True Religion 35
2010年5月15日 コミューンと記録メモと書くこと混ざり合う潮の流れのような交差点で、二人で立っていると、さっき立ち去ったはずの外国人が戻ってきて、望遠レンズをつけた一眼レフカメラでこっちを撮ろうとしている。嬉しそうに僕のほうを眺めたユキは携帯電話で向けて、お互いを写し始めた。携帯電話をポケットにしまうと、今度は「真空波動拳」と言いながら外国人に向けて見えないレーザービームを飛ばし始めた。「あのひと笑ってる」とユキは言った。やがて、信号が点滅しはじめて、横断歩道を渡った。
ユキは「沢山ひとがいると、人じゃない何かに見えてくるのかな。」と言った。僕は少し考えて言った。「むかし女の子を何人か(控え目に言った)口説いていたときに、彼らには共通する性質があることに気づいたんだよ。ルールがあるところにゲームは生まれるし、ゲームがあるとこには攻略の仕方、効率の良いやり方が生まれるんだ。」歩道を渡り切ると、外国人のひとはいなくなっていた。「効率の良いやり方っていうのを繰り返すうちに、作業みたいになっていく。彼らの性質にたいして僕が感情のない作業をするようになっていく。不思議とそれはうまくいくんだ。それはたぶん恋愛でもなんでもないんだけど、それでも、僕が女の子のことを何も分かってなくて女の子を傷つけていたときより、彼らはずっと幸せそうに見えた。高慢に聞こえるだろうけど、結局、彼らは自分の見たくない本当のことを見せる正直者より、見たいものを見せてくれる嘘つきのほうが好きなんだ。」「例えばどんな性質?」「そうだなぁ。街のそのへんで女の子を口説くとき、女の子の近くで観察していて、女の子が男の子を意識するときシグナルを出すんだ。向こうに渡っていいっていう信号みたいなもんだよ。信号は自分が信号だってことを知らなくても、青と黄と赤の表示をする。まずひとつは、髪を触る。つぎに動きに落ち着きがなくなる。だいたい手か足とか。この場合、足の動きが落ち着かなくなる。気になる異性に向けて足を組む。足の甲を外側に立てるみたいにすることもある。それとか目が濡れる。瞳孔が開いて黒目が大きくなる。あぁ、これは怒って興奮した場合も同じかな。あとは同じ行動を取ったりする。これはどっちかっていうと意識的。それと声が高くなったり、その男性を見ることが多くなったりする。」ユキは僕の目を見つめる。瞳孔を確認してるんだろう。「身体は嘘をつけない、ってね。」と僕が言ったら「そうかもしれない。」とユキは僕が言った言葉のセクシャルな意味に気付かずに答えた。「あるところまでいったら、あとは理性とか論理なんて関係なくなって生理反応の問題になるんだよ。」
「シニカルー」とユキはコメントした。「そうかもしれない。でも、こういうことがあったんだよ。『好きって言ってくれなきゃ好きかどうかなんて分からない』って言われて、『好きかどうかなんて言葉にしないでも分かりきってる。』って答えたら、その子は納得してなかったみたいだった。確かに好意を感じとれないならそうかもしれない。それなら好き好き言っておけば全然好きじゃなくても好きってことになるって。そのあと70人くらいの女の子とセックスした男が『女子高生とかは好き好きいっておけば馬鹿だから勘違いして簡単に落とせる』って。別に良いとか悪いとか判断するつもりはないけど、その生理反応はある面で言葉よりずっと大事だって思ってる。」「でも、それって相手の目が見えてないことを利用するか、自分の目が見えていることを利用するかだけの違いだけじゃない。」僕はすこしだけ肩をすくめた。その通りだ。
ユキは「沢山ひとがいると、人じゃない何かに見えてくるのかな。」と言った。僕は少し考えて言った。「むかし女の子を何人か(控え目に言った)口説いていたときに、彼らには共通する性質があることに気づいたんだよ。ルールがあるところにゲームは生まれるし、ゲームがあるとこには攻略の仕方、効率の良いやり方が生まれるんだ。」歩道を渡り切ると、外国人のひとはいなくなっていた。「効率の良いやり方っていうのを繰り返すうちに、作業みたいになっていく。彼らの性質にたいして僕が感情のない作業をするようになっていく。不思議とそれはうまくいくんだ。それはたぶん恋愛でもなんでもないんだけど、それでも、僕が女の子のことを何も分かってなくて女の子を傷つけていたときより、彼らはずっと幸せそうに見えた。高慢に聞こえるだろうけど、結局、彼らは自分の見たくない本当のことを見せる正直者より、見たいものを見せてくれる嘘つきのほうが好きなんだ。」「例えばどんな性質?」「そうだなぁ。街のそのへんで女の子を口説くとき、女の子の近くで観察していて、女の子が男の子を意識するときシグナルを出すんだ。向こうに渡っていいっていう信号みたいなもんだよ。信号は自分が信号だってことを知らなくても、青と黄と赤の表示をする。まずひとつは、髪を触る。つぎに動きに落ち着きがなくなる。だいたい手か足とか。この場合、足の動きが落ち着かなくなる。気になる異性に向けて足を組む。足の甲を外側に立てるみたいにすることもある。それとか目が濡れる。瞳孔が開いて黒目が大きくなる。あぁ、これは怒って興奮した場合も同じかな。あとは同じ行動を取ったりする。これはどっちかっていうと意識的。それと声が高くなったり、その男性を見ることが多くなったりする。」ユキは僕の目を見つめる。瞳孔を確認してるんだろう。「身体は嘘をつけない、ってね。」と僕が言ったら「そうかもしれない。」とユキは僕が言った言葉のセクシャルな意味に気付かずに答えた。「あるところまでいったら、あとは理性とか論理なんて関係なくなって生理反応の問題になるんだよ。」
「シニカルー」とユキはコメントした。「そうかもしれない。でも、こういうことがあったんだよ。『好きって言ってくれなきゃ好きかどうかなんて分からない』って言われて、『好きかどうかなんて言葉にしないでも分かりきってる。』って答えたら、その子は納得してなかったみたいだった。確かに好意を感じとれないならそうかもしれない。それなら好き好き言っておけば全然好きじゃなくても好きってことになるって。そのあと70人くらいの女の子とセックスした男が『女子高生とかは好き好きいっておけば馬鹿だから勘違いして簡単に落とせる』って。別に良いとか悪いとか判断するつもりはないけど、その生理反応はある面で言葉よりずっと大事だって思ってる。」「でも、それって相手の目が見えてないことを利用するか、自分の目が見えていることを利用するかだけの違いだけじゃない。」僕はすこしだけ肩をすくめた。その通りだ。
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