明け方、YouTubeでBasement Jaxxの『Where’s your head at』(この映像はSquarepusherの『Come on My Selector』を思い出させた。SquarepusherのこのPVの女の子はユキのイメージにぴったりだ。もちろん見た目の話じゃない。見た目こそ想像の幅を効かせる必要がある。)のPVを眺めながら(特に意味なんてない。なんとなくそうしていただけだ。そのPVの前にはPlus-Tech Squeeze Boxの『early RISER』のPVを観ていた)、ユキとソファに寄り添って座っていると(彼女は『ティッピングポイント』という本を読んでいて、音楽が気にならないほど読書に没頭していた。)、ふと、ずいぶん前のことを思い出した。それは僕の23才の誕生日の少し前のことだった。僕は獣医の医大に通っていた友達と久しぶり(2年ぶりくらいかもしれない)に会うことになった。気の合う、心底から大事に思える友人はそれほど沢山見つかるものじゃない。お互いの家の中間地点にある駅、府中で待ち合わせた(どちらかの家の近くに行くことに違和感があってそう提案した)。何か食べに行こうということになって「あの女子高生のあとをつけていけばマックにたどり着く」と瞬発的に思いついてそのままを僕は遊び半分に(わざとその女子高生に聞こえる声の大きさで)言った。そこでその案を「馬鹿げてるし相手に迷惑になる」と分別のついたつまらないことを言わずに乗ってくるのが彼だった。獣医の卵のその友達(以下「獣医」(まだ獣医じゃないのに獣医と呼ぶのはおかしいと言うだろうけど、僕は整体師の息子のサラリーマンを「先生」と呼ぶ女の子を知っている。そういう類の名前感覚に近いかもしれない))と、女の子のあとをつけた。僕と獣医はクールなスパイみたいに、女の子から3メートルくらい離れて歩いていた。彼女は後ろを振り返らず、髪を撫でる仕草が僕たちを意識したものだと僕には思えた。彼女はいったい何を考えていたんだろう。その女子高生の私生活を二人で推測しながら(獣医は「父子家庭」じゃないかな、と言った。「家をマクドナルドにしたせいで離婚した」と僕は応えた)、駅構内を抜けていった。僕たちはもしかしたら府中から彼女の家までついていったかもしれない。僕たち二人を止めるものは何もなかったし、楽しんでいた。それでも一瞬、もしかしたら本当に彼女が自分の家までついてくると思い込んでいたら(それを怖がっていたら)、と思った瞬間に僕は獣医に「もっと近くのマックに行かない?早くなんか食べたい」と言った。いまでも本当にあのままついていったらと思うことはある。通報とかされたりしたら冗談にならない感じが笑える。
日本語の話せないひとのフリをして(これは僕が会社の連中に見た目がイラン人っぽいと言われていることに由来していた)英語っぽい発音で、府中駅前のマクドナル(ムァク(↓)ドゥオーネル(↑))注文をしようとした。舌打ちをするのに近い要領の、おっさんがよく喋り始めるときに出す、例のヌチャという音をまず発してから「Ah---・・・,トゥーヘンバァガァ?」と注文しようとして、途中で獣医に止められた。それはさすがに彼も恥ずかしかったみたいだし、ともかく店員の女の子が可愛かった。ヌチャというあれは外人はやるのかやらないのか(それはステレオタイプなのか否か)を討論しながら、僕たちはマクドナルドの二階に登っていった。店に入るまえに、店の看板と2階が見えるのに、店の入り口が見つからない、という状態だったので、「あのマクドナルドにはレジもキッチンも2階にあって階段とかエレベーターはなくて、あそこに行くには壁をよじ登らないと行けない。」と確信を持って獣医に説明したけど、ちゃんと1階があった。世界は広いんだし、もしかしたら、社会的に入店が難しいんじゃなくて、店に入る難易度が物理的に難しい飲食店もあるんじゃないかと思う。安く売ることの強みにしていた、リゾート地の金持ち向けの宝石店がまったく宝石が売れなくて、試しにまったく同じ宝石を何桁か高い値段(普通の宝石店よりさらに高い値段)で店に出したら飛ぶように売れた、という話みたいに、やたらと敷居を高くすれば客が錯覚するんじゃないかと思ったのだ。入り口のない飲食店とか流行るのは当然だと思う。
沢山のことを話して、僕が覚えているのは、女の子におしっこを飲ませた話くらいだった。女の子におしっこを飲ませた話以外で僕が覚えているのは、こういう話だ。
「会社のひとで好きなひとがいたんだけど、彼女が今日会社を辞めた。会社を辞めることになったのは今日知った。
凄く安心した気持ちが半分と、凄く残念で寂しい気持ちが半分。
最初、彼女にアプローチ(会社の飲み会の帰りにアドレスを聞いた。一次会が終わったあとで完璧に無視されて、二次会が終わったあとに「アドレスとかないもん」って断られた)(なんで会社の飲み会でいきなりアドレスを聞いたかっていうと、彼女が部署替えで翌月には別の部署でもうチャンスがないと思ったから。でも結局部署替えはなくて彼女はそれから六ヶ月ずっと同じ部署にいた。)して、拒絶されたのがトラウマになってずっと彼女にうまく話しかけることができなくて、けれど、彼女はそれからまもなく間違いなく僕のことを好きになって(女の子が自分のことを好きかどうかを感じ取ることは僕にとっては簡単なことだった)、ずっと僕と仲よくなりたかったんだと思う。それでも彼女にはほかに男がいて、そういうなかで僕は拒絶されたトラウマを引きずりながら前にも後ろにも身動きがとれないまま、距離が埋まらないまま、タイムアップ。」
という話だ。
それから、どう女の子に対していくか、の話になって、最終的に女の子におしっこを飲ませる飲ませないの話になったのだ。

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