「前に、知り合いの知り合いの女の子の話聞いたんだけど、その知り合いの友達にこういう女の子がいて、とても綺麗で清純な感じ。スカートに黒い髪の美しい女性。どっかのミスキャンパスになったらしい。でも彼女の彼氏は凄く冴えない。銀行に勤める、面白みも、何もない感じ。で、昔、その美人の女の子には男前な彼氏がいて仲良くやってたんだって。それで、なんでわざわざその彼氏と別れて今の冴えない彼氏と付き合ってるのかっていうと、その元彼氏に酷い振られ方をして、そのせいで、もうカッコイイ男の子とは付き合えなくなったんだって。で、その二人が別れたのは、ある日、彼女が彼氏に別れ話をされたときに、まず彼氏が浮気の告白をした。まぁ、それでもダメージはでかい。しかも、二股を続けて2年間。まぁ、俺としては彼女が二股かけられて二年間も気付かないなんて、鈍い女だなぁって思うけど。あー、でも、女の子って自分が信じたくないものとか認識したくないものって、限りなく黒に近いグレーでも白って思い込んじゃうっていうのあるからね。とにかく、二股をされてて、なんでいきなり彼氏が浮気を告白したかっていうと、その浮気相手、いや、浮気相手のほうももう一人女がいるなんて知らなかったし、最後までそっちはバレなかったらしい。浮気相手のパチンコ屋の店員の女の子のほうに子供ができたんだって。生でやんなよって思ったけど、出来たものはしょうがないし、男のほうは、それで決心をしたか、させられたのか知らないけど、観念してその彼女と別れた。で、そのせいで、その美人ちゃんは、それが原因で絶対にモテる男とは付き合わないって決めたんだって。で、今に至る。そろそろ結婚するらしい。でも、その銀行員の冴えない彼氏は良い拾いもんだよな。それで、俺は知り合いの女の子に言ったんだ。『そういうのってなんかダメな感じする。』って。で、知り合いの女の子も『私もそう思う。でも、そこまでするって相当ショックだったんだろうね。』って。それで、彼らの結婚生活とか、その子供のことを想像すると、俺はいつも萎えちゃうんだよね。分かるでしょ?まぁ、大抵の人間は、そもそも美人でもモテるわけでもないから、自分が妥協してるなんて感覚ないんだろうけど、そうやって現実の二人の男女が作られる過程とか考えるとさ。なんていうか、幻滅って感じ。なんにしろ、そうやって、モテる男がみんな自分を捨てて別の女の子と孕ませるって短絡的に考えるより、違う誠実な男を探すほうがいいと思うんだよね。」
話を区切ってジントニックを飲みきって、そこで僕はふと自分が何の話をしようとしてたのか忘れて、彼女に意見を訊いた。
「ねぇ、どう思う?」
「うーん。なんとも言えないけど、取り違えてるし、タイミング悪い感じ。タイミング悪いっていうか、気まずいっていうか。」
「でも、身が引きちぎれそうなくらいの後悔をするほど好きだったんだよ。」
普及版の彼女は首を振ってマッコリを飲んだ。
「君の考えてることは分かるよ。自分のことばっかり考えるやつだって思ってるんでしょ?」
「そんなことないよ。ただ、馬鹿だって思う。」
「そうやって誰かを傷つけたりしないと、この先も同じように何かのチャンスを失うって思ったんだよ。」
「その一緒に連れて行った女の子とはどうなったの?」
「結局うまくいかなかったよ。ずっとお互いに好きだって思ってたのに、向こうには僕の気持ちが伝わってなくて、横から別の男に割って入られて終わった。彼女は遊ばれてたって思ってたみたい。」
「ちゃんと言葉にしなきゃダメだよ。」
「言葉なんて信じられないよ。みんな嘘つきばっかりだ。」
そう言い切って、ジントニックを飲みきった。
「ねぇ、自分を変えたいって思ったことはある?」
「ないかな。今のままで十分。変わりたいの?」
こういう話をしようと思ったけど、僕はそれを聞いても彼女は喜ばないし、何の特にもならないからやめた。
その女の子の彼氏は明らかに、彼女意外に女の子がいるんだけど、彼女の喜ぶようなこと(プレゼント(ペアリングとか)とかちゃんとしたした言葉(「好きだ」)とか)ができて、でも、その男のちゃらちゃらした下らない恋愛もどきなんかとは比べられないくらい、僕は彼女のこと愛おしいと思っていたし、今でもそう思ってるのに、彼女は結局その彼氏を選んだ。好きだって言葉がなきゃそれに気付けないような女の子だから、彼氏が浮気してても、そんなことにも気付かない。げーげー吐きたくなるような、インチキ彼氏・インチキ恋愛を眺めてて、僕は自分を変えようと思った。復讐したいと思った。何に対してなのかは分からない。だから、ひたすら自分の恋愛を変えて、それをゲームのように、簡単に嘘をついて、相手が望む態度や行為を与えて、ただ僕が得るのがただの身体とセックス、それだけにしたいと思った。以前の僕よりも、今の僕のほうを女の子は好むと思うけど、僕は今の自分の恋愛に対する態度に心底からウンザリしている。それでも、そうせずにはいられない。それに、僕には欲しいものがあった。心を誰かに捕われずに、思うように過ごすことのできる自由だ。
「ずっと前に、僕のことを傷つけた女の子がいたんだ。本当に彼女のことを好きだったのに。」
「傷つけられたって?」
「例えば、君が好きになった男の子がいて、その男の子には彼女がいる。それでも君はその男の子に誘惑されて、その男の子を好きになる。」
「うん。」
「それで、その男の子に電話すると、向こうでセックスしてたりする。」
「そんな男のこと好きになんないよ。」
「若かったんだよ。自分を大切にしようとするより、感情を優先しちゃう。そういうもんでしょ?」
「まぁいいや。それで?」
「死ぬほど傷つくのに、その男の子は自分を傷つけてることに気付かないんだ。」
眠くなったのかもしれない。涙が出てきた。
「そんなことってあるかよ。よくセリフであるだろ。胸が痛くなるって。あれって本当なんだ。胸がぎゅうってなって息ができなくなるんだ。」
僕は深呼吸をして彼女の目を見た。同情を引き出そうとして、その話を始めたんだって、そう思えてきた。
「変わったんだ。僕はもっと優しい人間だったはずなんだ。」
ムラハシの彼女は、あの男に自分の身を任せるのかと思うと、ぞっとした。
ぞっとしたはずなのに、なぜか自分が興奮していることに気付いた。
女が自分を汚すことで得る快楽を、男は理解できるだろうか。彼女はそんなことを考えていた。
3人でした時のことを思い出すと、流れに任せてそうしたわけでもないことに気付く。そう、誰だって、こういう真っ暗な衝動を抱えている。
地下鉄は進んでいく。腕時計を眺めて、目をつむる。
マリコは言った。
「本当は心の底で誰だってこういう風なことを望んでるのよ。私の父親が、私のベッドに潜り込んだ時からそうだったの。もう戻れないんだって。その穴を覗き込んで、もしそこに入ったりしたらね。」
言葉は意識を通さず、ただの音として頭を抜けた。何も考えられなかった。いや、その場所のことしか考えられなかった。
「ねぇ、もっと舐めて。」
マリコは言った。つるつるに剃った彼女を舐めながら、意識が漠然としていて、時間の感覚が無くなっている。いつから自分がそうしていたのか分からない。
「興奮するでしょ。あなたみたいに真面目な女の子ならなおさらね。」
うつぶせで膝を立てて、両手を背中で縛られている自分を、真上から眺めているもう一人の自分が冷静に眺めている。後ろから男の声がする。誰だろう。ざらついていて、溶けている、声。
「自分が物みたいになっていると興奮するだろ。」
何も見えないのだ。目隠しをされている。舌を出して、懸命になっている。
「ねぇ、想像して。自分のその格好をムラハシ君が見てるって。」
何も見えない。何も分からない。何も考えられない。匂いがする。言葉では表現することのできない、濃密な匂い。
「これ当てながら入れてあげて。」
音が聞こる。ずっと遠くで聞こえる。
「何度もイくんじゃないかな。」
身体が跳ねるように動く。滅茶苦茶だ。もうやめてほしい。やめてほしくない。もう無理。もっと欲しい。暴力みたいだ。
アナウンスが聞こえて、目を開ける。濡れてる。
話を区切ってジントニックを飲みきって、そこで僕はふと自分が何の話をしようとしてたのか忘れて、彼女に意見を訊いた。
「ねぇ、どう思う?」
「うーん。なんとも言えないけど、取り違えてるし、タイミング悪い感じ。タイミング悪いっていうか、気まずいっていうか。」
「でも、身が引きちぎれそうなくらいの後悔をするほど好きだったんだよ。」
普及版の彼女は首を振ってマッコリを飲んだ。
「君の考えてることは分かるよ。自分のことばっかり考えるやつだって思ってるんでしょ?」
「そんなことないよ。ただ、馬鹿だって思う。」
「そうやって誰かを傷つけたりしないと、この先も同じように何かのチャンスを失うって思ったんだよ。」
「その一緒に連れて行った女の子とはどうなったの?」
「結局うまくいかなかったよ。ずっとお互いに好きだって思ってたのに、向こうには僕の気持ちが伝わってなくて、横から別の男に割って入られて終わった。彼女は遊ばれてたって思ってたみたい。」
「ちゃんと言葉にしなきゃダメだよ。」
「言葉なんて信じられないよ。みんな嘘つきばっかりだ。」
そう言い切って、ジントニックを飲みきった。
「ねぇ、自分を変えたいって思ったことはある?」
「ないかな。今のままで十分。変わりたいの?」
こういう話をしようと思ったけど、僕はそれを聞いても彼女は喜ばないし、何の特にもならないからやめた。
その女の子の彼氏は明らかに、彼女意外に女の子がいるんだけど、彼女の喜ぶようなこと(プレゼント(ペアリングとか)とかちゃんとしたした言葉(「好きだ」)とか)ができて、でも、その男のちゃらちゃらした下らない恋愛もどきなんかとは比べられないくらい、僕は彼女のこと愛おしいと思っていたし、今でもそう思ってるのに、彼女は結局その彼氏を選んだ。好きだって言葉がなきゃそれに気付けないような女の子だから、彼氏が浮気してても、そんなことにも気付かない。げーげー吐きたくなるような、インチキ彼氏・インチキ恋愛を眺めてて、僕は自分を変えようと思った。復讐したいと思った。何に対してなのかは分からない。だから、ひたすら自分の恋愛を変えて、それをゲームのように、簡単に嘘をついて、相手が望む態度や行為を与えて、ただ僕が得るのがただの身体とセックス、それだけにしたいと思った。以前の僕よりも、今の僕のほうを女の子は好むと思うけど、僕は今の自分の恋愛に対する態度に心底からウンザリしている。それでも、そうせずにはいられない。それに、僕には欲しいものがあった。心を誰かに捕われずに、思うように過ごすことのできる自由だ。
「ずっと前に、僕のことを傷つけた女の子がいたんだ。本当に彼女のことを好きだったのに。」
「傷つけられたって?」
「例えば、君が好きになった男の子がいて、その男の子には彼女がいる。それでも君はその男の子に誘惑されて、その男の子を好きになる。」
「うん。」
「それで、その男の子に電話すると、向こうでセックスしてたりする。」
「そんな男のこと好きになんないよ。」
「若かったんだよ。自分を大切にしようとするより、感情を優先しちゃう。そういうもんでしょ?」
「まぁいいや。それで?」
「死ぬほど傷つくのに、その男の子は自分を傷つけてることに気付かないんだ。」
眠くなったのかもしれない。涙が出てきた。
「そんなことってあるかよ。よくセリフであるだろ。胸が痛くなるって。あれって本当なんだ。胸がぎゅうってなって息ができなくなるんだ。」
僕は深呼吸をして彼女の目を見た。同情を引き出そうとして、その話を始めたんだって、そう思えてきた。
「変わったんだ。僕はもっと優しい人間だったはずなんだ。」
ムラハシの彼女は、あの男に自分の身を任せるのかと思うと、ぞっとした。
ぞっとしたはずなのに、なぜか自分が興奮していることに気付いた。
女が自分を汚すことで得る快楽を、男は理解できるだろうか。彼女はそんなことを考えていた。
3人でした時のことを思い出すと、流れに任せてそうしたわけでもないことに気付く。そう、誰だって、こういう真っ暗な衝動を抱えている。
地下鉄は進んでいく。腕時計を眺めて、目をつむる。
マリコは言った。
「本当は心の底で誰だってこういう風なことを望んでるのよ。私の父親が、私のベッドに潜り込んだ時からそうだったの。もう戻れないんだって。その穴を覗き込んで、もしそこに入ったりしたらね。」
言葉は意識を通さず、ただの音として頭を抜けた。何も考えられなかった。いや、その場所のことしか考えられなかった。
「ねぇ、もっと舐めて。」
マリコは言った。つるつるに剃った彼女を舐めながら、意識が漠然としていて、時間の感覚が無くなっている。いつから自分がそうしていたのか分からない。
「興奮するでしょ。あなたみたいに真面目な女の子ならなおさらね。」
うつぶせで膝を立てて、両手を背中で縛られている自分を、真上から眺めているもう一人の自分が冷静に眺めている。後ろから男の声がする。誰だろう。ざらついていて、溶けている、声。
「自分が物みたいになっていると興奮するだろ。」
何も見えないのだ。目隠しをされている。舌を出して、懸命になっている。
「ねぇ、想像して。自分のその格好をムラハシ君が見てるって。」
何も見えない。何も分からない。何も考えられない。匂いがする。言葉では表現することのできない、濃密な匂い。
「これ当てながら入れてあげて。」
音が聞こる。ずっと遠くで聞こえる。
「何度もイくんじゃないかな。」
身体が跳ねるように動く。滅茶苦茶だ。もうやめてほしい。やめてほしくない。もう無理。もっと欲しい。暴力みたいだ。
アナウンスが聞こえて、目を開ける。濡れてる。
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