ユキは待っていた。
僕は彼女の20才の誕生日プレゼントに買ったネックレスを持って代官山を歩いていた。初めて会ったのはずっと昔のことなのに、今日のことみたいに新鮮に感じられた。彼女は僕のことを父親とは呼ばないし、恋人とも呼ばない。ユキを初めて抱いた夜、彼女は言った。
「どんなことだって繰り返しなの」
彼女の言葉はうめき声と一緒に僕の耳を震わせた。
いつだったか、のどかとデートした場所についた。あのときいた大男は血の繋がった娘を作った。ユキはその姪を抱き上げて光を発するような表情をしていた。それから、ユキの血の繋がった父親と僕は今でもよく会う。彼にはユキに会う勇気はまだなかったし、ユキもそれを感じ取って、まだ距離は縮まっていない。それでも、結局、なるようになるだろう。
バーに着くと、ユキは、どこかがおかしいんじゃないかって思えるようなエネルギーを溜め込んでるみたいに、それでもそれが内側でくすぶったまま、というような様子で僕の目を遠くから覗き込んだ。優しそうなのに同時に激しく燃えるような大きな目、迷いなく岩から切り取られたような身体の線、複雑な感情や情感さえ誰にでも伝えることのできるジェスチャーや表情。
「お待たせ」と僕は言った。
「ずっとあなたを待っていたの」

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