True Religion 41
2010年6月12日 コミューンと記録メモと書くこと*************
「えっと、俺は嘘をついた。渋谷のアトムを5時に出て、渋谷のオルガンバーに行った。本当になんとなくで無意識が会いたいひと達に会いたいって言っていた。そこでKというミュージシャンが今晩は珍しく5時ごろまでDJをしていた。暗闇にDJブースを照らす照明から反射する光がいつもみたいに孤独な横顔を照らしてたし、そう、大切な友人Kもうそうだけど、アルコール一晩10杯目の勢いで僕は隣に立ったAという女性に声をかけた。いつだったか、それは文章にして公開したはずだけど、僕が仕事をやめて金もなくなって、という頃に『次、新宿のイベントで会おう』と約束したまま、金がなくて、ちょうどその頃表向きは甲斐性ないことを理由に失恋していた僕は、表向きの理由を表向きのまま受け取って、失意のまま、金のないままAに会えないと思って、Aにそのまま会えなかった。そして、職に就いて、夜遊びができるようになったのはその8ヵ月後くらいだったけど、話しかけた僕をAは無視した。当然といえば当然だけど、僕は彼女に許されることをずっと待っていて、それでやっとAに声をかけることができた。彼女の肩のあたりをそっと指で触れて僕は『久しぶり』と言った。本当に久しぶりだった。ずっと彼女と話したいと思っていた。それはリプレイだった。初めて彼女が僕の腕を引き寄せて、腕を絡めたときも、その場所だった。シンプルな顔の作りで割と男にしたら男前っぽくて、素直な性格で、音楽を聴くとき時々目をつむって少し顔を上にそらして官能的な表情をした。そして、あのときみたいに彼女は僕の腕に腕を絡めた。ちょうど1年半ぶりくらいか。『げんきにしてた?』と彼女に訊くと、すこし考えて『ぼちぼち』と言った。前には見なかった目じりの皺が、僕の知らない彼女の生活や事情や悩みを物語ってもいたし、ともかく僕はやたらと懺悔したかった。『お酒おごるよ。』と僕は言った。『別にいいよ。』『詫びたい気持ちなんだ』『なにそれ』『とにかく詫びたい気持ちなんだよ。おごらせて。』『じゃー、飲むってことは君も飲むんだよ。』と言って僕たちはカウンターに向かった。『ここ来るまで何してたの?』とグラスに注がれたメニュー表にない特別な日本酒を飲みながら彼女は僕に訊いて、そして僕は嘘をついた。『朝まで友達と飲んでたんだよ。』『どのへんで?』女のカンってやつか、だって、『別のイベントでフロアで踊りながら女の子と腰を擦り合わせていた』なんて言えるわけない。『センター街の入り口あたりの、ブックファーストの近くのやる気茶屋。で、友達は別にクラブとか好きじゃないから。解散してこっち来た。』僕は話を変える。『旦那さんは?』と訊くと『向こうの方』と言って真っ暗なフロアを指差して言った。『真っ暗だから見えない』とAは言った。そのあと細々としたことを少し喋って僕の携帯電話の番号を伝えた。彼女の携帯電話に僕の番号を打ち込んで、電話をかけて僕の右ポケットが揺れるまで待った。『そっちから電話かけてよ』と僕は言って、『俺って頭よくない?』と笑いながら言った。『平日の夜8時過ぎと土日はいつも空いているから。』と僕は言った。『土日は無理だけど、平日なら!』と少し明るい表情でAは言った。そのあと、Aの旦那がフロアから現れて、それと前後して兵庫に住んでるベーシストの女の子とKもラウンジに戻ってきた。ベーシストの女の子に会うのは2ヶ月ぶりで、僕は矢継ぎ早に質問と会話をして、合間にKさんがお酒を奢ってくれた。初めて見る凄く可愛い女の子もいた。テキーラショットを飲んだあとの僕はいつもの僕100人分くらいの言葉を吐き出して、途中でベーシストの子も僕に『ここ来るまで何してたの?』と訊いた。世界中の全ての女の子に同じ嘘の話をしなきゃいけなくなるかと思った。そのあとAと、その旦那は帰って、さらにそのあとベーシストの女の子と僕はKさんに朝ごはんに誘われて近くのランプ亭に行った。いつもより喋れる、とKさんに伝えていたので僕が主に朝食の話題を話した。横浜に住んでた頃好きだった靴屋の女の子の話と、その女の子に渋谷のツタヤで最悪の再開をした話。靴屋のもうひとりの髪の黒い女の子がその彼氏と二人で歩いてたのを見かけた話。要すると、話としては失恋した相手の女の子の恋人が冴えなくていまだに納得できてないし、そのせいで僕は歪んだ。という話だった。あとは僕が女の子に対する最後の一押しが弱い話を3つか4つ。好きだった女の子と同じベッドで寝て、胸を触ろうとしたら押しのけられて、セックスを諦めたら翌日からその女の子と連絡がとれなくなったとかいろいろ。らんぷ亭を出ると7時過ぎで、ベーシストの女の子に夕方浅草に行こうと誘ったけど、断られて、そのあとマンガ喫茶に行った。もしかしたら、彼女に強引にデートに誘ったらうまくいったんじゃないかと、いまこの文章を書きながら気づいた。リプレイ。そう、あとひとつ、書くことがあって、ベーシストの子と話をしながら、Kさんに『どうすればKさんみたいになれますか?』と訊いて『あんまり喋らなきゃいいんじゃない?』と言われた。らんぷ亭でも『黙っていればモテる』と言われた。けれど、その言い分は凄くよく分かるし、実際そうなんだろうけど、喋らないことで女が寄ってくるとしても、秘密にすべきことを秘密にしたとしても、喋りたいこと、いや、書きたいことを書きたいように書けなくなったり、女の子のいる前で恋愛遍歴をべらべら喋らないのは賢いし正しい選択だろうけど、それはやっぱり何か違う、と思ったし、そう思ったことを僕は言った。」
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「えっと、俺は嘘をついた。渋谷のアトムを5時に出て、渋谷のオルガンバーに行った。本当になんとなくで無意識が会いたいひと達に会いたいって言っていた。そこでKというミュージシャンが今晩は珍しく5時ごろまでDJをしていた。暗闇にDJブースを照らす照明から反射する光がいつもみたいに孤独な横顔を照らしてたし、そう、大切な友人Kもうそうだけど、アルコール一晩10杯目の勢いで僕は隣に立ったAという女性に声をかけた。いつだったか、それは文章にして公開したはずだけど、僕が仕事をやめて金もなくなって、という頃に『次、新宿のイベントで会おう』と約束したまま、金がなくて、ちょうどその頃表向きは甲斐性ないことを理由に失恋していた僕は、表向きの理由を表向きのまま受け取って、失意のまま、金のないままAに会えないと思って、Aにそのまま会えなかった。そして、職に就いて、夜遊びができるようになったのはその8ヵ月後くらいだったけど、話しかけた僕をAは無視した。当然といえば当然だけど、僕は彼女に許されることをずっと待っていて、それでやっとAに声をかけることができた。彼女の肩のあたりをそっと指で触れて僕は『久しぶり』と言った。本当に久しぶりだった。ずっと彼女と話したいと思っていた。それはリプレイだった。初めて彼女が僕の腕を引き寄せて、腕を絡めたときも、その場所だった。シンプルな顔の作りで割と男にしたら男前っぽくて、素直な性格で、音楽を聴くとき時々目をつむって少し顔を上にそらして官能的な表情をした。そして、あのときみたいに彼女は僕の腕に腕を絡めた。ちょうど1年半ぶりくらいか。『げんきにしてた?』と彼女に訊くと、すこし考えて『ぼちぼち』と言った。前には見なかった目じりの皺が、僕の知らない彼女の生活や事情や悩みを物語ってもいたし、ともかく僕はやたらと懺悔したかった。『お酒おごるよ。』と僕は言った。『別にいいよ。』『詫びたい気持ちなんだ』『なにそれ』『とにかく詫びたい気持ちなんだよ。おごらせて。』『じゃー、飲むってことは君も飲むんだよ。』と言って僕たちはカウンターに向かった。『ここ来るまで何してたの?』とグラスに注がれたメニュー表にない特別な日本酒を飲みながら彼女は僕に訊いて、そして僕は嘘をついた。『朝まで友達と飲んでたんだよ。』『どのへんで?』女のカンってやつか、だって、『別のイベントでフロアで踊りながら女の子と腰を擦り合わせていた』なんて言えるわけない。『センター街の入り口あたりの、ブックファーストの近くのやる気茶屋。で、友達は別にクラブとか好きじゃないから。解散してこっち来た。』僕は話を変える。『旦那さんは?』と訊くと『向こうの方』と言って真っ暗なフロアを指差して言った。『真っ暗だから見えない』とAは言った。そのあと細々としたことを少し喋って僕の携帯電話の番号を伝えた。彼女の携帯電話に僕の番号を打ち込んで、電話をかけて僕の右ポケットが揺れるまで待った。『そっちから電話かけてよ』と僕は言って、『俺って頭よくない?』と笑いながら言った。『平日の夜8時過ぎと土日はいつも空いているから。』と僕は言った。『土日は無理だけど、平日なら!』と少し明るい表情でAは言った。そのあと、Aの旦那がフロアから現れて、それと前後して兵庫に住んでるベーシストの女の子とKもラウンジに戻ってきた。ベーシストの女の子に会うのは2ヶ月ぶりで、僕は矢継ぎ早に質問と会話をして、合間にKさんがお酒を奢ってくれた。初めて見る凄く可愛い女の子もいた。テキーラショットを飲んだあとの僕はいつもの僕100人分くらいの言葉を吐き出して、途中でベーシストの子も僕に『ここ来るまで何してたの?』と訊いた。世界中の全ての女の子に同じ嘘の話をしなきゃいけなくなるかと思った。そのあとAと、その旦那は帰って、さらにそのあとベーシストの女の子と僕はKさんに朝ごはんに誘われて近くのランプ亭に行った。いつもより喋れる、とKさんに伝えていたので僕が主に朝食の話題を話した。横浜に住んでた頃好きだった靴屋の女の子の話と、その女の子に渋谷のツタヤで最悪の再開をした話。靴屋のもうひとりの髪の黒い女の子がその彼氏と二人で歩いてたのを見かけた話。要すると、話としては失恋した相手の女の子の恋人が冴えなくていまだに納得できてないし、そのせいで僕は歪んだ。という話だった。あとは僕が女の子に対する最後の一押しが弱い話を3つか4つ。好きだった女の子と同じベッドで寝て、胸を触ろうとしたら押しのけられて、セックスを諦めたら翌日からその女の子と連絡がとれなくなったとかいろいろ。らんぷ亭を出ると7時過ぎで、ベーシストの女の子に夕方浅草に行こうと誘ったけど、断られて、そのあとマンガ喫茶に行った。もしかしたら、彼女に強引にデートに誘ったらうまくいったんじゃないかと、いまこの文章を書きながら気づいた。リプレイ。そう、あとひとつ、書くことがあって、ベーシストの子と話をしながら、Kさんに『どうすればKさんみたいになれますか?』と訊いて『あんまり喋らなきゃいいんじゃない?』と言われた。らんぷ亭でも『黙っていればモテる』と言われた。けれど、その言い分は凄くよく分かるし、実際そうなんだろうけど、喋らないことで女が寄ってくるとしても、秘密にすべきことを秘密にしたとしても、喋りたいこと、いや、書きたいことを書きたいように書けなくなったり、女の子のいる前で恋愛遍歴をべらべら喋らないのは賢いし正しい選択だろうけど、それはやっぱり何か違う、と思ったし、そう思ったことを僕は言った。」
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