「え?浮気?するかって?あー、するする。そらーしますよ。そら、ぱこんとやりますよ。」
2008年6月10日 日常『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』さっき読み終えた。スターバックスみなとみらい店で。
昼間に『治療、家の名はコスモス』読んだ。
例えばスターバックスみなとみらい店の胸と尻と口と目の大きな女の子が気になってたんだけど、僕に今日挨拶した感じでは、最近彼氏できて安定してます風の自信があって落ち込んだ、とか、ホームパーティーに誘われて喋ることの自信がないし、自分にも自信がないから、言葉を発することができないっていうことにしてって、招待してくれた人に言ってそういう設定でパーティーしてたんだけど、途中で僕に話しかけてくれた女性がとても綺麗で、覗き込むような調子で「こんばんは」なんて言われた拍子に僕の口からも「こんばんは」って、って、で、場の全員が僕を凝視。え?え?え?って、口から溢れ出してそこらに広がった空気を寄せ集めたかったけど、まぁそれで質問攻め、その間に当の女性はパーティーから居なくなっていました。
後者は今捻りだした作り話なんだけど、僕はいつもうまく喋れない。動物になりたい。魅力的な女の子がいれば一直線に進んで鼻のさきで首筋をくんくんして、問答無用でぎゅっと抱きしめるような動物になりたい。
昼間に『治療、家の名はコスモス』読んだ。
例えばスターバックスみなとみらい店の胸と尻と口と目の大きな女の子が気になってたんだけど、僕に今日挨拶した感じでは、最近彼氏できて安定してます風の自信があって落ち込んだ、とか、ホームパーティーに誘われて喋ることの自信がないし、自分にも自信がないから、言葉を発することができないっていうことにしてって、招待してくれた人に言ってそういう設定でパーティーしてたんだけど、途中で僕に話しかけてくれた女性がとても綺麗で、覗き込むような調子で「こんばんは」なんて言われた拍子に僕の口からも「こんばんは」って、って、で、場の全員が僕を凝視。え?え?え?って、口から溢れ出してそこらに広がった空気を寄せ集めたかったけど、まぁそれで質問攻め、その間に当の女性はパーティーから居なくなっていました。
後者は今捻りだした作り話なんだけど、僕はいつもうまく喋れない。動物になりたい。魅力的な女の子がいれば一直線に進んで鼻のさきで首筋をくんくんして、問答無用でぎゅっと抱きしめるような動物になりたい。
くんくん
2008年6月9日 愛だの恋だの男だの女だのと翻訳好きじゃなくなるなら好きにならないでほしいと思う。
ところで、すこんの中に入ってる元彼の水色の上の茶色の話のような文章を書きたい。あれこそ、物語だ。
ところで、すこんの中に入ってる元彼の水色の上の茶色の話のような文章を書きたい。あれこそ、物語だ。
2008-06-08
2008年6月8日 日常ぼんやりしてるうちに一日過ぎて一週間過ぎて。
古いブルーズ音楽を集めてる。
これらの音楽の優れたところは、本質的には楽しむための音楽ではないところだ。
もしかしたら、演奏者が楽しむための音楽ですらないところだ。
古いブルーズ音楽を集めてる。
これらの音楽の優れたところは、本質的には楽しむための音楽ではないところだ。
もしかしたら、演奏者が楽しむための音楽ですらないところだ。
「男なんてだいたい嫌い」とその男は言いました。
2008年6月7日 愛だの恋だの男だの女だのと翻訳人の気持ちを俯瞰できて、
そこにいた数人全員の気持ちの図示すらできる気がした。
だから、というわけではないけれど、
許せる気もした。
許せるけれど、傷ついたし、傷つけたくなる自分の気持ちをコントロールしようとする自分を客観視できた。それらの過程で誰かを傷つけるやむをえずを選び取る自分だって。
好きっていう気持ちも、傷つけたい気持ちも、打算も、立場も、感じとれていた。触れることのできるもののように分かっていた。たとえばそれは、彼女の肩が僕の肩と反対向きに触れ合っていたとき、服を通して、肉を通して、肩関節を通して、骨の動きが直接触れるように分かったように。(僕がきっと無意識に記憶を何万回も想起していた電車の中の眠りのおかげで、一生その動きを忘れることは無いのだ。そして僕は閾上ですら何万回も繰り返して愛情を増幅する。この瞬間だって感触が残ってる。)
アプローチして、あなたなんて嫌い、ぷんっ。ってされるのまで予想(予想できたのはいつもいつもいつもいつもいつも僕たちは同じようなことを毎回繰り返してたから)してたけど、そのあと自分が凄いスピードで落ち込んでいくのまでは予想がつかなかった。その時、自分をコミカルだって笑い飛ばしてて、でも、同時に落ち込んでく気持ちも共存してた。
成長してるのかな。
彼女が僕をはねのけるのも恒例。
それで僕が彼女を妬かせたくなってそうするのも恒例。
それから彼女が傷つくのも恒例。
あと、彼が彼女の肩に腕をかけるのも恒例かもしれない。
僕たちは本当は異常に素直なのかもしれない。
オーケー。はっきりした。
もし傷つけたいなら気が済むまでそうすればいい。
これを書いている今、ぼろぼろなのに浮かれた気分なんだ。
僕の四肢が千切れた果てで会おう。
そこにいた数人全員の気持ちの図示すらできる気がした。
だから、というわけではないけれど、
許せる気もした。
許せるけれど、傷ついたし、傷つけたくなる自分の気持ちをコントロールしようとする自分を客観視できた。それらの過程で誰かを傷つけるやむをえずを選び取る自分だって。
好きっていう気持ちも、傷つけたい気持ちも、打算も、立場も、感じとれていた。触れることのできるもののように分かっていた。たとえばそれは、彼女の肩が僕の肩と反対向きに触れ合っていたとき、服を通して、肉を通して、肩関節を通して、骨の動きが直接触れるように分かったように。(僕がきっと無意識に記憶を何万回も想起していた電車の中の眠りのおかげで、一生その動きを忘れることは無いのだ。そして僕は閾上ですら何万回も繰り返して愛情を増幅する。この瞬間だって感触が残ってる。)
アプローチして、あなたなんて嫌い、ぷんっ。ってされるのまで予想(予想できたのはいつもいつもいつもいつもいつも僕たちは同じようなことを毎回繰り返してたから)してたけど、そのあと自分が凄いスピードで落ち込んでいくのまでは予想がつかなかった。その時、自分をコミカルだって笑い飛ばしてて、でも、同時に落ち込んでく気持ちも共存してた。
成長してるのかな。
彼女が僕をはねのけるのも恒例。
それで僕が彼女を妬かせたくなってそうするのも恒例。
それから彼女が傷つくのも恒例。
あと、彼が彼女の肩に腕をかけるのも恒例かもしれない。
僕たちは本当は異常に素直なのかもしれない。
オーケー。はっきりした。
もし傷つけたいなら気が済むまでそうすればいい。
これを書いている今、ぼろぼろなのに浮かれた気分なんだ。
僕の四肢が千切れた果てで会おう。
2008-06-06
2008年6月6日 日常コマーシャル職人見習いと知り合った。
濃い話ばかり。
映画の脚本書きを目指してるらしくて、
コマーシャルがあり得ない話だって言われて悩んでるとか。
そんな都合いいタイミングで電話は鳴りません的な。
僕は僕で小説書いてて物語にドラマが足りなくて云々とか話した。
それ以外にも込み入った話(技術的な)で気付いたら2時間経ってた。
出身の大学がFと同じ美大で24才。
途中で秘密の沖縄旅行の話とか色々。
また話したいね、っていうことで、連絡先交換して終わり。
濃い話ばかり。
映画の脚本書きを目指してるらしくて、
コマーシャルがあり得ない話だって言われて悩んでるとか。
そんな都合いいタイミングで電話は鳴りません的な。
僕は僕で小説書いてて物語にドラマが足りなくて云々とか話した。
それ以外にも込み入った話(技術的な)で気付いたら2時間経ってた。
出身の大学がFと同じ美大で24才。
途中で秘密の沖縄旅行の話とか色々。
また話したいね、っていうことで、連絡先交換して終わり。
ニーハイ
2008年6月5日 愛だの恋だの男だの女だのと翻訳僕が好きになる女の子は不安定な子が多い。
自分が不安定だから、共感し易いからかな。
でもでもでも、綺麗な女の子ってたいがい繊細(に見せるのが上手)なものだ。
守ってほしいの。的な。
あー、でも、これって俺じゃんか。
不器用で自己嫌悪。
好きな人に対してむきになる。
強烈な好意があるのに真っ直ぐ伝えられない。
自分が不安定だから、共感し易いからかな。
でもでもでも、綺麗な女の子ってたいがい繊細(に見せるのが上手)なものだ。
守ってほしいの。的な。
あー、でも、これって俺じゃんか。
不器用で自己嫌悪。
好きな人に対してむきになる。
強烈な好意があるのに真っ直ぐ伝えられない。
やまい ※この文章はビール5杯目の明け方に書かれた
2008年6月4日 日常狂気は伝染するだろう
何をもって狂気とするかは謎
つまり思想や行動は伝染する
そういった意味で全ての思想は宗教的
音楽は宗教に似ている
言葉の無い思想つまり沈黙の中に宗教は成立するのか
言葉を持つ前から祭壇は有ったのか
美容師は音楽と原始的な本能が古代からの云々と言った
言っている間僕は見習い美容師のバンドTシャツを眺めていた
何をもって狂気とするかは謎
つまり思想や行動は伝染する
そういった意味で全ての思想は宗教的
音楽は宗教に似ている
言葉の無い思想つまり沈黙の中に宗教は成立するのか
言葉を持つ前から祭壇は有ったのか
美容師は音楽と原始的な本能が古代からの云々と言った
言っている間僕は見習い美容師のバンドTシャツを眺めていた
書くことについて(仮) 18/100
2008年6月2日 コミューンと記録メモと書くこと「シロっていう名前なんですか?」「シロウ君。ヤマザキシロウ。白熊みたいでしょ。だから、シロくん。」「▲つながりだ。」ポマード(産業革命当時の執事といった風な)がやってきて、ビールを置いていった。乾杯をして、一口飲んで、それから尋ねた。「それで、あなたの名前は?」「私?」彼女が少し驚いたような調子なので、僕も少しびっくりした。「秘密よ。」「秘密ですか?」「そう。」「山下のどか、という名前でもない?」「そうね。」彼女はソファの肘かけと背もたれの間にもたれていて、頬に手を当てて、顎を少し角度を付けて僕のほうを見据えていた。今日の傲慢な態度は彼女の一部なのか、それとも、彼女の常態なんだろうか。「ねえ、’あなた自身’を見せてよ。持ってきたんでしょ。」と彼女は目を細めて言った。その仕草にはどことなく親密さが感じれた。僕はバッグに包まずに2枚のプラスチックのDVDのケースと一冊の本を持っていた。なんとなく、彼女にDVDの内容を説明するのは気が咎めて「ただのポルノビデオです。」テーブルの上に置いたケースについて嘘をついた。「君もそういうの観るんだ?」「まあ。」「どんな内容?」架空のポルノの内容を女性に説明するのは初めてだ。「片方は、芸能界に入るためにしかるべき人物とセックスする設定のビデオです。途中で男が一人、女が二人。女の子たちが最初から最後までその男に媚と身体を売る内容なんですけど、途中で馬鹿らしくなって観るのをやめました。」無名の彼女は顎に角度をつけるのをやめて、興味を僕の話に集中させている。僕はビールを飲んで、それから、さっきの大男と山下のことが頭を掠めた。別に大したことじゃないさ、と自分に言い聞かせて、もう一本の癌患者が死に至るビデオケースに入った赤いDVDの内容の捏造を始めた。「もう片方は、匂いフェチの女性のビデオと乱交物です。男のあれの匂いを嗅ぐのが好きな女の子が出てきて、その女の子は何人も出てくるAV男優のペニスの匂いを嗅いで、それからブロウジョブをする内容。で、後半は男女が乱交する内容で、最初は女4人男4人が合コンみたいなことを家でしてるんですけど、酒を飲み過ぎて、途中から雰囲気が少しずつおかしくなっていって、王様ゲームの内容がキスをさせてっていうのから胸を揉ませて、って段々エスカレートしていくんです。もちろん、そういう演出なんでしょうけど、それはちょっと面白かったですよ。」残りのビールを飲み干して、我ながら良く出来てると思った。
**************ある知り合いの女性(彼女はとてもとても素敵な女性だ。)が昔書いた小説の一部を引用する。
私が物語に愛されている人間かどうかは判らないけれど、間違いなく私は物語を愛している。その中に身を置くあいだ、荒廃した現実から侵されなくなる。そして、私が好く登場人物達は、みんな暴力にまみれた現実を模した世界で傷だらけになっている。血を流しながら、それでも彼らは生き残ろうとするのだ。
それらが高度な自己憐憫に過ぎないと看破されればそれまではあるけれど。
*******************
外は小雨が降っていて、時間はゆっくりと進んでいる。2008年5月31日土曜日20時15分サンマルクカフェ元町店。オレンジ色のソファに座っていて、僕以外に席に座っているのは、禁煙席に座っているのは電子辞書を片手に本を読んでいる男と、そしていつものように詩人(想像)の女の子だ。彼女は黒いコートを肩からかけていて、何かを紙に書き付けている。白いmacBookでカチカチと音を立てて、また一文字一文字、と。これは一種のストレッチである。詩人の彼女が今こちらを向いて、それがミスであったかのように逆の方向を向いた。
「君もそういうの観るんだ。」「男なら誰だって観ますよ。」「ふぅん。ちょっと観てみたいわ。そのコンパみたいなのとか。」こうなっては話を逸さなきゃだ。「僕はあなたが読んでいる本が気になりますね。」彼女はバッグから2冊本を取り出して僕に渡した。ポマードがやってきて酒の代わりが必要か訊いた。「ビール。さっきと同じの。」そしてポマード退場。「分厚い方は『私の牛がハンバーガーになるまで』。「薄い本は、『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』。経済学の本。」「面白おかしい話?」彼女は笑った。どことなく嘲笑的にも見えた。「その人が持つ価値観んよりけりね。この本の作者がこんなことを言ってるの。『欧州で成育される牛は、政府の保護貿易の一環の産業保護政策によって一日2ドルのコストをかけられて発展途上国からの輸出から守られている。その一方で途上国の多くの人々は一日2ドル以下で生活をしている。』。」「価値観?」「そう。価値観。」僕はビールを一口飲んで、考えた。6ドルのビールの価値。それ以上何かを考えるには僕は酒を飲みすぎていた。素面だとしてもそれ以上は考えなかったと思う。 彼女は薄いグラスの中で光る酒を眺めて、それから、僕はコミカルに首をぐるぐる回して何かを考えるそぶりをした。「あなたは何かをコントロールしたい願望があるのかもしれない。」そう言ってから僕は後悔した。これじゃあコントロールしたがってるのは僕のほうだ。「?」「精神分析をしようとすること自体が精神病の一種である。どこかの’心理学者’が言ってました。まぁ、それに従えば、彼は自分自身の精神異常を告白してることになりますけど。「聞かせて。」僕は彼女が洋服の端と太股の境目を神経質に引っ掻いたのを見逃しはしなかった。「聞きたいわ。」「ひどく酔うといつも通信講座仕込みの精神分析を披露したくなるんです。」「私は飲み過ぎると文章を書きたくなる。」「帰りますか?」「今はあなたの精神異常に触れたいの。」ビールを2ドル分きっちり飲んで、それから頭を少し揺すってこめかみを押さえた。「あなたは自分自身の物の見方が唯一無二だと疑ってない。成り立ちを見極めようとすることで、それらを自分の支配下に置こうとしてるような印象を受けますね。」その間、彼女の顎に一層角度が付けられたような印象も受けた。「でも、それは、同時にあなたの深刻な訴求のようにも感じることがあります。」これは出任せじゃなかった。彼女の書いた本は物語とは言えるような代物ではなかったが、何か真摯に問いかける姿勢があった。「ようこそ食肉系の価値観へ?」彼女はイタズラっぽい表情で言った。
店を出て彼女と手を繋いで緩やかな坂道を歩いきながら、ぼやけて見える街灯をひとつひとつ眺めては追い越す繰り返しの途中で例の喪失感を感じた。現実から遠のいて、自分がそこに居るのにまったく違う場所からそれを客観的に眺めている。そういった感覚だ。彼女が僕の顔をじっと見ているのに気付いて、彼女のほうを向くと、初めてどこかに連れ出された幼い女の子みたいに微笑んで、繋いだ両手を乱暴に振り回すようにはしゃぎながら大股で歩き始めた。
************************
過去に一度、同じように女性とその通りを歩いたことある。彼女は28才で僕はその時20才で、僕は自分の回りのあらゆることに失望していた。世界は厳密にできていない。僕は矛盾を嫌い、欺瞞を憎んでいた。彼女は出身の場所に恋人を置いてきて、その彼氏とは喧嘩しているのだと言った。彼女は僕に甘えさせてもらおうとしていたが、僕は彼女に恋人がいるのに、それを前提に僕に好意を求めることにうんざりしていた。その夜、彼女は酒をしこたま飲んで僕の’介抱’を求めていた。不思議と彼女は全く酔わずに、10月の夜の代官山の駅前で、タクシーが通るのを待っていた。僕はそういった時の適切な対処を知らず、間違った方法と間違ったコミュニケーションとつまらない幼さで、途方に暮れていた。
*********************
**************ある知り合いの女性(彼女はとてもとても素敵な女性だ。)が昔書いた小説の一部を引用する。
私が物語に愛されている人間かどうかは判らないけれど、間違いなく私は物語を愛している。その中に身を置くあいだ、荒廃した現実から侵されなくなる。そして、私が好く登場人物達は、みんな暴力にまみれた現実を模した世界で傷だらけになっている。血を流しながら、それでも彼らは生き残ろうとするのだ。
それらが高度な自己憐憫に過ぎないと看破されればそれまではあるけれど。
*******************
外は小雨が降っていて、時間はゆっくりと進んでいる。2008年5月31日土曜日20時15分サンマルクカフェ元町店。オレンジ色のソファに座っていて、僕以外に席に座っているのは、禁煙席に座っているのは電子辞書を片手に本を読んでいる男と、そしていつものように詩人(想像)の女の子だ。彼女は黒いコートを肩からかけていて、何かを紙に書き付けている。白いmacBookでカチカチと音を立てて、また一文字一文字、と。これは一種のストレッチである。詩人の彼女が今こちらを向いて、それがミスであったかのように逆の方向を向いた。
「君もそういうの観るんだ。」「男なら誰だって観ますよ。」「ふぅん。ちょっと観てみたいわ。そのコンパみたいなのとか。」こうなっては話を逸さなきゃだ。「僕はあなたが読んでいる本が気になりますね。」彼女はバッグから2冊本を取り出して僕に渡した。ポマードがやってきて酒の代わりが必要か訊いた。「ビール。さっきと同じの。」そしてポマード退場。「分厚い方は『私の牛がハンバーガーになるまで』。「薄い本は、『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』。経済学の本。」「面白おかしい話?」彼女は笑った。どことなく嘲笑的にも見えた。「その人が持つ価値観んよりけりね。この本の作者がこんなことを言ってるの。『欧州で成育される牛は、政府の保護貿易の一環の産業保護政策によって一日2ドルのコストをかけられて発展途上国からの輸出から守られている。その一方で途上国の多くの人々は一日2ドル以下で生活をしている。』。」「価値観?」「そう。価値観。」僕はビールを一口飲んで、考えた。6ドルのビールの価値。それ以上何かを考えるには僕は酒を飲みすぎていた。素面だとしてもそれ以上は考えなかったと思う。 彼女は薄いグラスの中で光る酒を眺めて、それから、僕はコミカルに首をぐるぐる回して何かを考えるそぶりをした。「あなたは何かをコントロールしたい願望があるのかもしれない。」そう言ってから僕は後悔した。これじゃあコントロールしたがってるのは僕のほうだ。「?」「精神分析をしようとすること自体が精神病の一種である。どこかの’心理学者’が言ってました。まぁ、それに従えば、彼は自分自身の精神異常を告白してることになりますけど。「聞かせて。」僕は彼女が洋服の端と太股の境目を神経質に引っ掻いたのを見逃しはしなかった。「聞きたいわ。」「ひどく酔うといつも通信講座仕込みの精神分析を披露したくなるんです。」「私は飲み過ぎると文章を書きたくなる。」「帰りますか?」「今はあなたの精神異常に触れたいの。」ビールを2ドル分きっちり飲んで、それから頭を少し揺すってこめかみを押さえた。「あなたは自分自身の物の見方が唯一無二だと疑ってない。成り立ちを見極めようとすることで、それらを自分の支配下に置こうとしてるような印象を受けますね。」その間、彼女の顎に一層角度が付けられたような印象も受けた。「でも、それは、同時にあなたの深刻な訴求のようにも感じることがあります。」これは出任せじゃなかった。彼女の書いた本は物語とは言えるような代物ではなかったが、何か真摯に問いかける姿勢があった。「ようこそ食肉系の価値観へ?」彼女はイタズラっぽい表情で言った。
店を出て彼女と手を繋いで緩やかな坂道を歩いきながら、ぼやけて見える街灯をひとつひとつ眺めては追い越す繰り返しの途中で例の喪失感を感じた。現実から遠のいて、自分がそこに居るのにまったく違う場所からそれを客観的に眺めている。そういった感覚だ。彼女が僕の顔をじっと見ているのに気付いて、彼女のほうを向くと、初めてどこかに連れ出された幼い女の子みたいに微笑んで、繋いだ両手を乱暴に振り回すようにはしゃぎながら大股で歩き始めた。
************************
過去に一度、同じように女性とその通りを歩いたことある。彼女は28才で僕はその時20才で、僕は自分の回りのあらゆることに失望していた。世界は厳密にできていない。僕は矛盾を嫌い、欺瞞を憎んでいた。彼女は出身の場所に恋人を置いてきて、その彼氏とは喧嘩しているのだと言った。彼女は僕に甘えさせてもらおうとしていたが、僕は彼女に恋人がいるのに、それを前提に僕に好意を求めることにうんざりしていた。その夜、彼女は酒をしこたま飲んで僕の’介抱’を求めていた。不思議と彼女は全く酔わずに、10月の夜の代官山の駅前で、タクシーが通るのを待っていた。僕はそういった時の適切な対処を知らず、間違った方法と間違ったコミュニケーションとつまらない幼さで、途方に暮れていた。
*********************
123 123456
2008年5月29日 愛だの恋だの男だの女だのと翻訳もう少しブサイクな顔で平凡な性格だったら、モテはしなかっただろうけど、恋愛は上手くいくだろうなー、と思った。
僕にとって理想的な経過は、
1.出会う
2.お互いの容姿を気に入る
3.ホテル行く
123合わせて10分くらい。
誰かに対する恋愛感情は時間が経てば消えてなくなってしまう。
失望している。もう取り戻せる気もしない。
誰にとってもいつも最後に残るのは唯物的な性欲だけで、
それは言葉や態度や契りより真実で僕はそれを信頼している。
もちろん、あらゆることに例外があるように、これにも例外がある。
どこかの地点を越えると、生涯繋がってしまう関係。
それに気付いているのに、認めることができないのは、破綻しているからだ。
沢山の矛盾。
恋愛感情と性欲、惰性と嫉妬、成り行きや社会規範、コンプレックスもトラウマも。
複雑で、がんじがらめになっているのに、その複雑さが更に加速している。うんざりする。
シンプルになれば、どれほど良いものだろうって思う。
じゃあこういうのはどうだろう。
1.お互いに好意を持ってるのが分かってる
2.話して連絡先を交換する
3.デートをする
4.手をつなぐ
5.キスをする
6.セックスをする
1〜6合わせて3ヶ月。
好きな人とほど上手くいかない専門家の自分としては、1から2の躊躇が痛いほど分かる。同情もできる。
だからこそ
けれど、それでもやっぱり間違ってると思うんだ。
僕にとって理想的な経過は、
1.出会う
2.お互いの容姿を気に入る
3.ホテル行く
123合わせて10分くらい。
誰かに対する恋愛感情は時間が経てば消えてなくなってしまう。
失望している。もう取り戻せる気もしない。
誰にとってもいつも最後に残るのは唯物的な性欲だけで、
それは言葉や態度や契りより真実で僕はそれを信頼している。
もちろん、あらゆることに例外があるように、これにも例外がある。
どこかの地点を越えると、生涯繋がってしまう関係。
それに気付いているのに、認めることができないのは、破綻しているからだ。
沢山の矛盾。
恋愛感情と性欲、惰性と嫉妬、成り行きや社会規範、コンプレックスもトラウマも。
複雑で、がんじがらめになっているのに、その複雑さが更に加速している。うんざりする。
シンプルになれば、どれほど良いものだろうって思う。
じゃあこういうのはどうだろう。
1.お互いに好意を持ってるのが分かってる
2.話して連絡先を交換する
3.デートをする
4.手をつなぐ
5.キスをする
6.セックスをする
1〜6合わせて3ヶ月。
好きな人とほど上手くいかない専門家の自分としては、1から2の躊躇が痛いほど分かる。同情もできる。
だからこそ
もう少しブサイクな顔で平凡な性格だったら、モテはしなかっただろうけど、恋愛は上手くいくだろうなーって言いたくなる。つまらない人間と居るほうが落ち着くっていう気持ちも分かる。
けれど、それでもやっぱり間違ってると思うんだ。
タイトル捻り出すのに10分くらいかかったけど思いつかなかった。
2008年5月28日 読書『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』読了。
その文章の中で科学とイデオロギーの違いを説明していてい感心した。
科学は無根拠を是とせず、実験と統計が反映されたものだけど、イデオロギーは実験などの現実の結果(もしくは経過)を無視したものである、と。
エリック・ホッファー『全アフォリズム集』(マイファーストホッファー)読んでる。
並行して、アーヴィングの『ウォーターメソッドマン』を読んでる。これも3度目か4度目。もしかしたら5度目かも。
アーヴィングの作品はどれもイマイチだけど、これは特別。
ボブ・ディランの『Forever Young』を聴いている。
素晴らしい歌詞。
ttp://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=bob+dylan+lyrics+forever+young&btnG=Google+%E6%A4%9C%E7%B4%A2&lr=
その文章の中で科学とイデオロギーの違いを説明していてい感心した。
科学は無根拠を是とせず、実験と統計が反映されたものだけど、イデオロギーは実験などの現実の結果(もしくは経過)を無視したものである、と。
エリック・ホッファー『全アフォリズム集』(マイファーストホッファー)読んでる。
並行して、アーヴィングの『ウォーターメソッドマン』を読んでる。これも3度目か4度目。もしかしたら5度目かも。
アーヴィングの作品はどれもイマイチだけど、これは特別。
ボブ・ディランの『Forever Young』を聴いている。
素晴らしい歌詞。
ttp://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=bob+dylan+lyrics+forever+young&btnG=Google+%E6%A4%9C%E7%B4%A2&lr=
社交辞令でロウタッチ
2008年5月27日 日常鳥居みゆきのgyaoの5/3のやつ見てたら、「誠意見せて云々」のところで鳥居が涙ぐんでて、気の毒になった。そういう気分になった理由は分からない。ただ、すこし。
オースターの『リヴァイアサン』読了。読むの4回目か5回目。
平易な言葉で難解な物語。読み手を不可抗力的に引っ張っていくストーリーテリングの真骨頂。それで?それで?と思わせるのがコツかなぁ。
オースターの『リヴァイアサン』読了。読むの4回目か5回目。
平易な言葉で難解な物語。読み手を不可抗力的に引っ張っていくストーリーテリングの真骨頂。それで?それで?と思わせるのがコツかなぁ。
書くことについて(仮) 17/100
2008年5月26日 コミューンと記録メモと書くこと2008年5月29日21時。渋谷サンマルクカフェで、隣に座った女の子が向かいの席に東京バナナの袋を置いていた。その子は年は25才くらい。背は160cm前後で、黒いジャケット、デニム生地のショートスカート、黒いブーツ、少し茶色いロングの髪。横目で見る彼女の髪から覗ける輪郭と高い鼻が顔立ちのよさをはっきり示していた。彼女が東京土産を持ち歩いている理由が僕には分からない。木曜で実家に帰るには一日余裕がある。それとも明日は有給なんだろうか。ちらちら眺めていると、彼女がバッグからスーツのパンツを取り出して整えていて、余計に混乱した。仕事が終わった後で、彼女はどこかで私服に着替えてどこかに行く。スーツを着ない理由は?まず、その東京バナナは彼女が実家に持っていくのか、それとも誰かが東京に来るから、その誰かに持たせるために渡す東京バナナなのか、それとも、もしかしたら、家に持って帰って一人で食べるんだろうか。
ともかく、スーツから私服に着替えた、ということは誰かに会うんだろう。これはまず間違いない。それから東京バナナを東京の家で一人で食べるおやつにするということも無いだろうから(たぶん)、彼女はどこか地方から来る人に渡すか、もしくは地方に行くか、どちらかだろう。彼女が地方から出てきて、仕事のあと私服に着替えて東京散策した、という可能性もあるけれど、わざわざ私服に着替えるようなことまでするだろうか。それにもし地方の実家なりに行くとしたら、スーツから私服に着替えるのは家ですると思う。それに実家に帰るんだとしたら、夜の21時に渋谷にはいない。もうとっくに新幹線に乗っているはず。つまり仮定を想像して、一番まっとうな答えは、彼女は仕事を終えて私服に着替えた、彼女の実家の鳥取(想像)から来る彼氏(家族が来るならわざわざ私服に着替えようとはしない気がする。)を待っていて、彼氏が来るまでにデパートの地下一階で東京名物東京バナナを買った。ということになる。
という考えを巡らしてると、彼女は席を立って(21時20分頃)、トレーを片付けて、荷物(バッグと傘と東京バナナ)を持って店を出て行った。正面から眺めた彼女は少し頼りなくて、黒目がちな目はすこし曖昧でぼんやりしていて、不安や孤独が感じ取れた。
代官山から渋谷に向かう通り途中の路地を少し歩いた所の地下に店があって、店内は薄暗くて、目を凝らして見回すと、’山下’を見つけた。それと酔いつぶれた山下と、あと上背だけで身体が恐ろしくデカい坊主刈りの男も一緒にいた。「こんばんは。」と彼女に言うと、彼女はにやついて、返事をせず、ソファの隣を向かいの席を顎で指し示した。坊主刈りは僕に口で少し笑むように一瞥して、席を空けて(リンゴが一つ入るかどうかというスペースだったが)、それから、店員を呼んでメニューを持って来させた。こんな体躯の男だったら、否応なく威圧的に感じるものだけど、その丸刈りの前に座ると落ち着いた気分になった。山下はソファに首から上を逸せるように天井を向いていた。寝ているのかもしれない。「彼、私の新しい恋人。」と’山下’は坊主刈りに紹介した。坊主刈りは野球のグラブのような手を差し出して、僕はミニチュアのような手で握手した。山下は嬉しそうににっこりと笑って「彼はシロくん。」と坊主刈りを紹介してくれた。可愛らしい名前だ。僕は自分の名前を告げると、彼は彼女達のマネージャーだと言った。僕が’山下’の名前を教えてもらおうとしたところで、ポマードを塗りたくった店員が割って入ってきて、やたらと沢山説明の書かれたメニュー表を5秒間眺めて、それから「ビール」とだけ言って頼んだ。ポマードはビールの種類を丁寧に説明しようとしたけれど、僕が落ち着かない様子にしているのを察してそのまま戻っていった。「シロくん、彼女連れて帰ってくれる?」と’山下’はそれが当たり前のことのようにぴしゃっと言った。「そうしようと思ってたんだ。」と、手元のウィスキーを飲み干して真っ黒なサイフを取り出して2万円を置いて、立ち上がる(2m位あったと思う。)と、山下を赤ん坊のようにだっこして(僕は成人した女性をそういうやり方で介抱するのを初めて見たので、面食らってしまった。)それから、「じゃあこいつを頼むよ。」とだけ言って店を出て行った。なんとなく、ちぐはぐな雰囲気になった。大男が泥水した美人を抱えて居なくなった場所というものは、少し時間の流れが変わってしまうものなのだ。
ともかく、スーツから私服に着替えた、ということは誰かに会うんだろう。これはまず間違いない。それから東京バナナを東京の家で一人で食べるおやつにするということも無いだろうから(たぶん)、彼女はどこか地方から来る人に渡すか、もしくは地方に行くか、どちらかだろう。彼女が地方から出てきて、仕事のあと私服に着替えて東京散策した、という可能性もあるけれど、わざわざ私服に着替えるようなことまでするだろうか。それにもし地方の実家なりに行くとしたら、スーツから私服に着替えるのは家ですると思う。それに実家に帰るんだとしたら、夜の21時に渋谷にはいない。もうとっくに新幹線に乗っているはず。つまり仮定を想像して、一番まっとうな答えは、彼女は仕事を終えて私服に着替えた、彼女の実家の鳥取(想像)から来る彼氏(家族が来るならわざわざ私服に着替えようとはしない気がする。)を待っていて、彼氏が来るまでにデパートの地下一階で東京名物東京バナナを買った。ということになる。
という考えを巡らしてると、彼女は席を立って(21時20分頃)、トレーを片付けて、荷物(バッグと傘と東京バナナ)を持って店を出て行った。正面から眺めた彼女は少し頼りなくて、黒目がちな目はすこし曖昧でぼんやりしていて、不安や孤独が感じ取れた。
代官山から渋谷に向かう通り途中の路地を少し歩いた所の地下に店があって、店内は薄暗くて、目を凝らして見回すと、’山下’を見つけた。それと酔いつぶれた山下と、あと上背だけで身体が恐ろしくデカい坊主刈りの男も一緒にいた。「こんばんは。」と彼女に言うと、彼女はにやついて、返事をせず、ソファの隣を向かいの席を顎で指し示した。坊主刈りは僕に口で少し笑むように一瞥して、席を空けて(リンゴが一つ入るかどうかというスペースだったが)、それから、店員を呼んでメニューを持って来させた。こんな体躯の男だったら、否応なく威圧的に感じるものだけど、その丸刈りの前に座ると落ち着いた気分になった。山下はソファに首から上を逸せるように天井を向いていた。寝ているのかもしれない。「彼、私の新しい恋人。」と’山下’は坊主刈りに紹介した。坊主刈りは野球のグラブのような手を差し出して、僕はミニチュアのような手で握手した。山下は嬉しそうににっこりと笑って「彼はシロくん。」と坊主刈りを紹介してくれた。可愛らしい名前だ。僕は自分の名前を告げると、彼は彼女達のマネージャーだと言った。僕が’山下’の名前を教えてもらおうとしたところで、ポマードを塗りたくった店員が割って入ってきて、やたらと沢山説明の書かれたメニュー表を5秒間眺めて、それから「ビール」とだけ言って頼んだ。ポマードはビールの種類を丁寧に説明しようとしたけれど、僕が落ち着かない様子にしているのを察してそのまま戻っていった。「シロくん、彼女連れて帰ってくれる?」と’山下’はそれが当たり前のことのようにぴしゃっと言った。「そうしようと思ってたんだ。」と、手元のウィスキーを飲み干して真っ黒なサイフを取り出して2万円を置いて、立ち上がる(2m位あったと思う。)と、山下を赤ん坊のようにだっこして(僕は成人した女性をそういうやり方で介抱するのを初めて見たので、面食らってしまった。)それから、「じゃあこいつを頼むよ。」とだけ言って店を出て行った。なんとなく、ちぐはぐな雰囲気になった。大男が泥水した美人を抱えて居なくなった場所というものは、少し時間の流れが変わってしまうものなのだ。
パフュームのセラミックガールを聴いてると、group_inouのmaybeを聴きたくなる。
チカチカした気分で目を瞑ると、風が吹く稲田の景色が投影されて圧倒された。
チカチカした気分で目を瞑ると、風が吹く稲田の景色が投影されて圧倒された。
書くことについて(仮) 16/100
2008年5月24日 コミューンと記録メモと書くこと東京、渋谷、センター街、ファーストキッチン、略してファッキン。悪魔が笑ってる。おい、見えるか?お前には壁が見えるかい?壁。現実と幻想を分け隔てる壁。でも、存在しない壁。俺が13才の時、生徒会の副会長で、僕は地元で、大統領と握手する機会。沖縄のしかるべき場所しかるべき時間に、優等生の僕は彼と握手することになった。戦争と平和について、一通り話した男が僕の前にいた。1時間前、彼の演説をパイプ椅子に座って、拝聴する、島国の善良な自分。沢山の人達が死にました。云々。30分前。僕は初めて悪魔の声を聞いた。誰かが耳元も囁いている。殴れ殴れ殴れ殴れ殴れ、あいつを殴れ。やつを殴れ。耳元で悪魔が囁いている。太陽、風、静かに座って演説を聞く人達、大統領、彼を取り囲むSP、市長と彼らの友達。僕の目の前を通り過ぎた女性がトイレが空くのを待っている。彼女は黒いぴったりした服を着ていて、彼女のお尻が少しだけ洋服からはみ出している。30秒ほど、トイレが空くのを待って、諦めて彼女のは去っていた。ふたつ隣に座る女の子の二人「絶対パンツ履いてない。」「ありえない。」「パンツ....」「っっていうか、トイレで寝てる。」15分前。殴る?いや、よせ。殴れ。取り囲み見ろよ。即拘束、即逮捕、即射殺。死んじゃうぜ。殴る?殴る?殴る?手の内側が汗まみれになっている。射殺はないだろ?射殺はないだろけど、事件だぜ?やっちまえよ。殴るか?殴ろう。殴っちまえよ。トイレはまだ空かない。トイレの内側にいる女性は?眠っているのかもしれない。それとも化粧をしているのかもしれない。いや、もう20分は入っている。決して彼女をトイレを出ようとはしない。5分前。殴らなくてもいい。そうだな、例えば、あいつの手をつねるだけでもいい。アウチ!とか言って、それなら問題にはならないだろう。怒りはしないだろう。ちょっとした悪戯。今トイレを占拠している誰かは10人目の訪問者を華麗にはねののけた。トイレの中の誰か。やつは何者だ。何をしているんだ。
「さぁ、どうかしら。」彼女は腕を組んで、頬に手をやって考えるポーズをしている。「とにかく、僕は行きます。用事があるんです。」「大切な用事?」「僕にとっては。」「またね。」「じゃあ。」夜の2時半にタクシーを拾って、フルカワの家に向かう途中、’山下’との夜のことを思いだそうとしたが、うまくいかなかった。何も思い出せない。彼女は実在するんだろうか。途中のコンビニで買ったビールを開けて飲みながら、頭に手を当てて、ゆっくり記憶の糸を引いていた。
***********************僕の知り合いの男の部屋には写真が何枚か掲げられてあって、その中の一枚はとても奇妙で、椅子に座らされた白衣の丸刈の男女が7人ほど並んだ写真で、彼らは精神病院の病人のように、画一の白い服を着ていて、全員が右手を掲げている。写真の持ち主の男に、その写真の意味を尋ねると、人体実験の実験経過を撮ったものだと教えてくれた。戦時中のドイツの軍の実験で、被験者の頭を開いて、しかるべき場所に電気が通るように2本の電極を差し込み、そして、頭の閉じた。微弱な電気が電線をつたい、電極から、その脳の快楽を司る部分に電気が伝わる。右手を挙げる意味は『快』の時で、もう一本の電極から電気が伝わると『不快』になり、被験者達は左手を挙げる。彼がその写真を部屋に置く理由までは訊く気は起きなかった。その持ち主はある有名なレコード会社の創業者で、僕は常に彼が何かに対して強い苛立ちを抱えているように思えた。それが具体的にどういったものなのかは想像できる範囲を越えていた。****************
電話が鳴っている。ポケットで揺れているプラスチックの板の懸命さは力強く僕に応答を求めているのが、少し嬉しく思えた。「はい。」「山下です。」「どちらの山下さんですか?」「あなたの憧れているほうの。」「なんだか、皮肉な言い方ですね。」「気のせいよ。今なにしてるの?」ビールの缶を握って、少しだけ自分が惨めに思えた。実際惨めな人間なのかもしれない。「自己逃避です。」「何から逃げてるの?」残りのビールを全部飲み干して、それから頭のこめかみの近くを押さえた。「何から逃げているのかは、分かりません。」「分かろうとしていないだけかもよ?」「同じことです。」「ねぇ、今、渋谷で私達も自己逃避してるの。来ない?」私達、彼ら、ともかく複数の人達。2人かもしれないし、もしかしたら、1万人くらいの若者達がひとつの何かに向かって一斉に自己逃避しているのかもしれない。「行く場所があるんです。タクシーに乗っているんです。」「タクシーは逃避には向かないと思うわ。行き先を告げなきゃいけないし。逃避できるのは、終着点の無い運転手だけね。」「でも、いま抱えてる物はすぐに果たさなきゃいけないことでも無いんで。行きますよ。そっちに。」「何を抱えているの?」「自分自身です。持っていきますよ。」彼女が告げる店の住所を反復すると同時に運転手にそのまま伝えて、老人とも言える、運転手はストイックに行き先を変えた。電話を切ってしばらくすると、僕は運転手と何かを話したくなったけど、どんな風に話せばいいのかが分からなかったし、何を話せばいいのかも、分からなかった。ただ、何かを伝えたくなった。大事な事柄なのに、それが具体的にはどんな物事なのかは僕にも分からないのだ。どこかで話の出口と入口が繋がっていて完成されてしまっているような風だった。
携帯電話をもういちど眺めると、03:02と表示されていた。フルワカに電話をかける。夜起きて、昼間に眠る彼にとって、この時間は生活する時間だった。7コール目で留守番電話に切り換わって、電話を切った。女と居るのだろう。
この文章は2008年5月25日の夜7時に横浜元町のサンマルクカフェの2階で書かれた。僕以外に客は4人いて、全員連れがいなくて、それぞれがそれぞれのために時間を使っていた。憂鬱そうな表情で本を読む青年と、何かを無心に学んでいる女性。ぼんやり考えごとに耽る老人、そして、紙に何かを書き付けている女性。彼女は日曜の夜にいつもここにいて、ノートに文章(のようなもの)を書いている。僕は彼女が詩人だったらいいな、と思っている。時々、彼女は涙を流す。彼女が泣く所作が僕は好きだ。彼女の泣きかたにはみすぼらしさが無く、同情をひくような態度も無かった。ただ、ゆっくりと、涙を流すのだ。
「さぁ、どうかしら。」彼女は腕を組んで、頬に手をやって考えるポーズをしている。「とにかく、僕は行きます。用事があるんです。」「大切な用事?」「僕にとっては。」「またね。」「じゃあ。」夜の2時半にタクシーを拾って、フルカワの家に向かう途中、’山下’との夜のことを思いだそうとしたが、うまくいかなかった。何も思い出せない。彼女は実在するんだろうか。途中のコンビニで買ったビールを開けて飲みながら、頭に手を当てて、ゆっくり記憶の糸を引いていた。
***********************僕の知り合いの男の部屋には写真が何枚か掲げられてあって、その中の一枚はとても奇妙で、椅子に座らされた白衣の丸刈の男女が7人ほど並んだ写真で、彼らは精神病院の病人のように、画一の白い服を着ていて、全員が右手を掲げている。写真の持ち主の男に、その写真の意味を尋ねると、人体実験の実験経過を撮ったものだと教えてくれた。戦時中のドイツの軍の実験で、被験者の頭を開いて、しかるべき場所に電気が通るように2本の電極を差し込み、そして、頭の閉じた。微弱な電気が電線をつたい、電極から、その脳の快楽を司る部分に電気が伝わる。右手を挙げる意味は『快』の時で、もう一本の電極から電気が伝わると『不快』になり、被験者達は左手を挙げる。彼がその写真を部屋に置く理由までは訊く気は起きなかった。その持ち主はある有名なレコード会社の創業者で、僕は常に彼が何かに対して強い苛立ちを抱えているように思えた。それが具体的にどういったものなのかは想像できる範囲を越えていた。****************
電話が鳴っている。ポケットで揺れているプラスチックの板の懸命さは力強く僕に応答を求めているのが、少し嬉しく思えた。「はい。」「山下です。」「どちらの山下さんですか?」「あなたの憧れているほうの。」「なんだか、皮肉な言い方ですね。」「気のせいよ。今なにしてるの?」ビールの缶を握って、少しだけ自分が惨めに思えた。実際惨めな人間なのかもしれない。「自己逃避です。」「何から逃げてるの?」残りのビールを全部飲み干して、それから頭のこめかみの近くを押さえた。「何から逃げているのかは、分かりません。」「分かろうとしていないだけかもよ?」「同じことです。」「ねぇ、今、渋谷で私達も自己逃避してるの。来ない?」私達、彼ら、ともかく複数の人達。2人かもしれないし、もしかしたら、1万人くらいの若者達がひとつの何かに向かって一斉に自己逃避しているのかもしれない。「行く場所があるんです。タクシーに乗っているんです。」「タクシーは逃避には向かないと思うわ。行き先を告げなきゃいけないし。逃避できるのは、終着点の無い運転手だけね。」「でも、いま抱えてる物はすぐに果たさなきゃいけないことでも無いんで。行きますよ。そっちに。」「何を抱えているの?」「自分自身です。持っていきますよ。」彼女が告げる店の住所を反復すると同時に運転手にそのまま伝えて、老人とも言える、運転手はストイックに行き先を変えた。電話を切ってしばらくすると、僕は運転手と何かを話したくなったけど、どんな風に話せばいいのかが分からなかったし、何を話せばいいのかも、分からなかった。ただ、何かを伝えたくなった。大事な事柄なのに、それが具体的にはどんな物事なのかは僕にも分からないのだ。どこかで話の出口と入口が繋がっていて完成されてしまっているような風だった。
携帯電話をもういちど眺めると、03:02と表示されていた。フルワカに電話をかける。夜起きて、昼間に眠る彼にとって、この時間は生活する時間だった。7コール目で留守番電話に切り換わって、電話を切った。女と居るのだろう。
この文章は2008年5月25日の夜7時に横浜元町のサンマルクカフェの2階で書かれた。僕以外に客は4人いて、全員連れがいなくて、それぞれがそれぞれのために時間を使っていた。憂鬱そうな表情で本を読む青年と、何かを無心に学んでいる女性。ぼんやり考えごとに耽る老人、そして、紙に何かを書き付けている女性。彼女は日曜の夜にいつもここにいて、ノートに文章(のようなもの)を書いている。僕は彼女が詩人だったらいいな、と思っている。時々、彼女は涙を流す。彼女が泣く所作が僕は好きだ。彼女の泣きかたにはみすぼらしさが無く、同情をひくような態度も無かった。ただ、ゆっくりと、涙を流すのだ。