れるチャンスを失った。
彼女が最後にその友達に「少しの間しか居れないね。」と言ったのは、靴屋の髪の短い女の子にたいしての言葉を黒い髪のながいほうの女の子が僕のデートの誘いを断ったときに、間接的に「気にしないで。」と言ったのと同じ種類の、2重の意味での遠回しの言葉。
僕は昔の恋を忘れるために、誰かれ構わず求めている。与えるようにすがっている。考えすぎることは良くないし、女の子達が僕の顔立ちの良さを必要としていたり、僕が彼らにとって都合良く欲望を満たすことをするなら、誰も不幸にはならない。
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ムラハシは今日は恋人と、12時から16時まで一緒にいた。ムラハシの家の近くで遊んだ。
お洒落なレストランでカジキマグロのソテーのランチを食べた。1200円。コック兼店長のおばさんがお洒落でしかもセクシー。入って行った彼女が手にしていた袋をお店に入った直後に「ハリウッドランチマーケットのでしょ。」と指摘した。彼女の着ている服は、黒字に白い鳥の小さな刺繍が左上(つまり彼女の右肩のすぐ下あたり)が飛んでいて、右下の鹿と兎の刺繍が入っていて、そして彼女の胸元のペンダントは、白い鳥、でそれが彼女の洋服の不自由から解き放たれるみたいに、ぶら下がっていた。ムラハシはそれを褒めた。彼女はムラハシが描いた絵のことを知っているんだと分かった。なぜかといえば、ムラハシが昔、鳥の絵を描いて、その絵は彼女が着ている服と同じように黒地に真っ白な鳥を描いたものだったからだ。
恋人の会話には僕の知らない固有名詞が沢山出てきた。知らない有名人、知らない場所、会話をするために近い趣味が必要なんだろうけれど、そのためにわざわざ興味のないことを覚えるのは彼の性格上できないことだった。会話がぎくしゃくして、その理由を考えていたけれど、それは彼女が茶色い瞳をしているからだと思う。これは持論なんだけど、目が茶色いひとはサディスト、黒いひとはマゾヒスト、という区分けをしている。
彼女とそのお洒落なレストランを出て、目白台の通りを進んで行く。途中で、公園があって、そこには野球場があって、バッターボックスの裏側のベンチに座って草野球を眺めていた。お腹がいっぱいで、女の子と一緒に草野球を眺めるっていうのは、春の晴れた日には最高の選択だと思った。
ゆるやかに時間が進んで、それから僕たちはまた道を進んで教会に行った。有名な建築家が立てた大聖堂で、外から眺めると、前衛的な形をしている。教会では何かの行事でバザーをしていた。日本人にとっての典型的なキリスト教徒のイメージと違ったのは、そこにいた多くの人達は日本人以外の有色人種、東南アジア系、アフリカ系、そういった人達がほとんどだったと思う尼さんはみんな日本人だった。
出し物の音楽が聞こえる教会の広場で、東南アジア系の人達やアフリカ系や、どこの国だか分からないけれど、とにかくなかなか見かけない感じの人達が生春巻きとかホットドッグとかを売っていた。その収入はやっぱり教会への寄付金になるんだろうか。
教会に入ると、前衛的な形の聖堂だった意味が分かる。木の椅子の真ん中を抜けて司教座(段になっていて登ることは許されない)の前に来ると、信徒も、そうでない連中も、威厳を感じずにはいられない形状に施設がなっているのだ。三角柱を半分に切ったその内側のように包み込むような内側に圧迫するように包み込む形状が、荘厳さを心に呼び起こすように作っているのだ。とても大掛かりな仕掛けで、その教会の資金源がどのような仕組みで成り立っているのか僕には気になった。
前からに3番目の真ん中に近い席に二人で隣り合って座っていると、キリスト教徒の人達がぽつぽつと祈っている。それを横目で見ながら、恋人はムラハシにミンティアをくれた。その時ちゃんとそれがキスをしてもいいっていう、回りくどい彼女の要求だと気付いたけれど、でも、彼女が腕を組んだり足を僕のほうでは方に向けているせいで、隙が全然なかった。身体の横の部分が触れ合っているのに、彼女はそんな態度だった。どちらかといえば怖い気持ちが先立って、結局彼女の要求を満たすことはできなかった。礼拝する連中なんてそっちのけで僕たちはキスをすることばかりを20分くらいずっと考え続けていた。ボサノヴァが教会の外から聞こえてきた。結局彼女はプレッシャーに負けて、すこしどもったりしながら、「出よっか。」と言った。その日初めて彼女の声を聞いた。
ムラハシはその女の子が求めるものを与えることができなくて、すこし後悔した。
帰り『ママタルト』に寄って二人でタルトを食べて、それから帰った。彼女の言葉は行きより少なかった。いつも思うんだけど、誰かが不器用で二人が結ばれるには、もう片方がそれを補うくらい器用じゃなきゃ上手くいかないってこと。
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