Fine Romance 86/100

2009年9月18日 日常
のどかはバイクに乗って来て、僕が住んでるマンションの前に革ジャンパーを来て、タバコを吹かして立て掛けたバイクに寄りかかって、「久しぶり。」と言った。
「でかいバイクだね。」
「ヤマハの『V-Max』。1200CCで欧米の逆輸入車。国内だと付いてないV-boostっていう装置が付いてて、国産だと規制で発揮できないトルクがあるの。1200CCって言ったら、軽自動車並みよね。」
「倒れても持ち上げられないんじゃないかな。」
「コツがいるんだけどね。なんとか。」
「バイクなんて乗れたんだ。」
「このバイクに乗りたくて、先月免許取ったの。」
どちらかといえば小柄の彼女が、雄牛みたいに巨大で荒々しい黒のバイクに乗っているギャップが格好いいと思った。
ヘルメットを渡された僕は、彼女の言うがままに後ろに乗って彼女の肩を両手で掴んだ。風を切りながら、景色を飲み込みながら、バイクの振動を感じていた。
「バイクって原始的よね。」
「原始的?」
「凶暴で、沢山の力を血が求めるような。この解放される感覚って原始的だと思わない?大昔に馬を乗っていた、遺伝子に刻まれた記憶が、この鼓動なエンジン音で呼び起こされるのかな。」
「文明の発展が、本能的な物を引き出すために使われてるなら、僕たちは退化してるのかな?」
「誰だって持ってる本能は同じよ。」
「本能のどの部分が発揮されるかの違いか。」
「音楽、乗り物、スポーツ、ファッション、料理。我ら万物の霊長は原始的な欲望をさらに満足させるために文明を発展させたんじゃないかしら。」
「何かで見たことがあるよ。世界最古の性玩具。石で出来てた。」
秋葉原でバイクを降りて、のどかと二人で秋葉原に向かっていく途中で、石器(結局僕は絵に描いて説明することになった)の話から、こんなテレビゲームがあればいい、という話になった。僕に彼女は’超高性能恋愛ゲーム’を勧めた。彼女が僕の書いた小説の走り書きの『True Religion』を読んだからだと思う。
「やっぱり現実世界でメリットがあるとして。」
「難しそうなゲームだね。」
「女の子を凄くリアルに反映してるから、そのゲームをしているうちに、オタクで内気な男の子は、気付いたら現実の女性の理想になってるの。」
「でもさ、現実の女の子とうまく折り合いがつかないからゲームしてるんじゃないの。」
「うーん。最初はイージーモードから始まるの。たとえば、主人公はルックスがよくてお金を持ってて、っていう設定なの。で、それをクリアするとノーマルモード。ルックスは普通でそこそこの稼ぎで。」
「稼ぎ、って、主人公サラリーマンなの?」
「じゃあ学生ね。で、オタクであれな人達だからやっぱりやり込んで一番難しいハードモードで全員の女の子と付き合って、ベリーハードモードに挑戦できるようになるの。」
「それでベリーハードモードをクリアした頃には、プレーヤーは現実で恋愛の達人になってるんだ。」
「そう。ゲームのタイトルは『Real Love』とかね。」
「興味深いね。」
「私、ベリーハードモードをクリアした男の子と会ってみたい。」
「例えばさ、そのゲームが現実に近づき過ぎた時に、ゲームから出て来れなくなるんじゃない。」
「じゃあペッティングぐらいはオーケー。」
僕は笑った。彼女は割と真剣そうだった。
「うーん。その対策としてはやっぱり、セックスができないようになってるとか。エッチする以外のことは、他のゲームとほぼ一緒なの。それでー、ベリーハードの裏キャラクタが私なの。」
「カネシロ『あなたってどこにでもいる’いい男’ね』 とか言うわけ?ルックスのパラメータとか、能力を鍛えまくった主人公に向かって。」
「私そんなこと言わない。逆に割と簡単にペッティングまで出来ちゃうんだけど、絶対心を許さないとか。 カネシロ『私には誰も入れないの。』 って。名ゼリフじゃない?『あなたは死なないわ、私が守るもの』みたいな。」
「オタクには厳し過ぎるんじゃないかな。」
「ねぇ、やっぱりオフ会来る男の子ってやっぱり引きこもってエッチなゲームとかやってばっかりいる人ばっかりなのかな。」
「俺だって行ったことないけど、割と普通の人達が来るんじゃないかな。」
今日は彼女の小説のファンのオフ会に出るのだ。ソーシャルネットワーキングサイトにあるコミュニティーで見つけた。彼女は最初変装すると言っていたけど、右目の端にあるホクロが自分にはないから、よく似ている人で通すことになった。
「わくわくしてきた。」と彼女は言った。
「君のファンって想像つかないな。」
「あなただってそうじゃない。」
「ファンじゃないよ。」
「じゃあ何?」
「ゲームプレーヤー。」
そんなことを話してるうちに、待ち合わせ場所についた。
僕たち二人を含めた10人で女の子は6人と男は4人だった。
女の子1:背が高い。というか胸も腰も大きくて、肩幅も広い。鼻も高い、目も大きい。シロみたいだ。僕は彼女を密かにビギーと呼ぶことにした。
女の子2:豹のような雰囲気。スタイリッシュで、黒い複雑な形状の服を着ていた。賢そうな目をしていて、身を守るように腕を組んでいて、笑うと人なつこそうな表情になった。自分の中でだけファニーと呼ぶ。
女の子3:双子のサトウ姉妹の姉。落ち着いた性格で官能的な媚びるような顔つきをしている。美人。本名のままアミと呼ぶ。
女の子4:双子のサトウ姉妹の妹。表情が多彩で、リアクションや感情表現が豊か。美人というより、可愛い。こちらも本名のままアヤと呼ぶ。
女の子5:のどかのサイン会で隣に座って喋っていた女。ここで再会すると思わなかった。終始挙動がおかしかった。トリイさん。
男1:色黒で風采の良い男。仕事帰りなのかスーツで来ていた。見るから仕事ができそう。元ギャル男。イケダさん。
男2:髪の長い楽天的な雰囲気の男。東北の訛りがあって、パンクバンドをしているらしい。ミネタくん。
男3:背の高い物静かな男。内省的な態度をしていて、ゴツい体つきをしている塾講師。テンゴくん。

店に入って、座敷の席に座る。
僕の右隣にはファニー、左隣にはトリイさんが座った。
のどかは僕の向かいに座って彼女から見て右にテンゴくん、左にアヤが座った。

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