日常のルーチン化避けるために(日常が固定するのは老化への近道だと思う)本屋をぶらついてて、洋服最近買ってないなーって思って読んでたら、やっぱり衣服ってハマったらキリないけど、でも見る分には構わないだろー、と思った。Tシャツ一枚買うの我慢して、ファッション雑誌買うの優先するとか。(洋服を購入せずにひたすらファッション雑誌を毎月積む)

ファッションに興味はあるけど、買う金がないから、見ることで欲求を満たしている。
これもレゴ片手に読みたいー。

ロボ作りたーい。
読んでて興奮した。
これ読みたいー。

つか、俺はいつか本物の拳銃をぶっ放したい。
そのうちハワイに行くときだな、と。
「朝になって、携帯電話のアラームが鳴って起きて、時間を確認して、彼女の顔を見ているとやっぱり幼くて自分がしたことを考えて落ち込んだ。間違ったことをした気がしたけれど、でも、それを誰が間違っているか正しいかなんて分かるんだろう。でも、僕はそのとき自分が間違ったことをしたと思った。彼女は僕じゃない同じクラスの爽やかでサッカー部に入ってて、『まじお前のこと、大切に思ってる。』とか言う男の子のほうがずっと似合っていると思った。被害妄想かもしれないし、もしかしたらあれは加害妄想だったかもしれない。」僕は手元のコーヒーの紙のカップのコーヒーを一口飲んで、すこし考え直した。「いや、もっと正直に話したほうがいいかもしれない。彼女のことを好きになれないと思ったんだ。時々いるんだ。可愛いんだけど、何かがをその女の子が持ち合わせてなくて、気持ちのどこか優しくさせるような部分に触れることが無い女の子がいるんだ。ほんとにクズみたいな女を大切にしたいって思うことがあるのに、でも、分からないけど、その女の子が僕を惨めな気分にさせた。昨日の夜の彼女を傷つけた罪悪感がそうさせたのかもしれないし、もしかしたら欲求不満のせいだったからかもしれない。彼女を起こして、洋服を渡して、自分も服を着て、部屋の電気をつけて、備え付けの電気ポットでお湯を湧かしてコーヒーをいれた。朝のニュースを眺めていると、彼女は僕の身体に寄りかかってきた。夜に漫画喫茶の個室で抱き合っていたときもそうだったけど、そうしていると、自分が父親の代替物みたいだと思った。。実際そうなんだろうけど。そう感じるような子供っぽい甘え方だった。彼女が求めていたのは、難しいことばかりで、折り合いのつかないことばかりのなかで物事がシンプルになるそういう言葉も思考も必要ないスキンシップなんだと思った。幼年期からずいぶんと長い間失っていた、誰かと触れ合うことをずっと待ち望んでいたみたいだった。コーヒーを飲み終えて、部屋を出てエレベータで1階に降りて、チェックアウトして、ホテルを出て手を繋いで彼女と歩きながら、なんでもない話をしていた。明日の彼女の予定の話になって、『何もないよ。』って言った。彼女は出来る限りさり気なく僕の明日の予定を訊いた。最近になってやっと気付いたんだけど、僕は本当に無神経な人間だと思う。自分以外の人間が何を感じていて、何を考えていて、何が不満で、何を求めているか、なんて全然興味がないし、尊重もできないんだ。僕は何も予定が無いって言った。彼女は何かを言おうとしたけれど、それが禁句だってみたいに僕の目を覗き込んだ。また、もとの意味のない会話に戻っていったけど、その時点で彼女がどれくらい不安に感じていたかを察するべきだったんだと思う。一週間後、彼女にメールをしたけど、メールは返ってこなかった。電話をしてみても繋がらない。何度かメールをしてみたけど返ってこなかった。つまり。」と、コーヒーをもう一口飲んで、そこで話に区切りをつけた。「遊ばれたって思われたってこと?」とマリコはいかにも客観的だっていうみたいな態度で言った。「そう。僕は馬鹿だ。」「ほんと。」と彼女は念を押した。
1時間半後(3人で『かっこいい男は○○だ。』(ユキ「かっこいい男は可愛い」マリコ「かっこいい男はときどきかっこわるい」僕「かっこいい男は走るのが速い」(これは冗談のつもりでいったけど二人はなぜか納得していた。馬鹿げている。))と、2階の窓からスクランブル交差点を通り過ぎる人達のなかから、魅力的な人を探し出すというゲームをして過ごした。(僕は色んな人間が世の中にはいるもんだな、と感心した。))、ユキが漫画喫茶に行きたいと言い始めて(彼女は一度も漫画喫茶に入ったことがないらしい)、僕たちはツタヤのDVDのコーナーでそれぞれが一番好きなDVDを借りて漫画喫茶で観ることにした。残念だけど彼らとなんかエロい感じのことにはならないみたいだった。ユキは全く映画を観ないタイプらしくて(その代わりに活字を本の虫みたいに何冊も読んでいるみたいだった。そして、6階の書籍の階でユキはリルケの詩を孫引きして(僕が『ジェネレーションX』を好きなのをブログを通して知っていたからだと思う。)こう言った。それは僕がここで経験したことも僕の書いた文章で知っていたからだと思う。「孤独なる個人のみが、深遠なる法則に従う物体のようであり、その人が明けかけた朝に出ていくか、いろいろなことが起きている夕べを見やるなら、そして、何がどうなっているか感じとるなら、たとえその人が世間の真ん中に立っていても、すべての状況は、さながら死人から離れるように、その人からも離れてしまう。」と言った。僕は特に考えもなく無駄に引用で返さなければ、と思って。「金色帽子をかぶるんだ それがあの娘に効くのなら もしも高く跳べるなら ついでに高く跳んでやれ そのうちあの娘も叫ぶのさ 「恋人よ 金色帽子の高跳びする恋人よ あなたはもうあたしのもの!」と。(そしてあらゆる言葉が言葉として力を持ち始めるようにそれは時間と無意識を動力にして僕を突き動かすことになった。))、映画は僕とマリコが選ぶことになった。彼女のほうが映画オタクって言ってもいいくらいで、平均的な成人男性が年間にするマスターベーションの回数の3倍くらいは映画を観ているらしかった。一本だけと言ったのに、彼女は5タイトルくらい抱えていた。僕は『アメリカンビューティー』を選んで(本当は『カノン』を観たかったんだけど、ユキに配慮してやめた。)、彼女は『ゴーストワールド』を選んだ。それぞれの趣向にそれぞれの性格が反映されているものだ。いや、それらの性格を作るのが偶然手にした映画なり音楽なり文学なりなんだろうか。それともその両方がお互いに影響を繰り返すのか。この二つの映画を、この文章を読むたいはんのひとはまず読んでいないだろうから、wikipediaから引用して張っておく。(独りよがりなのはもう沢山だ)『アメリカンビューティー』:広告代理店に勤め、シカゴ郊外に住む42歳のレスターは一見幸せな家庭を築いているように見える。しかし不動産業を営む妻のキャロラインは見栄っ張りで自分が成功することで頭がいっぱい。娘のジェーンは典型的なティーンエイジャーで、父親の事を嫌っている。自分自身も中年の危機を感じていた。そんなある日、レスターは娘の応援を見に行って、彼女の親友に恋をしてしまう。 そのときから、諦めきったレスターの周りに完成していた均衡は徐々に崩れ、彼の家族をめぐる人々の本音と真実が暴かれてゆく。『ゴーストワールド』:ロサンゼルス郊外の退屈な町に住むイーニドとレベッカは幼馴染み。高校を卒業したら一緒に住む約束をしていた。卒業後、たまたま出会い系広告に名前を載せていた男をいたずらでダイナーに呼び出し、イーニドはブルース・レコードのコレクター、シーモアと出会う。イーニドと同じく世間に馴染めずにいた彼とイーニドは少しずつ親しくなっていく。一方レベッカはコーヒーショップで働き始めるが、働きながら一人暮らしをしようとする彼女と、資本主義システムに馴染めないイーニドの、2人の間は段々とすれ違ってゆく。
朝から何も食べていない二人に食事を取りたいと行って、WIRED CAFEに入って3人でライスプレートを頼んだ。これ以上ないくらいお腹が減っていたみたいで僕が半分食べる頃には二人は食べ終えていた。けれど、彼ら二人は喋りながらだったし、どういう仕組みなのかは分からない。女の子は食事を高速で食べながら会話をすることができる仕組みが。ユキが秘密の話を思い出したみたいで、僕たちに語った。「お母さんの恋人の話。」と言った。僕は何か言おうと思ったけれど、適切な言葉は何も思い浮かばなかったから、とりあえず、水を飲んだ。「お母さんにはお父さんがいて、で、あと彼氏が二人いるの。」「えっ」僕は思わず、聞き返した。「ひとりの女と三人の男よ。」「お母さんっていくつなの?」とマリコ。「32。」「若いのね。」「それで、あとから加わった彼氏が、うちに来たの。夜中でそのとき私は部屋で寝ていたし、お母さんも寝ていると思い込んでたみたいなんだけど、物音で起きちゃったの。隣の部屋で二人は何かを話しているみたいだったんだけど。」なんとなく恥ずかしくなって僕は水を飲んだ。もじもじしてしまう。「その男の人がリビングにいるところを覗いてたんだけど、若くて間違いなくハタチくらいでどこで捕まえてきたのかちょっと謎なんだけど、でも、とにかく家に連れ込むのはちょっとどうかな?って思った。少なくとも私がいるわけでしょ。」もじもじして、サラダにフォークを突き刺してから隣の席にいる二人組のカップルを眺めた。女の子はちょっと憂鬱っぽい目つきで猫背でぼそぼそ喋っていて、男の子は爽やかなんだけどどこか嘘っぽくて、たぶんモテない女性にモテるタイプの男だと思った。「それで、お母さんはバスルームに行って、彼氏のほうはひとりで取り残されて、ここで何気なく夜中に起きてリビングに来たら男がいて、っていう小芝居を打たないと隣の寝室の二人のもぞもぞする声を聞く羽目になると思ったら、いきなりその人が、洋服を脱ぎだしたわけ。もうほんとにどうかしてる。それで服を脱ぎながら、廊下のほう(つまり私のほう)に向かってきて、私はキッチンに逃げて隠れて見つからなかった。」マリコは少し笑って「それで?」と言った。「もう何が何だか分かんなかったけど、とにかく、彼はお風呂のなかに入って行った。そのときに彼の痩せっぽちな身体とか、ぱっと見た感じ毛深いように見えなかったけど、もうばっちり見ちゃった。」隣のカップルを眺めていて、普通の生活や普通の人々や何の歪みも無い(ように見える。それらを覆い隠して嘘を死ぬまで突き通す。)そういう生き方羨ましく思えた。素直過ぎて歪んだ心とか、愛しすぎたこと汚れてしまったことや、愛情の果てを確かめようとして、そこに何も無いことに気付いてしまうことがなかった、そういう生き方を羨ましく思えた。何かが間違った生温い生活のなかで何かを裏切り続けるけれど、それは裁かれないまま何度も繰り返されて、そしてそれは墓場まで続く。「お風呂に入ってる二人の声が聞こえてきて、耳を澄ませていたんだけど、そういうのってなんていえばいいんだろう。まえにAV女優のひとに会ったことがあるんだけど、彼女は小さい頃から周りが身体を売って生計を立てている、韓国人とか沢山の国から来た女の人達が集まっている場所で育ったんだって。延々と続く宿命から逃げきれなくて、彼女も彼女のなかで育てた女性像のように身体を売ってAV女優になるの。彼女が在日韓国人の娘だってことも年をごまかしてることも彼女のファンの男の人達は知らないんだけど、でもそうものでしょ。だから、私、それで怖くなって、自分の部屋に戻って、何も聞こえないように布団を被って耳を閉じて、何も聞こえないようにしていたんだけど、でも、何も聞こえないと、それはそれで退屈してきちゃうっていうか、やっぱり気になるから。それで、部屋の扉に耳をつけて物音に耳を澄ませてた。その男の子の声が、なんか女の子みたいに聞こえて、凄くセクシーだった。もっと低い声で唸るものだって思ってたのに、AVでもそうでしょ。『ゆうかちゃん、いいよ。』とか、くぐもった低い声をあげるものだと思ってたけど、でもその男の子はどうなんだろ。特殊なのかな。」「ふむ。」と僕は相づちをうった。何かが完璧に間違ってるのに、でも完璧に正解っぽい感じ。「だんだんヒートアップしていって、たぶん、女の人が一番低い声で、泣くみたいに、彼がいっちゃって。物音がしないから、しょうがなく自分の席に戻って布団をかぶったんだけどなかなか眠れなかった。」彼女はクリームソーダを一口飲んで付け足した。「そういうのって普通なの?高い女の子みたいな声出しちゃうのって?」と僕に訊いた。「さぁ。たぶん、一種のサービス精神みたいなもんじゃないかな。女の子がセックスが下手だけど好きな男にするみたいにさ。」「じゃあ下手だったのかな。」「下手じゃないと思うけど。よくわからないや。」と言った。隣のカップルは表面上、興味なさそうにしているけれど、その無言がこっちの会話に注意しているのが分かった。「じゃあマリちゃんの番ね。」とユキが言った。「なんか昼の番組にこういうのあったけど。サイコロ転がして、芸能人がお話をするの。あれ一度いいからやってみたい。」「『ごきげんよう』っていうラップグループ知ってるよ。昨日美大生のクラブイベントでライブやってた。」「ふーむ。」とユキ。小さな偶然や大きな偶然が僕たちの生活を作っている。沢山のことが有り過ぎて、僕の表現は過入力に対応できなくなっている。マリコは頭をぐるぐるまわして考えている仕草をした。「全然思い付かない。」「じゃあ今度ね。いざ、マンガ喫茶へ。」僕たちを席を立って、移動した。
「そういうわけなんだ。」と僕はのどかに言った。「ショックだったよ。他に男がいるなんてね。」彼女は流暢なフランス語で受け流した。すべての知性は本能の奴隷なんじゃないかと思う。理性のための理性は、どちらかといえば、習慣のなかにのみ組み込まれて、誰かが作った社会という一種の理性のなかでもがく。それは不文律になっている貞節から、何かを求めては退けられる者達が賢者ぶって誰かに促す嫉妬に似た警告かもしれない。「でも、それだと、そのカロリーメイツの女の子とどうやって仲良くなったのかが分からないけど。」僕は首をすくめた。「知りたがりは痛みを引き受けなきゃいけない。」「何それ?」「僕がいま思い付いた警句だよ。何かを知るっていうことは信じていたものを信じなくなるっていうことだし、信じていたことを信じなくなるようになるのは難しい。」「何かを知らなきゃ物を書くことなんてできない。」「そうかな。」「でも、難しいことばかり考えていてもしょうがないし、身を持って分かったことしか存在しないって最近思うようになって。それって想像上のことを書くことと正反対のことみたいだけどね。」「欲望を幻想にすり替えて、経験できたはずのことばかり書いているんだ。」「何を?」「小説を。」「もう書いているの?」「実はね。」「読ましてよ。」「うん。」電車がやってきて僕たちを乗せる。電車のなかで彼女が「AV作りたい。」とつぶやいた。「AVって?」「アダルトヴィデオ。知らないの?」「どんな内容の?」「AVって見ている男がどれだけ興奮するかを意識して作られるわけでしょ。でも、そのAVはどれだけ女優の女の子を感じさせるのか、を目的に作られていて、撮影はオマケみたいなもので、どっちかっていうと記録なわけ。で、これの凄いところはブルーレイのDVDでもって、映像のほとんどはその女の子、凄く凄く凄く綺麗で裸眼で見つめたら目が潰れちゃうくらいに綺麗な子、その女の子とのデートシーンが映像のほとんどを占めているの。たいがいの男はこれを飛ばして観るんだけど、でも、セックスシーンを見終わってほっと一息ついて、それでやたらと長いデートシーンを観ると、これがつまり、そのヴィデオの本体、セックスシーンがオマケ、で、最高のデート、男が思い描く微笑みのずっと上を行く笑顔や、甘えや、あどけない態度とか、いっぺんの無駄なシーンのない張りつめた映像。」僕は頷いた。「もっと言うと、それはAVが広告になっていて、そのデートの映像を観させるための餌に過ぎない。」「なるほど。」と僕は言った。なかなか素敵なアイディアだと思った。「それはアダルト、大人の男のためのヴィデオ。君はどんなAVを作りたい?」互いに握り合った両手をぎゅっと強く握って僕は考えた。「デリバリーヘルスの販売促進用のAV。女の子の胸に電話番号が書いてあって、そこにかけると、その女の子がやってくる。」「もうあるんじゃないかな。そういうの。」「どうかな。分からないよ。」僕は知り合いのホテヘルの店員のことを思い出した。彼曰く、顧客の連中は根が暗いやつらばかりで、暗くない連中は変なやつばっかりで「鈴木くん(その店員の名前)、僕興奮してきちゃうよぉ。」とか言うらしい。店員の女の子(というより平均実年齢の38才の女性達)は、待機所で派閥を作り、より多く客を取るグループと、取る客が少ないグループで喧嘩になる。そして世話役としての仕事も、客からの電話を受ける彼の仕事になるのだ。その友達曰く「掃き溜め」らしい。年を取った客が愚痴をその友人に言ったりして、それを聞くたびに、人生について考えさせられると言っていた。年を取り、肉体的な魅力を次第に失っていくのはどういう気持ちがするんだろう。誰かから愛される機会が減っていく実感は。
余談だが、マリコを手に入れたのはマンガ喫茶で、ユキがマンガを取りに行っている最中(手塚治虫の『火の鳥』を持ってきた)に、彼女が僕を見つめて、そうせざるえないようにしたからだった。分別の無くし方でいえば、これら3人の女の子は普通の女の子から外れていたけれど、彼らの経歴を知る限り、マリコは元々普通の女の子だったことを考えると特別なことのように思えた。彼女には人の男を欲しがる癖のようなものがついていた。きっと僕が従順な女の子だと何故だか逃げ出したくなるように、彼女はそうやって自分を傷つけながら癒していた。アメリカンビューティーの最後のビニール袋が舞い上がるシーンを3人で観ながら、僕は彼女とのセックスのことを考えていた。背徳感を感じるのは、モラルのせいかもしれない。それが罪のように思えることなら僕はなんだってしていた。その罪の大きさが僕を変えてくれると信じていた。いや、そういうことが自分を傷つけることも分かっていた。失望を裏付けるために何かを裏切りながら、安心に似た何かを感じる。そして、僕はいま気付いている。こういうのは綺麗な女の子が自分を汚すことと同じだっていうことを。
「そこでいきなり彼女の隣に行って始めるんでも良かったけど、こういう経過はゆっくり楽しみたいし、彼女が緊張している様子を見ているのが楽しかった。とりあえず、ここまで来てるんだから彼女が酔っぱらっている必要もない。課金制の冷蔵庫からポカリスエットを取り出す。あのボタンを押すとカシャッとなるのも好きだ。ホテルでセックス以外のお楽しみの3つに入っている。風呂、冷蔵庫、それから、オモチャが入っている販売機。3つ目に関しては、これ使ったことないからやってみたい、という初めて感を出しながら、毎回ピンクローターを買うのが僕のなかで恒例になっている。ポカリスエット2本を買って、彼女に渡す。両手で缶を持ってゆっくり飲んで虚ろな顔をして、唐突に『トイレどこ?』と訊くから、僕は指さしてトイレとバスルームが透明のガラスの仕切りで区切られた部屋への扉を指差す。彼女がいなくなったとき、なんとなくテレビをつける。初めてラブホテルを使ったとき(確か高校2年の時だったと思う。出るときに金が足りなくなるかと思ったあのときだ。)に、ZAZEN BOYSの『USODARAKE』のPVが流れていた。あのとき、あの場所で彼らが椅子に座ってセッションしている映像を観ていたときの、あの感覚をそれからもずっと振り払えない。AVの内容は、ひとつはコンパをやっているうちに段々と乱交になっていくという内容のものと、綺麗な女性(35過ぎで疲れた顔と幼い子供みたいな期待に満ちた目をした不思議な顔つきをしていた)が車でフェラチオしたりする内容だった。前者は、コンパの途中で抜けて行った男女がトイレでセックスして戻ってきて、二人は何事もなかったみたいな素振りをするのだ。これと同じ経験をした女性を僕は知っている。コンパの途中の移動のときに二人で消えて、ホテルに行っていきなりセックスをしてしまう、という話をその女性のブログで読んで、僕は世界の果てで起きたみたいに距離を感じた(なぜなら当時僕はそのブログの一読者だったし、彼女もまた、僕のブログの読者にすぎなかった。僕は彼女に憧れていた。僕にとって彼女は、偶像だった。それと同じくらい、彼女も僕に気持ちを寄せていたと、後々知った。)けれど、それと同じくらいアブノーマルな経験を彼女(そのブログを書いている女の子に)としたときに、奇妙な感覚になった。ある場所とある場所は、現実感覚で遮られているはずなのに、いつのまにか、気付くとその反対側に自分がいて、ありえないはずの現実にいる。僕は後にこれを模倣したちょっとした遊びをすることになる。彼女が長めのトイレから戻ってきた。代わりに自分がトイレに入って、用を済ませる。バスタブにお湯を張る。鏡をみて自分の顔を見ていると、なんとなく、冴えていない気がした。酔っていて赤らめた顔のせいか、深刻そうな顔つきのせいか、備え付けのプラスチックのコップで水を飲んで、顔を洗って、鏡をみたけれど、そこにいる男はどこかに閉じ込められているみたいだった。部屋に戻って彼女はさっきのAVを眺めていた。『あんな綺麗な人がなんでAVに出るんだろう。』と独り言みたいに言った。『いちど有名な私立大学のミスキャンパスを取った女の子が出ているAVをみたことがあるよ。なんかナルシストみたいなセックスの仕方だったな。』と答えた。なんでこんなことを話しているんだろう。場所が悪いのかもしれないと思った。家でするときはもっともっと穏やかで親密にいることができるのに。借り物の空間が僕たちのナイーブさを奪ってしまうのかもしれない。テレビの電源をリモコンを使わずに本体のスイッチから切って、僕はベッドに座って、靴下を脱いだ。かすかにお湯が湯船に溜まる音が聞こえてそれが無音を壊していて、やっぱり、お湯を張る必要はなかったと思った。『こっちに来なよ。』と僕は言った。」
「キスをして、服を脱がして、身体を舐めて、入れて、終わり。で、済めば良かったんだけど、彼女に触れているうちに、その未発達さに気付き始めたんだ。鈍く削げ落ちていない身体の肉や、大きくなっていない胸とか、それよりも僕を躊躇させたのが、彼女のぎこちなさだった。乳首を舐めているときのどうすればいいのかがはっきりしないような反応もそうだし、『舐めて』って僕が彼女に頼んだときに、彼女がアイスクリームを舐めるみたいにしたときとかね。別にそれが悪いって言っているわけじゃないんだけど、ほんとにそれで終わり。ぺろぺろ、はい、終わり。っていう感じ。」と僕は言って自分で笑った。ちょっと可愛らしい表現だと思った。「もしかして、って、思い切って不思議そうに僕のあれを眺めている彼女に訊いてみたんだ。『初めてなの?』って。彼女は頷いた。『訊いてなかったけど、年いくつなの?』って言うと彼女は平然と『17』と答えた。それで考えが混乱した。『ごめん、とりあえずちょっと舐めて。』彼女が熱心にそれを舐めたり擦ったり捻ったりしているあいだ、横たわって彼女の頭を撫でながら、天井を僕は見上げていた。」いつの間にか耳栓を外していたユキが僕に訊いた。「どうやって舐めればいいの?」急いでマリコは耳を塞ごうとしたけれど、席を立って僕の膝の上に飛び乗った。そこは勃起していてヤバい!と思ったけれど、もう遅かった。ユキは嬉しそうに笑っているし、窓からスクランブル交差点で何方向からも交差していく粒のような人達をもっとシャープな表情で見ていた。僕はユキを隣の席に戻すと彼女は僕に「それでどうなるの?入れちゃうの?初めてなのに。痛いんでしょ。泣いた?」と質問を何個もしたけれど、僕は周りを見回してから、答えた。「まだ知らなくてもいいんじゃないかな。」と彼女にいうと「私、小説家になりたいの。」と言った。それがなぜか僕を納得させたし、なんとなく敬意を起こさせた。「別に僕は彼女が女子高校生で、しかもヴァージンだからって興奮したりしなかったよ。むしろ、気が重くなった。ひと仕事やらなきゃいけないっていう感じかな。楽しいことなんて何もない。彼女の身体をたぐり寄せて、彼女のあそこを触り始めるとばっちり濡れていたよ。彼女が固くなっているから指に涎をたっぷりつけて彼女を擦ったんだ。」「彼女のどこを擦ったの?」とユキは訊いたところで、マリコが口を挟んだ。「ねぇ、あんた絶対頭おかしいと思う。」物凄く怒っているように見えたし、実際に怒っていたんだと思う。「そのへんは自習して。」と言って話を続けた。「彼女の身体がビクついて腰が動いていた。腰が動くと、彼女を触るのが難しくなるから、彼女の身体を押さえつけた。とにかく、いつもより時間をかけてしていた。たぶんそれだけでも30分くらいそうしていたと思う。でも彼女はイったりしなかった。」「どこに行ったの?」僕は無視しようかと思ったけれど、それはよくない気がして「それも自習して。で、彼女の中に入れるときにはできるだけ丁寧にしようと思ったけれど、それでも痛がったよ。物凄く痛がって『痛い。』って下唇を咬みながらシーツをぎゅっと握っていたよ。できるだけ、早く済ませようと思ったけど、そういうときに限って全然終わらないんだ。たぶん、昔、物凄く沢山手で擦られて、イかないまま入れて、3秒くらいで終わって、その女の子に『えっ』って言われたときのトラウマのせいだと思う。無意識のなかで身体が失敗を繰り返さないようにしているんだと思う。結局5分くらい動かしていたけど、彼女が涙をすこしだけ流したときに気持ちが沈んで抜いたよ。ゴムを取ってゴミ箱に捨てて、彼女を抱き寄せて毛布をかけて声をかけた。『痛かった?』って訊くと彼女は僕に甘えるように抱きついて何も言わなかった。心のなかで溜め息をついた。僕は2重にフラストレーションを溜め込んだまま彼女を慰めていた。彼女が眠ったところでシャワーを浴びて返り血を流して、風呂に浸かりながら自分が何をしているのか分からなくなったよ。初めてナンパした女の子が実は女子高校生で、しかもヴァージンで、初めてのデートで僕はその女の子とセックスをした。21才の思い出。」
例えば、愛おしいと思っている女の子に、メールに「君に会いたい」って心底からそう思って書いて送って、でもメールは返ってこないから、代わりに街中で声をかけた女性と勢いでセックスしたりする。

僕は間違っているのかな。

だから、次こそは、次こそは、っていつもそう思うんだけど。
明るい夢かぁ
なんとなくまた3人で公園を出て、歩き始めた。マリコは僕に「二人っていつもこういう、......お話をするの?」と訊いた。「そういうわけじゃないよ。今日は初めて。」「ほんとにあったこと?」「そうともいえるし、そうじゃないともいえる。別に物事が嘘か真かなんてそんな大事なことじゃないんだよ。」「大事だと思う。」とユキ。「どんな話をでっち上げても、現実はそれの上を行くからね。だから、誰が聴いても嘘みたいな本当の話のなかに、現実っぽく聞こえる嘘を混ぜるんだ。現実のことをそのまま話したとして誰が信じる。」マリコは髪をかき分けながら「本当か嘘かは誰だって分かると思うけど。」と言った。僕は心のなかでこう思った。もし仮に誰かが憧れている現実の有名人とか芸能人とかが、そう、例えば、アイドルを目指している中学生の女の子、あなたが憧れている女の子で夢にでてくる。あなたはその女の子がテレビに出てくるときは録画までして欠かさず観るし、部屋にはポスターが張ってあるし、誕生日も、好きな映画も知っている。いつもその女の子のことばかり考えている。だけど、現実は、その女の子は夢(テレビに出て歌手になるとかなんとか)を叶えるために、デブでハゲの芸能プロダクションのおっさんの愛人になって身体を売っている。それが空が青く、時が進むように、間違いない現実だとしても、きっと君はそれを想像することはない。それを仮になにかしらの偶然で知ったとしても、それを認めることができない。そして認めたとしたら裏切られたと感じる。現実は全て歪んだ認識でしかない。だからこそ、幻想があなたの中で走り出すためには、あなたが観たいと思う嘘を埋め込み、そして、僕は語りだす。「人は真実を認められるほど強くはない。見過ごすことで、正気を保っていられるんだ。さっきの続きだ。食事を終えてトイレに入って鏡に写った顔は赤くなっていて、目も潤んでいる。酒には強くない。このあとどうするのかを考えたけれど、それはどうでもいいことみたいに思えた。酒は現実逃避にうってつけだし、けど、正直にもさせる。本能や感情を曝け出させる。トイレを出て彼女が来てエレベータのスイッチを押して、ふたりのどちらともなく、横浜駅西口(繁華街のほう)に向かっていった。駅の構内にはいつもみたいに人ばっかりでなんでこんなに沢山の人が集まっているのか信じられなかった。行く場所ならほかにいくらでもあると思うし、物を買う以外のこと以外思い付かないのかな。まぁ自分もそのなかの一部になっていたわけだけど。歩きながら何を話したかはよく覚えてないけど僕のほうから『手を繋ごうよ。』って言った。ほかに言うことなんて思い付かなかったし、女の子と一緒に歩行するだけなら、男と馬鹿げたことを話したり、してたほうがずっと楽しい。女の子ってなんで楽しいことが好きじゃないのかな。たとえばさ、『~を挙げていく遊び』なんてやっても、凡庸なことしか思い付かないんだ。男と『可愛い女の子は●●だ』っていうゲームをしたりすると、すげー笑えるんだけど、女の子はそういうのがない。『可愛い女の子は可愛い女の子と仲良くなる。』とか『可愛い女の子はお母さんが美人。』とか、あと『目黒区に住んでいる』とか、交代で例をあげて、それは有る、とかよく分かんないとか、判定するゲームで段々ネタが細かくなってきてあとのほうだと、『可愛い女の子はマフを巻いている』とか俺が言って、『うわぁー、まじそれ分かるわー。』『三越とか行っちゃう系の!』とか笑いながら話してたりしてね。何が凄いってそれを話した2年後に実際に女の子のファッションの流行でマフを巻くのが流行ったこととかね。ほんと世の中って馬鹿げてる。女の子が例をあげるとなんか退屈なんだよね。『目がぱっちりしてる』って、そういうのとは違う!そういう意味じゃなくて!ってさ。」「そのゲームやりたい。」とユキが言った。「OKあとでやろう。とにかく、女の子とセックス抜きで仲良く出来るとしたら、その女の子は見所があると思う。で、彼女は『いいよ。』って一言。参るよね。彼女の手は暖かいっていうより、熱いくらいだった。皮膚の下で脈打ってるのが分かるくらいだった。不思議だったのは彼女の歩く速度で、早足っていえるくらいの速度で、地下街をどんどん歩いていった。特に何も考えてなかったけど、あれは一種の確信みたいな物があったと思う。ほんとに女の子ってどう出来てるのか分からないや。歩く速度を彼女にあわせて、まるで引っ張られるみたいにボーリング場が前まであったホテル街のすぐ近くまで来ていた。信じてもらえないかもしれないけど、僕がそこに誘導したわけじゃない。その時は気付いたらそこにいたって感じ。あとで考えると連れてこられていたって感じ。マンガ喫茶があってとりあえずここに入っておくかと思ってセブンイレブンに寄ってビールを買って、入った。薄暗い店内で青い蛍光灯で水族館みたいだった。マンガを二人で棚から選んで彼女はジョージ朝倉の『ピースオブケイク』の四巻(これってたしか成り行きでヒロインが男とマンガ喫茶でセックスするシーンがあったと思う。)を選んで、僕は『Rin』の一巻を手に取った。3階にある店内のずっと奥のほうにある47番の個室。ぼんやりした彼女と靴を脱いで個室に入ると無言になった。そもそも店内が静かだったから、話すような雰囲気じゃなかったし、それでビール缶を開けて彼女は一口飲むと彼女と目があった。近くの個室からはほかのカップルがDVDをどうすればPCで再生できるのかを話す声が聞こえた。僕は握っている500ミリリットルの缶詰を彼女に見せて『ビール飲む?』って訊くと彼女は頷いた。『可愛い女の子は上目遣いで男の子を見つめる。』僕はビールを口に含んで、それから彼女に口移しで与えた。」左からマリコ、ユキ、僕の順に並んでいる。変わった誕生日だし、こんなのって中々ない。「彼女の肩に手をかけて抱き寄せた。熱い身体で、身体がぴったりくっつくと、情欲と安心が一緒になって、酔った頭で前にそういうふうにしたのがいつかを思い出そうとしたけど、うまくいかない。女の子とそうしているときって、たいがいのことがどうでもよくなる。どうでも良くなっているのは彼女も同じらしくて、僕の股間が彼女に当たっていたと思うけど、彼女は気にしていなかったと思う。いや、凄く気にしていたかな。彼女の頭が僕の胸元にきて、身体には余分な力が入ってなくて、ただ、そこに女の子の身体があった。熱くて、誰も知らない秘密を抱えた身体。ほんとに何も二人とも喋らなかった。まださっきのカップルはDVDを再生できていなかった。気が向くとキスをした。まるで初めてキスをするみたいに、歯の内側に舌を入れても、反応はあんまりなかったけれど、唇と歯茎を舐め回しているうちに、こうやって、街中で女の子に声をかけてこうやって抱き合っているっていうのが、とてつもないことだって思い始めた。だってそうでしょ。そのへんにいる女の子が全部自分のものにできる可能性があるんだからさ。電車で目があうキャリアウーマンっていう感じのバイタリティーのありそうな女の人にも、喫茶店で文学を嗜んでいるメガネをかけた女の子にも、それとももしかしたら、アイドルをやっていて実はハプニングバーで働いている女の子もね。」と、そう言ったときに、僕たちは渋谷のスクランブル交差点に来ていた。行く場所も決めていなかったし、とりあえずそのへんのスターバックス(攻殻機動隊の『笑い男事件』に出てきたのはきっとここだろう。)に入ろうとしていた時だった。なぜ、最後にそう付け加えて、彼女に問いただしたのかは自分でも未だに分からない。話の繋がりで無意識にぱっと出てしまったのだ。彼女は一気に僕を警戒する雰囲気になったのが分かった。(そう、あの握手会の時みたいに。)「ハプニングバーって?」とユキが僕に聞いた。"チップとデール"に続き、彼女が知らなかった二つ目の名詞だ。「ハプニングがhappenするんだよ。」「何が起こるの?」「ハプニングが、だよ。」「ハプニングって何?」とユキは根気づよく聞いた。なんという知的好奇心だ。「ただお酒飲んで騒ぐだけの場所。」とマリコは僕に言った。「ねぇ、君は僕のことを覚えてなかったの?」とマリコに訊いた。「何のことかよくわからないけど。」と言う表情は固く強ばっている。僕たちの順番が来て、それぞれがそれぞれの頼みたい飲み物を頼む。それぞれの生活や生き方。赤いランプの下でユキは僕に訊いた。「ハプニングバーって何が起こるの?」
「そういう成り行きで僕とマリコは知り合ったんだ。」と僕は、のどかに言った。築地の市場で帰りに買った生牡蠣を二人で食べながら彼女に言った。「ちょっと待って。それ、どっちの話もはっきりしてない。」「どっちの話もって?」「まず、そのナンパした女の子はどうなったの?あと、そんな気まずい状態で、知り合うも何も、滅茶苦茶じゃない。"わや"よ。」「わや?」「滅茶苦茶、っていう意味。流行らせようと思うんだけど。」「あんまり流行らないと思うよ。」彼女は途中のコンビニで買った紙皿に牡蠣を乗せて味ポンをかけて食べていた。「ハッピーバースデートゥーユー」と彼女は僕の口に牡蠣を運んだ。新鮮な牡蠣は濃厚な味がして、寿司よりずっと良い食事だと思った。本文の流れとは関係のない、ちょっとした話にこそ、その文章の魅力があるように、その日最高の思い出だと思いながら牡蠣を飲み込んで、こう答えた。「OK、この話にはちゃんと続きがある。」
「たぶん、20分か30分くらいそうしてたと思う。そこにいたあいだ、気が向くとキスをして、髪を撫でたり、何も喋ることはなかったよ。そういう風な姿勢のままいることはやっぱり難しい。逆にそのままの姿勢でずっといるっていうほうがずっと難しい。『二人っきりになれるところにいこっか。』って彼女に言うと、寝ぼけているみたいに『うん。』って答えた。いや、たぶん、その場でセックスしようとしてもうまくいったんじゃないかな。任せっきりて感じ。店を出て、店から10メートルくらいの使い慣れているラブホテルに入った。彼女みたいな女の子がいたときにはよくそこに行っていた。その彼女みたいな女の子っていうのが凄くて、鬱病に不眠症、拒食症で、薬漬けだった。男に執着する女の子で、僕の知り合いの女の子に僕にバレないように、『彼に話しかけないでください。』って言って周ったっていう、イカれた女の子だったけど、彼女との出会い方を考えるなら、僕だって彼女と同じくらい狂っていたと思う。ある夜クラブで彼女と知り合ったときに、薄やみのところで彼女の頭の横の壁に手を当てて彼女を逃げられないようにした。何を話したっけな。確か、いきなり『このまま二人で抜けてホテル行かない?』とか言ってたと思う。滅茶苦茶だ。彼女はびっくりして『嫌です。』とか『無理。』とか言ってた。そういう風に女の子を追いつめるみたいにしていたのは、紳士的とは言えない振る舞いだった思う。実際、彼女は僕の両腕のあいだから抜け出してぴゅんってフロアのほう逃げて行った。明け方、クラブで僕が一緒に来てて潰れて瀕死のトドみたいになった友達の介抱をしていて、近くのコンビニに飲み物を買いに行く途中で彼女がクラブから出てきて「ねぇ。」って声をかけて、こう続けた。「ホテル行こうよ。」って彼女は僕に言った。これってほんとの話なんだけど、信じてくれるかな。彼女みたいな女の子っていうのは、その女の子には彼氏がいて、その朝、渋谷のラブホテルで彼女が寝ているあいだに、こんな馬鹿げた知り合い方をした女の子ともう一度会うこともないだろうし、何より酔っぱらっていたから、マナーに違反しているって分かりながらも携帯電話を開いて、メールを眺めていたんだ。『何時に今日は帰ってくるの?』って男とメールをしていたけれど、何が面白いって、彼女がその同棲しているだろう彼氏とは別に、"なんとか先生"っていう名前で登録した男ともメールしていて、病院の外でそいつと会ってるみたいだったってこと『夜はやさし』みたいに、精神科医と患者との特殊な関係。どういう治療なんだろうって考えていた。それからこういうことも考えた。彼女に入れた時に、ぎゅっぎゅっってあそこに力を入れたり抜いたりして、波打つみたいに僕を握ったりしているテクニックは、その先生に教えてもらったのかなって。」と僕は言ったところで、ユキが隣にいることに気付いて、ちょっとどうしようかと思ったけれど、マリコはユキの耳元を両手で挟んでいた。「それで?」とマリコは促した。「で、その彼女みたいな恋人を僕は結局失ったんだけど、彼女を無くしたときのことはよく覚えているよ。まぁ、それはまた別の話だ。その彼女みたいな女の子とよく言っていたラブホテルに、そのベースを弾く女の子と一緒に入った。彼女は「12時前に帰らなきゃ。」って言っていたけど、"休憩"で部屋を借りることのできる10時を過ぎていた。402号室のボタンを押して鍵を受け取る。僕はこのやり取りが好きだし、ホテルに行くまでの時間も好きだ。それから目的の部屋に行くときにエレベータのなかでキスをするのも好きだし、鍵を入れてドアを開けるのも好きだ。部屋のなかにはベッドがあって、テレビがあって、灰皿とライターもあるし、料金表もあるし、歯ブラシ、カミソリ、石けん、そしてコンドーム。目的がはっきりしている物って好きだ。包丁は食材を切るためにあるし、自転車は人を乗せて走りためにあるし、ラブホテルっていうセックスをするために純粋に洗練された場所。彼女が所在なさそうにして、ソファに座っているのが可愛いと思った。」
誰かを好きになったりいっしょにいることができるほど強くもないし器量もないのに、いつも誰かを好きになり過ぎている。好きになり過ぎている。
Fine Romance 60/100
原宿から渋谷までの道を歩きながら、秘密の話をすることにした。足りない隙間を言葉で埋める。「さっきの本屋で女の子に話しかけた話の続きを聞きたい?」とユキに聞くと、彼女は黙って頷いた。「そのあと僕は彼女にメールを送ってみた。『音楽はどんなのが好き?』とか『好きな食べ物は?』とか『前会ったときは凄くどきどきした。』とかね。何をかけばいいのかなんて、全然見当つかなかったけど、とにかくメールはしたよ。メールを何回か続けて、彼女に会うことにしたんだ。『音楽グループを組もう』ってそんな感じのことをメールで書いておくった。そういう理由を無理矢理つけてね。だってそうだろ。『君と飯食ってホテルに行きたい。』なんて送るわけにはいかないからさ。世の中には沢山の建前と本音がある。見え透いたものもあるし、分かりにくいものもある。建前と本音についてはちょっと面白い話があるけど、それはまた今度だ。とにかく彼女と音楽グループを組むっていうことでまた彼女と会うことにした。どんな音楽グループだろう。Pixiesみたいなんじゃないかな。とにかく、18時に横須賀の片田舎の駅、つまり彼女の地元で会うことにした。ほんとに酷い経験だった。僕が待ち合わせ場所に20分くらい早くついて駅の前についたのが10分前、あそこには何もなかったよ。さびれていて、目についたものは駐輪場くらいだった。そのころ、僕は横浜駅の近くに住んでいて、そこも栄えてるってほどじゃないけど、あの駅の近くはもっと酷かったな。いや、あの時の記憶が景色をある程度歪ませてるかもね。待ち合わせの時間の5分前、僕は辺りを見回して時間を確認して、しばらく改札の周りを歩いていた。電話ボックスが置いてあって、そのなかには電話機が入っていた。キオスクは閉店の間際で、辺りは薄暗くなってきて、改札を抜ける人達はみんな家に帰っていく、あの少しだけ懐かしい雰囲気。18時ちょうどになった。彼女はいない。彼女に似た人すらいなかった。駅員と、僕。待っていれば来るだろうと思って、5分くらいそのへんに立って待っていた。携帯電話がないから連絡を取ることができない。待っているだけしかできなかった。それからさらに10分経っても彼女は来なかった。女の子のことだから多少遅れることだってあるだろうって無理矢理自分を納得させていた。女の子だから遅れるってよくわかんないけどね。改札にある時計が18:30を指していた。近くの電話ボックスに僕は入って100円を電話機に入れて、彼女がノートに書いて破って渡してくれた電話番号に電話をかける。一回目の電話も二回目の電話もつながらなかくて、ひどい気分になった。改札に戻ると、女の子がいた。安心して声をかけて『ミズキちゃん?』って聞くと、『違います。』ってちょっと向こうも怪しいと思って、すこし距離を置いた。滅茶苦茶だ。もうすこし待ってみようって柱にもたれかかって考え事をしながら彼女を待っていた。彼女と音楽を作るとしたらどんな音楽だろう、とか、ここに遅れている理由(できるだけ自分の優先順位をしょうがなく超えそうなこと。交通事故に会って手足がばらばらになっていて待ち合わせ場所に来るのがちょっと難しい、とか。)を考えていた。もしかしたらと思って30分くらい待っていたけど、彼女は来なかった。途中で、そのミズキちゃんだと思っていた女の子は駅前に迎えにきた車に乗ってどこかに行った。」僕は一度話を止めた。
暖かい日に話すにしては陰気過ぎる話だと思った。「フラれちゃったね。」と、マリコは僕に言った。顔がなかば笑っているようにも見えたけど、気のせいかもしれない。「こんな中途半端な終わり方をするなら、話始めないよ。続きがある。」道の途中の小さな公園を見つけて、僕たちは適当に場所を見つけて座った。「これってどうやって遊ぶんだと思う?」とユキが僕に聞いた。どうやって使うのかが想像できない遊具が置いてあって、彼女は首をかしげていた。カタツムリを意識した黄色と黄緑で構成された不思議な形状の何か。「想像つかないな。」「背筋を矯正するんじゃない?」とマリコは言って半円に背中を乗せて寝そべった。腰から胸(綺麗な形の推定Dカップ)がきちんと強調されて、僕は見ていないふりをした。ユキは「逆上がりの練習をするんじゃなかな。」と棒に捕まってみた。「いや、これはきっと何の目的もなく作られたもので、どう使うかは、使うひとの想像力に任せられているんじゃないかな。」と言った。マリコの強調された胸を見ていると、それに気付いたみたいで、すっと立ち上がった。わざとじゃなかったのか。「それでどうなるの?さっきの話。」と言った。「独りで電車に乗っているときに考えていたよ。なんでいつもこうなっちゃうんだろうって。なんでも僕に関わると壊れたり惨めに失敗したり、そんなことばっかりなんだ。手元には何も残らない。家に変えるまでのあいだに何回か、もしかしたら彼女は遅れて待ち合わせ場所に来ているんじゃないかって思ったよ。家に着いて音楽を聴いていた。悲しいときにはいつも音楽を聴くんだ。なんとなく、パソコンを開いて、メールを見てみる。そうすると、彼女からメールが来ていた。『今日、急用が入って行けなくなっちゃった。ほかの日にできる?』っていう内容で、届いていた時間は僕が家を出た10分後くらいだった。嬉しいのか悲しいのか、とにかく、『待ち合わせに来ないからなんか事故にでも遭ったんじゃないかって心配してた。いつにする?』って送った。彼女はそのあとに僕に詫びたけど、でもしょうがない。携帯電話がなかったんだ。働き始めたらまず携帯電話を復旧させようと思った。」「なんで携帯電話ないの?」とユキ。「その3ヶ月くらい前に友達と遊ぼうと思って急いで財布と同じポケットに入れてたら無くなってたんだ。小さい携帯電話だったし。金もないから、新しいのも買えない。」ユキは頷いて、マリコは溜め息をついた。「それで、彼女とその一週間後にもう一度遭う約束をした。今度は直前に連絡が入ってもいいように僕の家の近くにした。待ち合わせで失敗しないように、出会ったビレッジバンガードで待ち合わせることにした。20時ちょうどにその場所に着いて彼女を探しても見つからない。溜め息をついて店の中を探しても見つからない。でも、しょうがない。こういうのは僕にはいつものことだって、そう思い込むことにした。そのまま帰るのも嫌だったから、そのへんに置いてある『装苑』を立ち読みしていると、隣に凄くシックな女の子が立っていた。『装苑』に出ている女の子より可愛らしいのに、でも、甘やかされてない雰囲気。それからやっと気付いた。洋服は前みたいにズボンじゃなくて、スカートだし、何よりも長い髪を短く切っていた。『遅れてごめん。』と彼女は僕に言って、なんとなく、気後れした。『うん。』とだけ、なんとか答えて、エレベータに乗って、上の階に登って彼女と二人で店舗の一覧を眺めているときにずっと自分に言い聞かせていた。『彼女だって恋もする普通の女の子なんだ。』って、何度もね。洋食やとか焼き肉とか、眺めていて、とりあえず、鉄板焼き屋を彼女は選んで、二人で店に入った。もんじゃ焼きを頼んで、彼女は出された水をどんどん飲んですぐに無くなった。よっぽど喉が乾いていたんだと思う。そういう細かいことも全部覚えている。彼女は綺麗だったから。このあとに来るお酒を彼女は全然飲まなくなるんじゃないかって心配になった。酒を飲まなくなる心配があるのは、酔っぱらってもらいたかったからで、酔っぱらって欲しかったのは、彼女を手に入れたかったから。もんじゃ焼きを作りながら、彼女と酒を飲んで、沢山のことを話した。好きな音楽のこと(彼女はナンバーガールが好きだって言っていた。)、好きな本のこと(彼女の文化的な情報源は主にあのビレッジバンガードだったらしい。最近、川上弘美を読んでいると言った。)、前の待ち合わせのこととか。その店にいたのは2時間くらいだったと思う。彼女はそのあいだに3杯の酒を飲んで、僕も同じように3杯の酒を飲んだ。彼女の赤くなった頬とか、少し濡れている目を見ていると、心が騒いだ。」
あらゆる愛情を撥ね除けて超然として何もかもから解き放たれて飛び立ちたいのだ

お前は醜い
俺も醜い
お前らは醜い
僕たちは醜い

誰かが誰かにたいして惨めな妥協を愛しているふりをして誤摩化すのは汚いし
ただの性欲に糞みたい理由を付けて見栄で恋愛気取りの馴れ合いをしてでそれがさも良い生活ですみたいな顔をしてる連中も
年とりゃクズみたいなババアになるのに自分の価値を振り回してるやつらも
全部全部全部嫌だ

そこには誰もいなくて僕を傷つけそうなものは何も無い
何も見なくて済む
信じているものは利害関係と本能のみ
「とりあえずどこか行かない?お腹空いちゃった。」とユキが言った。一時間経っていることに気付いた。「何食べよう。」と僕、「なんでもいい。」とマリコ。店を出て、ユキは手綱を電柱からほどいてヤスハルの頭を撫でた。柴犬で素直そうな黒い目をしていた。なんとなくとっちらかった感じがして3人でふらふらしていると、ユキは僕の顔をみて、どうとでも取れる表情をした。そして僕はマリコのほうを見るとやっぱりどうとでも取れる表情をしているのだ。
「さっき読んでた本なんだけど。」と僕は間をつなぐために話を始めた。「ラットパークっていう心理学の話で、薬物依存の実験で、薬への依存っていうのが心理的な依存なのか、肉体的な依存なのかを調べる実験の話なんだ。例えば、無色透明の何も無い籠に入れたネズミと、ネズミが過ごし易い最高の環境(広い庭に緑や土や穴蔵とか、ちゃんと回転するあれも入ってる。)を整えた籠を作った。その両方の籠にそれぞれネズミを入れる。後者がラットパークだ。実験に使うネズミは全部モルヒネ(確かモルヒネだったと思う。とにかく、麻薬さ。)をその二つの環境に入れるまえに水に溶かしてモルヒネを与えていた。どちらの籠のなかにも二種類の給水機が入っている。ただの水と、モルヒネが混ざった給水機。合計4台の給水機。立派な薬物依存症患者のネズミで、プラスチックの不毛な環境のなかにいままでいたネズミ全部を適当に二つの種類の環境に置く。そうするとどうなったと思う?」と僕はマリコに聴いた。ユキはこの実験のことを知っているかもしれないと思ったからだ。何せ、彼女はなぜか風林火山が4つの文章じゃなくて、実はあと二つあることまで知っていたからだ。「どうなったの?」と聞き返したのは、マリコではなくてユキだった。どんなのことでも知らないっていうわけにはいかないんだろう。「プラスチックの籠のなかに入ったネズミはいままで通り、ひたすら狂ったようにモルヒネの蛇口に齧りついていた。ラットパークに入れたネズミのほうも残念だけど、ひたすら麻薬の混じった水を飲み続けていた。」ユキは腕を両手で組んで片手を頬に当ててながら「じゃあ仮定は外れていたのね。」と答えた。「うん。最初のうちはね。実験から時間が経ち始めると、ラットパークで過ごすネズミ達は新しい環境に馴染んでいった。(前者の牢獄みたいな場所にいる連中はほとんど動くことがなかった。鳴き声ひとつ上げなかった。)穴をほり、駆け回って、餌を取って、隠したり、チップとデールみたいなもんだよ。」「誰?チップとデールって?」とユキが不思議そうに訊いた。僕とマリコは顔を合わせた。すこし曖昧で優しい気持ちになって「ライト兄弟みたいなもんかな。有名なんだ。」とだけ言っておいた。「それで、チップとデールは、水しか出ないほうの給水機の水を飲み始めたんだ。おかしな話だろ。居心地がよかったら、良い生活したうえでさらに薬を飲んでラリってればいいものなのにさ。でも、彼らは水だけを飲むようになった。分かっての通り、透明なケースに入っていたネズミ達は、ただの水を飲むことは最後まで無かった。」ふーん、っていう感じで、ユキは考え事をしていた。マリコは別にどうでもいいというように振る舞っていたけれど、女の子が何を考えているかなんてほんとのところ誰にも分からない。「ねぇ。」とユキは僕の洋服の袖をつかんで言った。「チップとデールって誰?」「彼らはいつも一緒にいるんだけど、とにかく最高のやつらなんだ。まず、あの勇敢さが凄い。自分よりずっと大きいやつらに怯まないんだ。だよね?」と僕はマリコに話を振った。「うん。でも可愛いの。とっても。」「どんな仕事してるの?」「仕事らしい仕事はしてないかな。気の向くままに生きてると思うよ。」ユキは真剣にチップとデールのことを考えだした。どんなイメージだろう。彼女が考えてるのは19世紀のインチキっぽいアメリカの興行師の兄弟なんじゃないかと僕は思った。「仕事しないで有名になった人達なんて初めて聞いた。それって凄いと思う。」「あぁ。ほんとに凄いよ。」僕も素直に感心した。「チップとデールは今も生きてるの?」「ちゃんと生きてるよ。」「年はいくつなの?」「たぶん僕より年上じゃないかな。」「どこの国のひと?」「たぶんアメリカだったと思うよ。」マリに目配せをすると、やさしく彼女は微笑んだ。こういう表情をするのも彼女なんだと思うと、ほんとにチップとデールを偉大に感じた。「どうして有名になったの?」「うーん。まず彼らがとってもチャーミングだったってのが一番だと思うよ。何をしていても一緒で、小さいんだけど、やんちゃで自分よりずっと大きくて危なさそうな連中をいつも出し抜くんだ。」「どうやって出し抜くの?」「類い稀なる行動力とチームワークでだよ。もちろんヤバい状況を何度も何度も切り抜けてきたけどね。」「どんな状況?破産とか?」「破産をしそうになったことはなかったと思うよ。第一、お金っていうものを持ってなかったからね。」「どうやって生活するの?」「チーズとか食べてるんじゃないかな。」と僕が答えるとマリコはくすくす笑った。信号の前で待っていると、周りは僕たちが若い家族だと思うんじゃないかと思ったし、同じことを彼女も考えていたみたいで、その空気に気付いたユキの様子が少しだけ深刻になったのが僕には分かった。こういうときに僕はどうすればいいのか、いつも分からなくなってしまう。そっとユキはズボンを握って僕を見上げた。彼女の頭を優しく撫でると、僕に抱きついた顔をうずめた。マリコがそれにあわせてシャープな表情をして、僕はやっぱりどうすればいいのか分からないままで信号が変わるのを待っていた。

ビールを飲みながら寿司を食べている彼女を眺めながら、そのあとの話をすべきかどうか迷っていた。まず、彼女がガリと一緒に抗精神心剤の錠剤を噛み砕いていたのを、ただ何もせずにただ見ていたのが問題だっと思う。ちょっとしたおつまみ感覚っていうか。彼女はまともな人間じゃないことは、誰にでもわかることなのに、そういうふうに彼女が落ちていくのを見ているとき、安心を感じるようになっていた。悲惨な話を聞くことで満たされる好奇心。「小説家の素質が何かを知って、それを組み替えて、物語にするっていうことならさ。」と僕は言ったけれど、楽しそうにニヤついていただけだった。寿司職人が神妙な表情をして、そろそろ引き上げようかとおもった。「それは僕にもできることなんじゃないかな。」「じゃあ私の気持ちを表現してみてよ。」僕は白魚の軍艦巻きを口に放り込んでから考えた。「『まるで、ビーチボーイズのGod Only Knowsの最後の鳴り止まないフレーズのような幸福感が彼女を包んでいた。』......。ビーチボーイズは好き?」彼女は中トロを箸でつまみながら答えた。「その表現ダサいし、なんか借り物っぽいし、それほどメジャーじゃない音楽で喩えるって、独りよがり。」中トロを食べると質問に答えた。「聴いたことない。音楽ってあんまり好きになれない。」「そう?」「すみません生中ひとつ!!」と会話をぶった切って彼女は言った。「音楽がなんで人を快くするのかしら。」「そう言われてみれば。」「だって和音って自然には存在しないものなんじゃない?バッハを奏でて虫を誘いだす花なんてある?」「どこかにあるんじゃない?ブラジルとかに。」「結婚するならブラジル人よね。いちど、ブラジルから来た留学生の男の子と話をしたことがあって、ガブリエルっていうの。」「天使みたいな名前だね。」彼女はビーチボーイズのその曲を最後の4小説を箸を指揮棒に見立てて鼻歌を歌った。知っているなら知っていると言えばいいのに。「ねぇ君、ガブリエルよ、ガブリエル。あなたも名前変えれば?ミカエルとか。」と彼女は言った。「ミカエルっていえば、マイケルっていうあだ名のミュージシャンと会ったことがあるよ。日本人だけどね。」「ミカエル、そこの醤油とって。」醤油を彼女の小皿に注いだ。「組み替えようが、編集しようが、どうしても表現したいものがないなら意味ない。」と彼女は断言した。「表現したいことならあるよ。」「なぁに?」と溶けた目つき(セックスが始まる前の口づけをしたとき彼女はこれに良く似た目つきをする)「好きなものと嫌いなものを。」彼女は酒をもう既にビールを飲み干していた。寿司職人はもう既に彼女が丁寧に料理を味わうことを諦めていた。「好きなものを好きなだけ書くのが小説家の仕事だと思ってるわけ?」「分からないよ。」「前、あるミュージシャンとネット上で対談をしたことがあるの。私の書いてる小説ってそういうことを題材に使ってるでしょ。別に奇をてらってそれを書いてたわけじゃないけど、でも、そういうのがメガネかけて文学部みたいなしみったれた根が暗い年中マスかきあってるような文学評論家の方々には新鮮だったのかもね。とにかく、ネット上でチャットをつかって対談をするっていう内容で、向こうは今話題の作曲家で、彼はデジタルな感じの音楽でパソコンで曲を作ったりしちゃうわけで。まぁ、とにかく細かいことを端折っていうと、その対談の最中に『モテるために音楽聴くようなやつらはうんざりだ。』みたいなことを彼は言ったわけ。で、ちょっとイラっとしちゃって。あー、これ私の悪い癖よね。小さいことが時々ほんとに許せなくなっちゃうの。」「別に許せないってことはないでしょ。」「いちど、そのミュージシャンが主催しているイベントに行ったことがあるんだけど、私が作家業やる前で、向こうもそれほど有名じゃない時にね。それで、行ったんだけど、そのアーティスト気取りのミュージシャン様(ごめんね)が私の連れの子と消えていなくなっちゃったの。」彼女は自分が妬んでいることに気付いているんだろうか。酔っていてそんなことにはお構いなしなのかも。「特別なことじゃないと思うけど。ミュージシャンだって人間だし、人間の男だったらセックスくらいするよ。」「ほんと、ああいう連中って我慢ならない。」僕は声を出して笑った。「それなら僕だって同じだよ。僕は君のファンだったわけだし。」「それとこれは違うでしょ。」と言いながら、彼女はすこしばつが悪そうで、それが抱きしめたくなるくらい可愛かった。「それで、その女の子はどうなったの?一夜だけのお楽しみだったの?」「それだったらいいんだけど、妙にこじれて大変だった。」「ふーん。」頷きながら、この話に何か違和感を感じた。いい加減、酒が回り過ぎてきていたから、僕たちは店を出て(彼女が現金でぴしゃっと会計を済ませた。)朝の新鮮な空気を吸った。

流れを変える

2009年4月3日 日常
起床→飯→ピアノ→出社→退社→風呂→飯→就寝

という流れを変えたい

起床→飯→ピアノ→出社→退社→ピアノ→風呂→就寝

みたいな

つか、曲を作るのがいちおうある程度楽器弾けるようになってからじゃないと無理っぽいと思ってたけど、がんばればそれほど上達しなくても、曲作れるようになるっぽい。
どうなんだろう。
今月と来月は自分の精神が崩壊しない程度に金を使わない生活をします
疲れたときとか悲しいときに投げ出したりする癖を直したい治したい

本人 vol.09

2009年3月29日 読書
立ち読みで途中までしか読んでないけど、巻頭のインタビューが面白い。

僕はロジカルだけど、心が少しだけ弱い(厳密には心を支える何かが足りていない)(そういうのは心が強い人間には絶対に理解できない部分だ。身体が丈夫なひとが、病弱なひとに気合いが足りないとか言うのに近いかもしれない。)ので分かっていながらも、落ちる方向に行く時があるし、これからもあるかもしれない、ないかもしれない。

わや

2009年3月28日 日常
自分の書いた文章読んでたら滅茶苦茶で他人事みたいで面白かった。
こいつはアホだな、と。

軽量化

2009年3月27日 日常
心を軽くする出来事があれば、軽くすることができる。
それはセックスがないって分かりきってる女の子とのデートだったりする。

隙間を縫う

2009年3月25日 日常
隙間の時間を使って、もっと積極的にならないと、あとあと後悔しそうだから、そうしよう。

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