2009年8月29日
クラブ空けで楽しい気分

難しいことは分かんないけど
なんか色々楽しんだり楽しみのチャンスだったりがある
インターネットの申し込み用紙に不備があって返送されてきた

こういうことがあるからこういう手続きは嫌だと思った
チェックをひとつ入れ忘れただけなのに全部書き直しとか

愚痴ってもしょうがないから送りなおすけど

こういうのって人間関係でもよくあるから面倒だ
ほんの少しミスっただけで
とか
手間暇かけたのにダメ
とか

いや
そういう面倒な人達には近付かなきゃいいだけか
今週の火曜に女の子と焼き肉を食べたんだけど、MEGの普及版みたいなクールな着こなしの女の子がいて、僕は声をかけた。話が弾んで、彼女とはずっと会話が途切れなかった。物凄いウィットに跳んでたとか、発想の跳躍があったわけでもなく、刺激に満ちた会話という訳ではなかったけど会話はずっと途切れなかった。彼女より綺麗な女の子は他にもいた。そこで、「大切なのはルックスじゃなくて相性がなんちゃら」なんて言い始めたら、それは嘘で、ただ、僕の連れの男が女の子に’アート’できなかっただけだ。そいつはいきなり女の子に手を振ったりして、無視されていた。そういう場所で女の子と仲良くなるのは、そんな「脳内ではうまく運びそうな小ネタ」じゃなくて、単純に喋りかけて、普通に会話する以外に方法はない。ただ、初対面の女の子と話して面白いことなんてほとんどないし、初対面じゃなくても誰かと会話していて面白いことなんて殆どないけど。それで、彼女は同僚の男友達二人と遊びに来ていて、彼らは二人でガールハントに行っていたから、気安く話せる雰囲気で、一人で階段に立っていた彼女と喋っていた。
「すみません、ソフトバンクの電話番号知ってますか?」というのが普及版の彼女の第一声で、逆ナンパにして変わってると思った。携帯電話を無くして困っていた彼女に、ソフトバンクの問い合わせ先を奇跡的に知っていた僕は教えて、そのあと、フロアで彼女に会って、僕たちはずっと喋っていた。来ている客のこととか(「読者モデルみたいな人いるよねー!」(後で知ったことだけど実際に読者モデルだった。笑える。))、好きな音楽のこととか(彼女はMEGが好きだと言った。笑える。)。
僕には会いたい女の子がいたけど、その子には会えなかった。
明け方、帰ろうと僕の連れに言われて、僕は連絡先を交換した。
そのイベントに男友達を連れて行ったのは二度目だった。もちろん女の子を口説くためだ。音楽を楽しみたかったら部屋で聴くのがいちばん楽しいというのが僕の持論だ。前回、男友達と一緒に女の子を口説こうとしたときは、
今週の火曜。
女の子と焼き肉を食べる。MEG(歌手)の普及版なクールな服を着た彼女に声をかけた。初対面の子と会話が途切れないのは初めてだった。
彼女よりずっと綺麗な女の子はいたけど、連れの男が女の子に’アート’できないから、僕はMEGクローンの彼女とずっと話をしていた。
牛角でも会話は途切れない。仕事のこと(サボる時間の使い方)・好みの異性のタイプ(彼女は浅野忠信/僕は『プラダを着た悪魔』のアン・ハサウェイが好き)・好きな音楽(彼女『サリュ』/僕『ごたまぜで様々』)・ファッション(彼女『FUDGE』『In Red』/僕『GINZA』『NYLON』(本国版))
隣のカップルの女の子のほうが彼女より可愛いけど、雰囲気がぎこちない。頭のなかで隣の彼女と普及版の彼女を天秤にかけて普及版を選んだ。
飲みながら彼女と僕のiPodの『nya-』『awai』と名付けたプレイリストのどちらか、というゲームをしていた。
僕は彼女に問う
「スーパーカー『Cream Soda』は?」
「awai?」
「ぶー。nya-です。」
「えー」
「COLTEMONIKHA『そらとぶひかり』」
「awai」
「正解。じゃー次は、相対性理論『LOVEずっきゅん』」
「んー、微妙!」と笑いながら彼女は言った。「awai?」
「正解はnya-です。」
「『LOVEずっきゅん』けっこう淡くない!?」
「6:4くらいでnya-です。」
そんな感じだ。
「チェルシー舞花はawaiかな。」
「誰それ?」
「前に好きだった女の子が気に入ってたカメラマン兼モデル。ハーフで美大生。」
「ふーん、そういうのが好きなんだ。」
日本女子大学被服学科を卒業した彼女は言った。
僕はどちらかと言えば魅力的な物を好む人が好きなのだ。
「蒼井優は?」
「凄い微妙な線を突いてくるね。」僕は感心した。
「凄いでしょ。」
「うーん。見た目はawaiだけど性格はnya-。53%くらいでawaiかな。」
「松山ケンイチはnya-?」
「あれは完璧nya-だね。」
「小雪は?」
「awai」
「ふむ。」
「私は?」
「nya-」
「君は......、nya-だね。」
「にゃー」
彼女は笑って、僕は訊いた。
「もし俺がiPodに入ってたらどんな音楽かな?」
彼女は考え込んで言った。
「猫の鳴き声だけで作った曲。」
ちょっと素敵かもしれないと僕は思った。
「音楽グループ組むならどんなグループがいいかな?」
彼女は頬に手をやって、口をすぼめて空中の何も無い空間を見つめていた。
「例えば?」と彼女は訊いた。
「plusっていうのは?」
「どんな音楽?」
「イギリスの昔のミニマルテクノのグループと見せかけて、意外とナードヒップホップ。日本語でラップをするアメリカ人のインテリの大学生の18人組。」
「多過ぎじゃない?エグザイルみたいな?」彼女は笑って、こう付け加えた「何ナードヒップホップって?」
「『ナード』はオタクっていう意味。オタクのヒップホップ。」
「ふーん。」
彼女は牛タンを二枚同時に網から揚げて、レモン汁を付けて、口に入れて舌の上に載せた。
「私だったらplusじゃなくてclassかな。」
「『CLASSY』?」
CはClassのC。ふと思った。
「高級婦人服の雑誌の名前としてストレート過ぎると思うんだけど。いつも。」
「階級っていう意味で?上品っていう意味で?」
「両方。曲名でもいいかな。plusの『class』っていう曲はどんなイメージ?」彼女は得意気にピートロを置いた。
「そうだな。」
僕は箸を置いて精神統一をした。
(関係ないけど昨日観た『ブレードランナー』(SF小説『電気羊はアンドロイドの夢を見るか?』の映画版)のハリソン・フォードは器用に箸を使っていたことを思い出した。
心に残ったセリフは「あなたは自分がレプリだと思ったことはある?」というセリフだ。)
「’ジャップのラップ/クラップでスクラップ/属国文化/即刻同化’」
僕は人差し指と親指を開いた両手で彼女に向けて「Yo!!」と言った。
「昨日、代々木公園でヒップホップのイベントがあったんだ。他には?仮想の音楽グループ。」
「オーロラ、っていうのは?」
「素敵だ。どんな音?」
「ふわふわしててきらきらしてる。」
僕は携帯電話の辞書で引いて発音記号に沿って言った。
「Aurora/ɔu720 rɔu769 ːə」
彼女は僕の口の動きを真似るように繰り返した。
「Aurora/ɔu720 rɔu769 ːə」
僕は辞書の説明を読み上げた。
「『北極や南極地方の上空110キロメートル前後に現れる大気の発光現象。
 形はコロナ状•居ネど、色は白•ヤ•ホなどで、刻々に変化する。
 太陽面の爆発で放出された帯電微粒子が、電離層中の空気の原子•ェ子に衝突して発光する。
 極光。』」
「きょっこう!」
僕は発作的に狂ったように「きょっこーーー!!」と叫んで、彼女はちょっと引いた。
それで「ごめんね。」と言った。時々、僕はクレイジーになることを止められないし、こういうノリで笑う友達がなぜか多い。
「auroraはawaiじゃない?」と彼女は言った。
「そうだね。」
「淡い、といえばさ。蟹ちゃんに会いに行ったんだ。」
「蟹ちゃんって元モデルで今ファッションデザイナーで時々歌とか歌っちゃう、あの蟹ちゃん?」
「そう。会いに行ったっていっても別に知り合いってわけじゃないけどね。」
僕は考えた。何が知り合いで、何が友人で、何が恋人だっていうんだ。
「会いに行ったって?」
「『今日は私がお店に立つので皆さん来てくださいね』って彼女のブログに書いてて。」
「うん。」
「それで彼女のファッションブランドはレディースしか作ってないから男一人で行く訳に行かない。で、女の子を連れて行ったんだ。」
「うんうん。」
「彼女はネットで仲良くなった女の子で、わりと気に入ってた。彼女も僕のことを好きだった思う。」
「なんでわざわざ女の子のモデルに会いにいくわけ?気分悪くするんじゃない?」
「それは後で説明する。でも、その時は、自分が何をしようとしてるのかなんて分からなかったんだ。」
「なにそれ?」
「後になって自分がなんでそんな行為をしたのかの理由が分かるときがある。」
「その行為をした理由を後付けするのとは違うの?」
「違う。まぁ、とにかく、最初彼女と会う口実に『蟹ちゃんに会う』っていうのをやめたんだ。」
「それで?」
「代わりに海に二人で行くことになった。これは後で知ったことだけど、蟹ちゃんは海が好き。らしい。」
「で、海に行ったの?」
「うん。海に行ってキスをした。波に光が反射してキラキラしてて、本当に気分が良くて、思わずキスをしたんだ。『なんでキスしたの?』って訊かれて『したかったから』って答えた。帰りに手を繋いで帰った。」
僕の表情と話し振りを見た彼女の顔を見て、その話をそこでやめて、続けた。
「とにかくずっと昔の話だよ。」
「いつ頃?」
「覚えてないよ。」
「ふーん。」
「それで、二度目か三度目のデートで、彼女と渋谷を歩いてたんだ。急にその日も蟹ちゃんがお店に立つ日だって思い出して、彼女を誘った。『パルコに行こうよ』って。」
「二人はパルコに行きました。」
「うん。パルコに行ったんだ。緊張したよ。少し無口になって、ナーバスにすらなった。」
「そんなに蟹ちゃん好きなの?」
こう言おうとして、話がずれそうだと思って、やめた。「生活をドラマチックにしたり、作り物みたいにするのが好きなんだ。個人的な構造物を作るみたいに、物事を起こす。生活を’アート’するんだ。」と。
「そうでもないよ。僕は彼女が歌う音楽が好きなんだ。誰かが作り出した偶像を、偶像だって分かりながら求めてる。いや、もしかしたら、本当は、その誰かのほうだけを好きで、偶像の実体には興味が無いんだ。」
髪の黄色い男を僕は考えた。
「×(算数の記号の×でバツではない。)のカケル君が好きなんだ?それって、君、ゲイってこと?」
「誤解されるかもしれないけど、精神的にのみゲイだよ。俺は。」
「ふーん。」
「男とやったこともないし、やりたいとも思わない。」
少し考えてこう付け加えた。「器は男、中身は女、セックスする相手は女、憧れる相手は男。さて、僕の性別は?」
「そういうのってナンセンスだと思う。」
「I think so. It’s nonsense. 何話してたんだっけ?」
「ゲイクラブでS字結腸まで変な棒を入れられて」
「君酔っぱらってるぜ。それで、緊張したまま、蟹ちゃんに会ったよ。まず、一緒に来てた女の子が先に店内に入って彼女の様子を見てた。穴が空くほどってわけじゃないけど、じっくり見てたよ。」
「穴?」
僕はもう一度無視した。
「それで、連れの女の子が戻って来たけど、僕は外で待ってて、結局、店の中に入ろうとしなかった。連れの女の子は隣の店で、待ってて、僕は隣の店に入った。そうすると、蟹ちゃんが隣の店に入ってきた。なんか紐を切るハサミが無いとかなんとか。その店を出た瞬間を狙って、僕は蟹ちゃんに声をかけたよ。」
「わぉ」
「何の話したんだっけな。何で知ったのって訊かれて、『音楽のほうから』って。そうしたら、彼女が経路を示すように、半円を人差し指で宙に描いて、その仕草が素敵だった。オーロラみたいな女の子だったよ。僕のその時のテンションを差し引いても、そう感じるかは分からないけどね。あとは、何話してたのか忘れたよ。」
「それで、連れの女の子のほうに興奮して戻って、喋りかけたら、彼女、泣きそうだった。」
彼女はマッコリを一口飲んだ。女の子と二人でご飯を食べて、マッコリを飲んでいる女の子は初めてだった。
「それ美味しい?」とマッコリを指差した。
「甘酒とか好き?」
「好きだけど。飲まして。」
美味しくした甘酒みたいな味だった。マッコリ。名前が良い。
「彼女泣いた?怒った?」と彼女は訊いた。
「目に涙をためてた。怒ってはいなかったよ。」
「なんでそんなことしたの?」
「そう、それがこの話を始めた理由だよ。」
「彼女を傷つけた理由を考えてて、やっとこの前気付いたんだ。別に単純に嫉妬させたかったっていうわけじゃない。これはもう一つのエピソードが絡んでくる。その頃より少し前に僕はある女の子に恋をしていた。その女の子は靴屋の女の子で、ほぼ一目惚れみたいにして好きになった。彼女のお店に何度か行った。話を端折るよ。長過ぎる話は好きじゃないだろ。そのお店にはいるもう一人の女の子も僕のことを好きになった。」
「もう一人’も’?」
「そう。別に自慢したいわけじゃない。そういう話なんだ。」
「それで、ある日、その女の子二人だけでお店をまわしてる時に、僕は行った。じゃあ最初の女の子をAとして、後の女の子をBとする。それで、お店に入ると僕はAと目が合ったんだ。でも、Bがいる。ここでAと話をしていたら、Bは傷つくって思った。だから、店をすぐに出て行った。それで、次にお店に行ったときAの僕に対する態度は、冷たくなっていた。」
「ふむ。」
「その後、何度かお店に行ったけど、彼女は僕に対する態度を変えなかった。あの時に、終わってた。」
「うーむ。」
「で、話は戻る。」
「失敗を乗り越えたかったってこと?」
「そう。必要な時に無神経になる練習をする必要があった。そうしないと、自尊心を取り戻せないっていうか。」
「別に君の自尊心なんて、その一緒に蟹ちゃんに会いに行った女の子には関係なくない?」
手元のジントニックの氷を指でかき混ぜながら、僕はどう言えばいいのか考えていた。
「前に、知り合いの知り合いの女の子の話聞いたんだけど、」

メモ60

2009年8月25日 メモ
ToDoを減らしてWantToDoを増やす
それから僕はブログに最近あったことを書いた。小説が進まないときはいつも、小説ではない形式で文章を書くことにしている。
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2009/8/16

20:00頃 フランフランとクレープ屋の間の坂道 1
綺麗な女の子を見つけてつけて行くけれど、パルコの前のユニクロに入って、地下一階で試着待ちになって声のかけようがなくて終わる。

20:20頃 渋谷ビブロ 2
料理の本を探している女の子に声をかけようとした。レジ前の料理本のところから、料理の本だけが置いてあるところにいるところで声をかけようとして、彼女がまたレジ前のほうに移動して、そこで距離をつめようとしたところで逃げていった。
地下から一階に登るエスカレータで後ろにいたけれど、凄い歩行速度で地上で距離を開けられて逃げられる。黒い服。ジルスチュアートのカタログに出ているような服。黒い髪。幼い顔立ち。ある種の雑誌のモデルにはうってつけ。

20:40頃 渋谷ツタヤ3階 3
一瞬目があって、R&Bのコーナーで二人でかなり良い感じの雰囲気になる。ところどころの湿疹と、何かがねじ曲がっているように感じる歩き方。
二人でいるときの濃密な空気で心臓が高鳴り過ぎて気を落ち着かせようと息を整えた。
彼女のそばにもう一度寄ると、彼女は手に持っていたCDがどこにあるかを示す紙を落とす。僕が拾うにしては彼女との距離がありすぎる。拾いようがない。それとも、心がそこにないことを僕に示すジェスチャーだったんだろうか。だとしたら、結構気が利いている。昔、いちど声をかけようとした女の子がそういう本棚にある本を片っ端から何度も落としているんだけど、顔は平然としている、というのを目前にしたことがあって、それを思い出した。ちなみにその時は声をかけなかった。
彼女は2の彼女にルックスが似ている。テンプレート。3の彼女のルックスといえば、シャープな顔つきで、どちらかといえばつり目(そのせいで僕は人は自分に似た人といると安心するという法則を思い出す)で、目にピンク色のアイラインをしていた。ジーンズ生地のミニスカート、灰色のニーハイソックス、他は覚えていない。僕が緊張し過ぎていた。彼女との今にもその場で繋がってしまいたくなるような直接的な空気を文章で表現するのは難しい。親密な。2分くらい、彼女の左右でCDを探すフリをしていると、
彼女の友達が携帯片手にいきなり来て「アサコ、お好み焼きでいいってー!」と割って入ってくる。まったく。それに答えた彼女のいつもより2オクターブくらい高い声は、きっと僕のために用意されたもののはずだったのに!それで一種のタイムアップというか、チャンスを潰されたというか、彼女を手に入れるチャンスを失った。
彼女が最後にその友達に「少しの間しか居れないね。」と言ったのは、靴屋の髪の短い女の子にたいしての言葉を黒い髪のながいほうの女の子が僕のデートの誘いを断ったときに、間接的に「気にしないで。」と言ったのと同じ種類の、2重の意味での遠回しの言葉。

僕は昔の恋を忘れるために、誰かれ構わず求めている。与えるようにすがっている。考えすぎることは良くないし、女の子達が僕の顔立ちの良さを必要としていたり、僕が彼らにとって都合良く欲望を満たすことをするなら、誰も不幸にはならない。
****************




ムラハシは今日は恋人と、12時から16時まで一緒にいた。ムラハシの家の近くで遊んだ。

お洒落なレストランでカジキマグロのソテーのランチを食べた。1200円。コック兼店長のおばさんがお洒落でしかもセクシー。入って行った彼女が手にしていた袋をお店に入った直後に「ハリウッドランチマーケットのでしょ。」と指摘した。彼女の着ている服は、黒字に白い鳥の小さな刺繍が左上(つまり彼女の右肩のすぐ下あたり)が飛んでいて、右下の鹿と兎の刺繍が入っていて、そして彼女の胸元のペンダントは、白い鳥、でそれが彼女の洋服の不自由から解き放たれるみたいに、ぶら下がっていた。ムラハシはそれを褒めた。彼女はムラハシが描いた絵のことを知っているんだと分かった。なぜかといえば、ムラハシが昔、鳥の絵を描いて、その絵は彼女が着ている服と同じように黒地に真っ白な鳥を描いたものだったからだ。

恋人の会話には僕の知らない固有名詞が沢山出てきた。知らない有名人、知らない場所、会話をするために近い趣味が必要なんだろうけれど、そのためにわざわざ興味のないことを覚えるのは彼の性格上できないことだった。会話がぎくしゃくして、その理由を考えていたけれど、それは彼女が茶色い瞳をしているからだと思う。これは持論なんだけど、目が茶色いひとはサディスト、黒いひとはマゾヒスト、という区分けをしている。
彼女とそのお洒落なレストランを出て、目白台の通りを進んで行く。途中で、公園があって、そこには野球場があって、バッターボックスの裏側のベンチに座って草野球を眺めていた。お腹がいっぱいで、女の子と一緒に草野球を眺めるっていうのは、春の晴れた日には最高の選択だと思った。

ゆるやかに時間が進んで、それから僕たちはまた道を進んで教会に行った。有名な建築家が立てた大聖堂で、外から眺めると、前衛的な形をしている。教会では何かの行事でバザーをしていた。日本人にとっての典型的なキリスト教徒のイメージと違ったのは、そこにいた多くの人達は日本人以外の有色人種、東南アジア系、アフリカ系、そういった人達がほとんどだったと思う尼さんはみんな日本人だった。
出し物の音楽が聞こえる教会の広場で、東南アジア系の人達やアフリカ系や、どこの国だか分からないけれど、とにかくなかなか見かけない感じの人達が生春巻きとかホットドッグとかを売っていた。その収入はやっぱり教会への寄付金になるんだろうか。

教会に入ると、前衛的な形の聖堂だった意味が分かる。木の椅子の真ん中を抜けて司教座(段になっていて登ることは許されない)の前に来ると、信徒も、そうでない連中も、威厳を感じずにはいられない形状に施設がなっているのだ。三角柱を半分に切ったその内側のように包み込むような内側に圧迫するように包み込む形状が、荘厳さを心に呼び起こすように作っているのだ。とても大掛かりな仕掛けで、その教会の資金源がどのような仕組みで成り立っているのか僕には気になった。

前からに3番目の真ん中に近い席に二人で隣り合って座っていると、キリスト教徒の人達がぽつぽつと祈っている。それを横目で見ながら、恋人はムラハシにミンティアをくれた。その時ちゃんとそれがキスをしてもいいっていう、回りくどい彼女の要求だと気付いたけれど、でも、彼女が腕を組んだり足を僕のほうでは方に向けているせいで、隙が全然なかった。身体の横の部分が触れ合っているのに、彼女はそんな態度だった。どちらかといえば怖い気持ちが先立って、結局彼女の要求を満たすことはできなかった。礼拝する連中なんてそっちのけで僕たちはキスをすることばかりを20分くらいずっと考え続けていた。ボサノヴァが教会の外から聞こえてきた。結局彼女はプレッシャーに負けて、すこしどもったりしながら、「出よっか。」と言った。その日初めて彼女の声を聞いた。
ムラハシはその女の子が求めるものを与えることができなくて、すこし後悔した。

帰り『ママタルト』に寄って二人でタルトを食べて、それから帰った。彼女の言葉は行きより少なかった。いつも思うんだけど、誰かが不器用で二人が結ばれるには、もう片方がそれを補うくらい器用じゃなきゃ上手くいかないってこと。

自分のことを棚に上げる
(自分がされたら嫌なことを平気でする)
っていうのが女の子の基本だけど
じゃあ俺はどうすればいいんだよ
っていうのがある

面倒なのは嫌い


今週は沢山映画を観た
気が向いたらレビューする
前書いた三本&
『キル・ビル』『キル・ビル2』『カポーティ』『アマデウス』
パイオツカイデー

って言葉を見て、そういう競争馬っていそうだなって思った。

寝る
体調悪くて部屋で寝ていると
嫌な夢を見た

起きたら部屋に繋がる廊下に灯りがついていて
やたらと灯りが強くて目を開けたら眩しかった
これが眠りを浅くしたせいかもと思った

わざわざその夢を思い出して書こうとは思わない


今日はうつ伏せのまま映画を3本観た
どれも自分の好みの映画じゃなかった
『髪結いの亭主』『ストレイトストーリー』『ブレードランナー』
体調が良くないからのめり込めなかったのかもしれない


また身体がアトピー気味
気味っていう完璧再発
前にアトピーが治ったときは薬をつけていなかった
代わりに毎日違う女の子とセックスしていた
結局ストレスが原因でそのストレスをセックスをかなり頻繁にしかも回数を重ねないと解消できないらしい
「健康のために何かされてますか?」「週に7回毎日違う素敵な女性とファックしています。しかも毎回3回ずつ」
まぁいいや
過食症はしんどいけどセックス依存症ならコンドームつけてれば問題ないし

メモ59

2009年8月18日 メモ
すてきなことをしましょう

二つ隣

2009年8月18日
すごいエロティックなこと書こうかと思ったけど、もう寝るからやめる。

キーワードは二つ隣。
ログアウト中に画面が表示されて、「取得した武器を売却しますか?」の問いが表示された。
急いでいたが、これが『True Religion Plan』に参加することに繋がると思って、好奇心で、売却する。という選択肢を選んだ。
拾った武器の中で、ナイフは元から持っている折りたたみナイフがあったから、これを売ることにした。
「$10」と表示された。中古のナイフが現実でいくらで売れるのか検討がつかなかったが、とにかく、売却。
手元に入ったのは$5だ。
$5はTrue Religion Planによって、税金のようにそのまま第三世界(アジア・アフリカ・ラテンアメリカの途上国)に寄付金として収められた。
これがTrue Religionをほかのオンラインゲームと隠しているところだ。ゲームの利用料金はそのまま、True Religion社の利益になるが、武器の売買には50%の税率が付く。
バーチャルシュミレーションの戦争で発生した経済が、現実の戦争や内戦や、間接的な搾取で生まれた貧困を解消する。

ウェブで見つけた、開発者AHのインタビューはこんな内容だった。
「いまよりずっと若い頃、私は理想主義者だった。いまより若い頃、私は愛国者だった。いまより少しだけ若い頃、私は現実主義者だった。そして、今はただの企業家になった。」
インタビュアーはこう尋ねた。「TRによって戦争は無くなると思いますか?」
AHは答えた。「戦争は無くなるかもしれないが、進化する仮想の戦闘によって闘争本能は拡大されるだろう。」
そして話題はTRコンプレックスに移った。
「TRのアクティブユーザ数は1000万人を超えました。それにより、TRコンプレックスと呼ばれる、現実との区別が付かなくなったTRユーザの犯罪が増えましたが......。」
「私は科学者です。具体的な調査に基づかない質問にはお答えできません。
 こう答える資格が私にはないでしょうが、現実の戦争で死んだ人間の数に比べれば、TRによって死亡した数は1000万分の1以下です。
 しかし、確実なことは、TRによって命を落とさずに済んだアフリカの子供達の数は、5000万人を既に超えているということです。」
「次世代TRの展望については?」
「ゲームとしてTRのハードウェアについては、キーボードは廃止されます。全てヘッドセットからの脳信号での命令に切り替わります。リストバンドは、グローブ型に変わります。
 ソフトウェアに関しては、かなり大掛かなシステムの追加を開始します。これは市場と言ってもいいものでしょう。
 今までTRでは兵器に関してはTRがプログラムを作り、TRが販売を独占していましたが、次世代のTRでは兵器のデータをTRに登録した会社が販売することができます。
 まず、兵器ベンダーとしての審査と登録。そして、兵器はデータ容量やゲームバランスや価格などの審査を通り、TR上で販売できます。利益の分配に関しては、検討段階ですが、50%のTRプランに関しては変更なしです。」

$5は、ムラハシのTRに記録された。ネットオークションでは、このカードが売買されている。$(TRドル)10,000の入ったTRのカードが$(アメリカドル)10,000くらいで売られている。
ムラハシは、待ち合わせ場所まで行く途中に、TRの掲示板群で、今日の戦闘についての情報を探した。
スレッド名は『TR 池袋駅エリア パート18』
23.TR信者さん おい、忍者が出没してるぞ。
28.TR信者さん 見当たらない
31.TR信者さん さっきやられた。たぶんライフルで一撃。レーダーうつんねー
32.TR信者さん >31 赤外線なら見えるんじゃね? いまからいってきます
35.TR信者さん 光学迷彩ってどうやって手に入れるの?
42.TR信者さん 隠しアイテイムって噂
48.TR信者さん 中の人がTRの社員って噂
51.TR信者さん 今から100人オーバーのチーム組んで忍者狩り
64.TR信者さん >51 プロ信者か。いくらで光学迷彩をオークションに出す?
51.TR信者さん 見つからんし。
70.TR信者さん なんか光った!
73.TR信者さん レーザーライフルwwwww
78.TR信者さん >73 まじで社員か!?誰か画像アップして
80.TR信者さん 新しい武器のテスターか?実地テストかよ
88.TR信者さん レーザーライフルで頭打ち抜かれて$50,000くらいの武器を奪われた俺が来ましたよ
32.TR信者さん なんかすげー爆発してる
90.TR信者さん やられた。いきなり手榴弾でやられた。強過ぎ。
ムラハシは適当に流し読みしながら考えていた。
まず、Believer達の中では、忍者(サエリ)は伝説的な存在だということ。彼女がゲーム上には存在しない非公式な武器を使っていること。あの戦闘で確認した限り、TR内部の関係者ではないこと。
最新の書き込みを読んだ。
578.TR信者さん 自爆覚悟でハンドグレネード巻き付けて攻撃待ってればいいんじゃね?
589.TR信者さん >578 熱光学迷彩ごと消えるし、$も獲得できなくね?
578.TR信者さん 名誉の戦死
603.TR信者さん 爆薬身体に巻いてみたww 逝ってきます
612.TR信者さん >603 お前ww ちょっとまじやめれ
ムラハシは携帯でサエリ宛てにショートメッセージを送った。「肢体に爆薬巻いて自爆覚悟で攻撃しようとするやつがいるから気をつけろ」すぐに返信が来た。「了解。もうログアウトする。派手にやりすぎた。」

   




僕は家で小説のプロットを書いていた。
前に書いた小説をプロットなしで書いたせいで、話の筋がない、冗長な物語になった教訓からだ。
登場人物は、通販の女性下着を売る女性の社長の話で、六本木のキャバクラ嬢からホステスになり、銀座のホステスになり、店を持ち、そして下着の通販の会社を作った。
下着の通販の会社は、成功していたが、それはいわば、表の仕事で、裏の仕事は、政治家や大会社の社長に女性を斡旋する仕事をしていた。
主人公の女性は紛れも無い俗物だったが、人間的魅力がそれを感じさせない。
その女性を中心として、世の中の縮図を描き出す話だったが、どことなく作りっぽくて、小説は進まなかった。
なんとなく僕は友人(女性)にメールを送った。
今週の火曜に彼女に会う予定だったんだけれど、彼女に会えなくて、彼女の元アシスタントの女性と話をしていた。
元アシスタントの女性は、健康そうに焼けた肌、白く綺麗に揃った歯、素直そうな黒い小さな目が長い前髪にかかって見えて、なんとなく僕は父親のことを思い出した。父親の目に似ていたから。
ときどき、父親が昔飼っていた牛の話を思い出す。「人懐っこくてねぇ。手を伸ばすと手を舐めるんだよ。」父親の限りない善良さは、そういう動物の影響かもしれない。
だから、彼女と話をしていた時、その目を見ては、何度も僕は人懐っこい子牛のこと、その子牛の悪いことを何も知らなさそうな父親の目を思い出した。彼女の垂れた目と、ほんの少しの皺。
それで、会うはずだった女性の現アシスタントが代わりに来て僕は手紙を受け取った。
手紙の内容は、気にかかることがあって会う気になれなかったことを詫び、そして、旅行の土産のエルメスの香水について(「あなたに似合うと思って」)、最後に、自分は人と打ち解けるのに時間がかかる人間だと伝えていた。
僕は、女性から手紙を貰うのは、それが初めてだった。彼女は僕の倍くらいの年で、倍くらいの年の女性の知り合いはそれほど沢山いないけれど、彼女達はみな賢く、男性と適切な関係と距離を作るのが皆上手だ。
手紙を受け取って、帰りに元アシスタントの女性に一枚のCDを渡して、もう片方を会えなかったひとに現アシスタント(僕はギリシャ神話の神々の使者Hermesを連想した)にもう一枚のCDを渡した。
正直に言って、どちらのCDをどちらに渡しても僕は構わなかった。甲乙付け難いほど、気に入っている音楽だし、そのどちらの女性も選べないほど魅力的だったから、というのは嘘で、
もっと正直に言って、いちいち物に意味を込めようとは思わなかったからだ。
下の文章の通り、物事を飾る豊かさというものに僕は興味を持っていなかった。
****************
辻さん。
こんばんは。

先日は会えなくて残念でしたが、あなたに会えなかったのは残念でしたが、あなたの友人と話が盛り上がって楽しかったです。
嫌いな食べ物の話で、ハムメロン(メロンハム?)で盛り上がったときがとても楽しかったです。
途中で話が中断してしまいましたが、僕がしたかったのはこういうエピソードです。

ハムメロン(メロンハム?)を最初作ったのは、ニューヨークの創作料理の有名料理人が、話題の料理を作るために無理矢理作ったのがそれで、
初めて世に出たときの反響は凄まじいものでした。でもやっぱり、最先端のクールな雑誌に載るような有名店が出した創作料理なので、評判がいい訳です。
でも、それを食べたなかの少なくない人達は食べたときに、内心では首をかしげてしまいます。「これはどうかなぁ。」「いやいやいや食えたもんじゃないから。」とか。
けれど、雑誌で評判になり、それはクールな最先端の料理店で出しているので、みんな心ではどう思っても、「Nice!」とか「Cool!」とか「Delicious!!」とか言っちゃうわけです。
それが、僕がハムメロン(メロンハム?)が嫌いな理由です。
あと、酢豚のパイナップルも嫌いです。
それはやっぱり上海の超一流のホテルで。という話もあります。

返事の見込みがないメールも気が楽でいいですね。
好きなことを着地点や返信のし易さを考えずに延々と書けるなんていいじゃないですか。
そんなわけで、返信を念頭に入れないですむなら、というわけで、やたらと長文にしようと思います。
喋るのは苦手だけど、書くのは得意です。巧い訳ではありませんが。得にテーマがないときなんてならなおさら饒舌です。

香水、嬉しかったです。
似合うようになるまで待つほうがいいんでしょうが、来週何かあって死ぬかもしれないし、使おうと思います。
僕もあなたと同じで恐がりなのかもしれません。ただ、そこから導かれる考え方の違いだけで。
もし使い切ったら違う種類の香水をあなたに貰おうと思います。不躾でしょうか。
僕は誰かと知り合うときはそれからずっと続くと考えます。

CDは聴いてくれましたか?
『Just Calling For You』はとてもとても大切に思っている曲です。終盤のピアノソロを聴くたびに、何かを思い出せそうな時の感覚になります。

ところで、辻さんはハムメロン(メロンハム?)は好きですか?あと、酢豚のパイナップルとか。

たった今、もらった香水をつけてみました。香水をつけるのは生まれて初めてです。感想はですね、……
昔、父親がつけてた整髪剤の匂いをもっと清潔にして、スマートにした感じがしますね。
凄く嬉しいです。
関係ありませんし、どうでもいいんですけど、父親はマルボロという煙草ばかり吸っていました。

さて、これだけ長文になれば、間違いなく辻さんから返事があることはないでしょう。ハハハ。
でも、僕はかまいません。ここまでつらつら書くのは結構楽しかったからです。

また会ったら挨拶しますね。
きっとまた上手く話すことはできないでしょうが。

あと、気が向いたら、またこうやってメールするかもしれません。
もちろん、その時も返事は無くてかまいません。

最後に。
洗練(彼女からの手紙には『あなたがもっと洗練したらこの香水が似合うようになるでしょう。』と書いてあった)という言葉について考えていました。
あなたが言わんとする洗練は、なんとなくイメージがつきます。
それで、僕にとっての洗練について話したいと思います。
僕にとっての洗練は、物事(ゲームと言ってもいいかも)を効率よく処理することです。
簡単に可愛い女の子と寝ることができたり、楽をして沢山のお金を稼いだり、そういうことです。
きっとあなたが考える洗練とはかけ離れていると思います。
共感を求めているわけではないので気にしないでください。
ただ、僕が言いたいのは生活を飾ること以上に、生活を過ごしやすくしたいということです。
これは多分、余裕のない人の考え方かもしれません。

そろそろ、作文も1時間くらい続けてる気がしてきたので、やめます。

おやすみなさい。
あと、この文章を今書いてる小説にそのまま流用するかもしれません。あしからず。
では
****************
Tony HymasのCDはパッケージを開けて、自分が散々聴いていたものだから、彼女は気を悪くしたかもしれないと思いつつ、一つ考えが浮かんだ。
現アシスタントの女性が、そのCDを開けて聴いたかもしれない、という仮定だ。CDはいくら聴いても磨り減らないし、もし、使者のあの子(僕の3つだけ年齢が上だ)が、
僕の渡したCD(「9曲目を聴いてほしい」と伝えた)を、聴いたときに、何を感じたのかを僕は知りたくなった。それはある意味、この小説に似ているかもしれない。
ごくごく個人的なことを、共感できる形に加工して、パッケージングする。

『Just Calling For You』という曲のエピソードがもう一つある。
ミュージシャンのイノさんが経営している恵比寿のカフェでイベント、一度だけ朝食を共にした精神科医が死んで、彼らの周りの人達が開いたパーティーに出たことがある。
そう、ちょうど、このときのことは前にこの小説で書いた。たしか、ハプニングバーで働く女の子に連絡をした、あの夜のことだ。
そのイベントの最中に、ある女の子(間違いなく良い育ちをしている)から、「あなた、みんなと全然違う。」と言われたことだ。
動物的な直感なのか、後天的な社会階級で手に入れた感覚からなのか、はっきりと僕は「あなた全然違うけどなんでいるの?」と言われた。
その時、僕は怒ったわけでも、侮辱されたと思ったわけでも、傷ついたわけでもない。漠然と、同時に、明確に、『飢え』について『洗練』について、そういう考えが頭を離れなくなった。
OK
僕は、僕の言う意味で’しか’洗練されることはないだろう。
それで、違う夜に、僕はイノさんと話をしていた。その夜、彼のクールな奥さんもいた。前会ったときより、ずっと疲れているように見えた。彼のクールな音楽と、クールな奥さん。
「イノさんは深刻に考え過ぎなんですよ。」と確か僕は言ったと思う。違う言い方をすれば「鬱病をこじらせる必要はないよ」あとなんだっけ。ピアノの音について、音楽を始めたきっかけ。幼少期のきちんとした音楽の訓練。
それで、僕は彼にTony Hymasの『Just Calling For You』という曲の話になった。ストイックな彼の音楽に比べると、ロマンチック過ぎる気もしたけど、だからこそ見えないものが見えるようになるかもしれないと思った。


この文章は渋谷のセンター街のマクドナルドで8/16に書かれた。
太平洋戦の終戦記念日の翌日だ。
近くの席には3対3の、ルックスが可愛い女の子とかっこい感じの男の子(彼らはきっとロウティーンだろう)と、小説家ポール・オースターに似た人達がいる。
ポール・オースターであれば、終戦記念日の翌日だってことと、彼ら6人の日本人の男女から何かの関連やメタファーのようなおかしな偶然を見出そうとするかもしれない。
世の中は複雑だし、年を取るごとに、生きることは難しくなっていく気がする。だからこそ、僕は生きることは容易にしたい。
旨い物を食って、良い女と寝て、好きなことをして、それだけで構わない。

3◇

2009年8月15日

人と協力しながらのほうが生きるのはずっと簡単になる


必殺技みたいなものが欲しい
真似るのが巧いとか
仕事が早いとか


運が欲しかった普段の枠から出ないといけない
その頃、ムラハシは手に入れた散弾銃の試し打ちをしている。
さっきの小銃とは比べ物にならないくらい大きな衝撃が両手が揺れる。
店の中の椅子や机が壊れるのを見ていると、これを何か人に向けて打ってみたくなった。
Saeri「肢体も減らしたから遊べるよ。外に出て来なよ。」
Murahasi「緊張する」
Saeri「すぐに慣れるよ」
Murahasi「何にでも慣れるもんだ」
その直後に2階に駆け上がる音がする。
Saeri「今から一体追い込むから、自動ドアが開く瞬間を打って。」
さっき一気に叩いたチームのなかから逃げ出したやつを、サエリは銃撃が当たらないように、なおかつ、逃げずにはいられないような火力差で敵を追いかけまわしていた。
追いかけられるほうのレーダーにはムラハシの機影も表示されているだろうが、きっと向こうは、見えない敵に確実に仕留められるよりかはマシだと思っているはずだ。
ドアが開いたときに、向こうが手に何も持っていなかったことに気付いたが、ムラハシは躊躇わずに砲火した。
炸裂する銃弾が防弾チョッキを中心に、手足や頭に命中して、即座に後ろに跳ね上がって倒れた。
Saeri「レーダーからまだ消えてないわ。もう一発打って。」
Murahasi「倒れてるけど。」
Saeri「はやく」
倒れていた男が立ち上がりながらナイフを抜くと、異常に速い動きでこっちに向かってきた。gainモード!
すぐ目前に突きつけられたナイフが、届くそのギリギリでショットガンが相手の顔面で炸裂して、頭が背中に吹っ飛んで反動で前後に揺れながら倒れて、身体が震えている。
あまりのリアリティーに目を背けたくなった。顔がグチャグチャになっていて、見ているだけで痛そうだ。原形が無くなっている。こんなことにも慣れるんだろうか。
Saeri「無事?」
Murahasi「君はどこ?」
Saeri「Neglected children are made to feel invisible.」
Murahasi「?」
Saeri「さっさとそいつの武器を剥ぎ取っちゃいなさい。あなたに必要なのはもっと強力な武器と沢山の経験よ。」
ムラハシはナイフと防弾チョッキを取って、身につけた。外では、銃撃音がずっと続いているが、戦車が大砲を打つ音が他の音をかき消す。
Murahasi「窓から見てたけど、あいつら全部やっつけたのは君?」
Saeri「そう」
Murahasi「もしかして女の子のユーザーなの?」
Saeri「女がゲームをしちゃだめ?」
Murahasi「まさか」
サエリは戦車と装甲車の設計図を眺めながら(webモードで兵器オタクの友達にさっき映像をキャプチャーして設計図を送り返してもらった)、襲撃の機会をうかがっていた。
装甲車の中から、蟻の群れみたいに次から次に新しい肢体が湧いて出てくる。
しかも、さっき、ビルの屋上から攻撃したのを見ていたほかのやつらが気付いて、どのビルの屋上にも敵が占拠するような状態になったし、鉢合わせした違うチームが同士打ちをするせいで、安全ではなくなっていた。
Saeri「あの戦車を殺ったら、ほかのエリアに行かない?」
Murahasi「いいけど、戦車をどうやって倒すの?」
Saeri「見てて」
レーザーライフルの出力を最大まで引き上げて、サエリはどこからともなく飛び降りて、戦車の真上に乗り、設計図と照らし合わせながら、銃を戦車に向ける。
ムラハシが窓から戦車を見ていると、戦車の上の部分が強い光を発して、動きが止まった。
戦車には黒い穴が空いている。それを覗けば地獄が見えそうだ。サエリはそう思った。
サエリは戦車がぴたっと動きを止めたのを確認して、次の戦車に飛び乗り、そして同じように、同じ場所を打ち抜いた。
Saeri「やっつけた!」
Muharasi「凄いね」
Saeri「すごいでしょ」
ムラハシのポケットの携帯電話が何度もバイブレータで揺れている。
ふと、今日はデートだったことを思い出した。
Murahasi「急用が入った。また会えるかな?」
chatモードにサエリのbeliever登録の通知が表示された。Saeriという名前と一緒に子供の白熊のアイコンが表示されている。
Saeri「登録しといて。ログインしたら、あなたのところに移動する。」
現実の携帯電話がまだ鳴っている。
Murahasi「なんでこんなに助けてくれた?」
Saeri「なんとなく」
ユキは考えていた。誰かを救いたいと思う人間ほど、自分を救ってほしいと思う、その思考について。
Murahasi「またね」
Saeri「じゃあね」
そしてムラハシは転送ポイントにgainモードで走り、ログアウトして、現実世界に戻り、サエリは、戦場に残り、戦い続けた。

最近のスタイル

2009年8月12日
突き抜けた気分がいいし
スカっとしてたい

グジュグジュ悩んで沈んでくより前に進みたい気分
池袋東口のマクドナルド2階。呼吸を殺しているが、じきに殺されるのはこの俺自身だ。
仲間達はレーダーから5分前に全員消えた。
噂だけで聞いていたが、それは都市伝説だと思っていた。2年間、集め続けていたこの狙撃ライフルを仲間が消える前に渡せなかったせいで、この3ヶ月間の初心者狩りで得た’マネー’が無駄になる。
ログアウトできるまで、あと20分。運がよければ、やつから逃げきれるかもしれない。
息を凝らす。
手にはめたセンサーが心拍数を感知して、嫌でも’肢体’の息があがるが、息の音以前に、やつが持っているスコープで俺の姿が確認されているかもしれない。
入り口は一つのドアだけだし、やつが入ってきた瞬間に爆破されるように設置は済んでいる。
外の通りを一望できる窓から狙撃されないように、店内の奥に身を潜めている。時間は残り15分。なんとかなるかもしれない。

突然、窓ガラスが砕け散って、ガラスが店内に飛び込んできて煙で一杯になる。耳がおかしくなるような強烈な音でパニック寸前になる。
こうなることは予測していた。煙幕を使って一気に窓まで走り抜ける。
通りに出たところを狙撃されないように煙幕を投げてから、通りに出る。池袋駅のほうまで走れば転送ポイントがある。カラサワ製の自動肢体を緊急モードにして稼働させる。
頭に付けたギアに伝わる脳波の強さに連動して、そのうえ緊急モードにシフトした肢体で五輪レベルの全力疾走で走り始める。
倒れて火の上がった装甲車や、ただの車をくぐり抜けて池袋駅に入ろうとしたところで、目の前で爆発が起こって、身体が吹き飛ばされる。
手首と足首に巻き付けたリストバンドから電流が走る。肢体が吹き飛んだときのあの痛みほどではないにしても、何度食らっても慣れない。ただ、これが無ければこのゲームの面白さなんて無いのと同じだろう。
痛みがあるから、生を実感できるのだ。

吹き飛ばされて、地面に叩き付けられた瞬間、その0.5秒間、目の前の何も無い空間が蜃気楼のように揺らいで、その次の一瞬、目の前が真っ暗になる。
デフォルト画面になって、自分が『True Religion』からログアウトされたのが分かった。
呆然としながらも、チャットにつないで、仲間達に報告した。
「おい、あれってやっぱり噂のあれか?」
「ああ。やつだ。」
「ネット上の嘘だと思ってたけどな。」
「っていうか見れた?」
画像が表示される。
「これ、俺がキャプチャーした画像。」
表示された画像には、仲間のひとりが路上で一人で首を150度の角度で捻られている画像だ。
「光学迷彩・・・。まさか本当にやつが存在するなんてな。」
「遭遇したのが幸運なのか不幸なのか。」
「通称、『忍者』か。」
「もし、やつを殺ってたら手に入ったのにな。」
「でも、武器なしだぜ。武器は迷彩で消えないんだろうな。」
「ああ。俺もそれが半端ないと思う。」
「俺これから出社だから、落ちるわ。」
「またな。」
「ああ。」







透明のビリーヴァー(believer:信者という意味。TRのユーザを指す。)の出現情報は、
あっという間にネットに広がって池袋のエリアにログインするユーザが一気に増えた。
いつもは30名のビリーヴァー達が争う戦場が180名まで膨れ上がった。
過密状態の空間で、彼らは同士打ちを始めたが、ログアウトされる数とログインする数で、その両方が相殺しながらでもログイン数は加速した。

ムラハシがTRをするのは、その日が初めてだった。
ログインカードを1000円で発行して、筐体に差し込む。
筐体は縦横高さのそれぞれ2メートルのつや消しの黒で、その筐体(名称は無いが、欧米のユーザのなかでは俗称で『カーバ』と呼ばれている。)から四方に4人分のキーボードが配置されていて、それ以外の接続機器が伸びている。
同じく真っ黒の卵を転がったまま横に切ったような、ソファと椅子の中間のような形の椅子に座る(横たわると座るの中間だ。)。なんていうか、すっごくクールだ。
両手足の手首と足首にリストバンドを付ける。これは微弱な電気と振動を伝える装置で、電気で痛みを感じる仕組みに大きな批判が起こったが、RTが世間に浸透してから既成事実となった。
人指し指に指バンドをはめる。これはユーザの心拍数を測る装置で、心拍数が肢体(TR上のビリーヴァーの肉体のこと)の動きを左右する。次世代のRTではリストバンドに組み込まれる予定。
装着型のディスプレイ(正式名称はヘッドマウントディスプレイ)を付ける。イメージが付かないひとには、映像が見れるサングラスと言えば分かり易いだろうか。これで擬似的に視覚は、超大型のディスプレイ、いや、意識は、力が全ての疑似世界に埋没する。
それからヘッドフォン。TRの装置中ではいちばん現実味がある。なんてことはない。ただのヘッドフォンだ。ただ、これは現実の爆発音をそのまま再現すると、難聴になるので、適度に音が制限されている。それでも、普通のポータブルプレーヤーを最大の音量で音楽をかけるくらいにはなる。
それから最後に、ヘッドセット(当初ヘッドギアと呼ばれていたが大量殺人を起こした宗教団体を思い起こさせるという理由で、ヘッドセットと呼ばれるようになった。)を頭にかぶる。ヘッドセットはメロンや果物を保護する半球のザルみたいなアレによく似ている。これがTRを他のウォーゲームとはっきり区別する点で、ヘッドセットは装着した人間(猿がこれを装着して動作させた例がある。)の脳波を受信するのだ。
具体的に説明すると、人が歩くときに、脳から身体に電気信号が送られる。この脳の信号を、脳味噌に接触させずに、読み取って、TR上のキャラクタである肢体が、動くのだ。
実際に肢体を動かすときに身体を動かす必要はない。その部分の身体が動くイメージをする。そうすると、TR上の肢体は、そのイメージそのままにシュミーレションして動く。
キーボードは元々、身体に付いていないを動かすときに使われる。ショートカットを使って身体機能を、現実を遥かに超えるレベルまで引き上げたり、兵器を操作したりする。キーボードで「gain」と打ち込む。次世代のRTでは、このキーボードすらなくなるらしい。gainやfly(空を飛ぶパーツを身につけた肢体が使えるコマンド)のイメージをする動作を用意するんだろうか。
(開発者のアダム・ヘイズリット(ビリーヴァーのあいだでは「AH(エーエイチ)」や「アダム」などと呼ばれている。余談だが、『True Religion』は開発段階では、『Haslix(ヘイズリックス)』と呼ばれていたが、後述の『True Religion Plan』のために、名前が変更された。)は、元々、DARPA(国防高等研究所(アメリカの軍事の最先端の研究する団体))の研究員だったが、軍用の技術を、民間にも開放する’デュアルユース政策’を利用して、『True Religion』のヘッドギアシステムとゲームに流用する部分、そしてゲームそのものの殆どを作り上げた。そもそも、ゲームは軍人を効率よく安く訓練するための軍事目的のソフトだった。)
全ての端末を取り付けたムラハシは、『端末の装着を確認しました。初回練習モードに入ります。Enterキーを押してください。』の表示にしたがって。エンターキーを押した。
画面はただっ広い、草原になった。誰もいない。風の音だけが聞こえる。モンゴルの草原みたいだ。
ヘッドフォンからは優しそうなガイダンスの女性の声が聞こえる。眼前には何も見えない。
「True Religionへようこそ。」
と一言。2秒間の沈黙。ムラハシは、この’溜め’が役者だ、と思った。
「あなたはこれから5分間の導入訓練を受けたあと、戦場へ送られます。さっそく、訓練を始めましょう。歩くイメージをしてください。現実の身体を動かす必要はありません。あなたの身体があるくイメージです。」
ムラハシはアナウンスの通り、歩くイメージをする。足に付けたリストバンドから、かすかな振動を感じる。凄い。
そのあと、走る、止まる、座る、立つ、跳ねる、一通りの動きの訓練を受けると、キーボードの操作に移った。
「キーボードに『chat』と入力してください。」
画面上に半透明のチャットのウィンドウが開いた。
「これで、あなたはチームを組んだビリーヴァーとチャットすることができます。チャットのウィンドウを閉じたい場合には、ウィンドウ上部の×ボタンを見つめながら、コントロールキーを押しながらQのキーを押してください。」
いつか、これを戦闘しながら、操作することができるようになるんだろう。
「次に、『gain』と入力してください。」
画面の左上にGと表示されたのと同時に、キューンという電動のドライバが回転するような音が聞こえた。
「あなたはゲインモードになりました。通常の動作を3倍から10倍の速度とパワーで行うことができます。走る操作をしてください。」
走るイメージをすると、風景がどんどんと吸い込まれていって、風を切る音と芝を踏みしめる強い音が聞こえる。足のリストバンドの振動は、異常なほど早く、さっきと比べ物にならないくらい強い。
速く。もっと速く。速度は増しドライバの音が耳元で唸る。
「止まってください。」
止まると、足下で土が抉れて飛び散った。
「射撃モードに入ります。」
手元には知らぬ間に銃が握られている。
「キーボードに『shot』と入力してください。」
視界に赤く点滅する光が浮かび上がる。
「視線に反応して表示される赤い点がが射撃位置です。銃を持つ右手を標的に向けるイメージをしてください。」
銃が向けられると同時に標的が何もない空間に浮かびあがる。円が幾十か重なった黒い的。
「視線を的の中心に合わせて、トリガーを引く動作をイメージしてください。」
弾ける音がした瞬間に右手のリストバンドがビクっと振動して、的が粉々に砕けた。
「以上で導入訓練を終了します。あなたはこれから戦闘を開始します。」
一秒後に、ムラハシは街にいた。見覚えがある。ここは池袋東口だ。爆発する音や、何かが壊れる音、発砲音、そういったものの最中に巻き込まれている。
何人もの兵士が30メートルくらい先を武器を持っては知っている。きっとマシンガンだろう。タタタタタとという中東のニュース映像で聞こえる例の音が聞こえる。
一ゲーム500円という比較的高額のアーケードゲームだから、ちょっとパニックになりかけたけど、落ち着くように、右手の黒い銃を握りしめる。視界の右上には銃弾のマークの下に999/1000と表示されている。


またレーダーに一人ユーザが増えた。
単体でログインするから、きっと初心者だろう。そのユーザの近くに隠して配置した遠隔小型カメラ兼レーダー(池袋エリアには同様のカメラ兼レーダーが30個ほどサエリが配備していた。)に屋上に伏せたサエリは、遠隔操作モードで視覚を飛ばした。
Tシャツにジーパン、片手に小銃、完璧な初期状態。たぶん、5分も保たずに他のユーザに射撃されてログアウト、っていうところだろう。あまりの敷居の高さにもうログインすることはないかもしれない。
サエリはなんとなく、あのユーザを守りたくなった。特に理由があったわけじゃない。chatとタイプしてコンタクトを取る。
Saeri「ねぇ、あなた初心者でしょ。そんなところに立ってると危ないよ。生き残りたかったら、まず遮蔽物に隠れること。そこの交番の入り口あたりが最適ね。」
肢体が少しの間ウロウロして、なぜかgainモードで高速で歩いて交番にほうに向かっていって、それからほんの少しの間があって、サエリの画面にこう表示された。
Murahasi「君は誰?これって訓練モードの続き。」
Saeri「もう実戦よ。ちょっとわけあって、偶然あなたが飛び込んだこの空間はいつもの5倍くらい肢体がいるの。しかも、ほとんどが中級者以上。」
Murahasi「どこにいる?」
Saeri「隠れてるから見えないし、見つけることもできない。」
ムラハシのほうに接近する3人組の肢体を小型レーダーが探知している。
Saeri「ちょっとそこから動かないで。」
サエリはgainモードを限界まで設定したのを確認したあと、大通りを挟む30メートルのビルとビルの間を助走無しで跳躍する。
ノースロップ社製の限界まで改造された両足が、破壊的な力でビルを蹴って、屋上にひびが入り、足のめり込んだ刹那、45度の角度で跳び上がる。
向かいのビルに着地した瞬間に振り返り、右股が開いて、そこに隠してある銃砲を切った小型レーザーライフルを取り出して、ビルの端に伏せて、shotモードに入って交番の近くを中腰で移動する3人組のいちばん後列に照準を合わせた。
gainモードに設定してから照準を合わせるまで、わずか9秒間。10秒目には、一人目の肢体を死体に変えた。そして、後方が倒れた音で立ち止まった二人を打ち抜いたのは、13秒目だった。
股に銃をしまって、再度の跳躍。
ビルの屋上の光線を見たやつらがビルのほうに無闇に射撃するが、そこにはもうサエリはいない。
Saeri「悪いやつらやっつけたから、交番の横を見てくれない。」
Murahasi「倒れてる。」
Saeri「そこの死んでるやつらから武器を取って。で、すぐに逃げて。すぐ奪えるのは銃だけだから、先頭のやつのショットガンね。」
Murahasi「勝手にもらっていいの。」
Saeri「空間から肢体が消えるまでは10分間。その時間は自由に装備品を奪っていい。敵を倒してないやつでもね。」
Murahasi「了解」
Saeri「じゃあ、その武器を持って、そこのマクドナルドに入って二階に登って。」
西武デパートの屋上に隠した武器のなかから、閃光弾(破裂と同時に大音響と閃光を発する手榴弾の一種。閃光弾)の箱を選び取る。
駅の前の大通りに陣取った100人くらいの装甲車(4両)と戦車(2両)の連中がいて、武器を持って戦場に出て行くタイミングを測っていた。
Murahasi「どうすればいいだろう。」
Saeri「ちょっと掃除をするから待ってて。」
一本の指に二つの閃光弾のピンをはめて、合計8つの閃光弾を片手に持つ。
地上に陣取るっていうのがセンスないのよね、とサエリは思いながら、捨てるように、M84スタングレネードを放り投げた。一個目が地面に落ちる前に、二個目のピンを引いて投げていた。
まるで、時限爆弾が連続で爆発し始めるみたいに、視界を奪う光が炸裂して、それが何度も連続した。6つ目が爆発した頃にやっと反撃が始まったが、パニックを起こした5人くらいが、デパートとは全く違う方向に射撃していただけだった。
8つ目を放った時点で、装甲車と戦車に入っている以外のほとんどの肢体はパニックを起こして、転送ポイントに逃げ込んでログアウトしていた。パニックは伝染して、少なくない肢体はそれに続いて、頭数の半分くらいはいなくなっていた。それでも、サエリのレーダーは砂粒のように敵の群れを映していた。
閃光弾に変わって、本物の金属片が爆裂する手榴弾をさっきと同じように8つ指にはめて、今度は同時に投げ落とす。視覚装置を赤外線に変えた(光学迷彩対策でそれがあれば)肢体達は、落ちてきた手榴弾を冷静に視界に収めてじっと動かない。
爆弾の投下から5秒開けて、華麗な軌道を描きながらサエリは跳び上がった。
サエリがgainモードを全開にしながら、空中で跳び上がった一番高い位置に届いのとほぼ同じタイミングで、地上ではM67破片手榴弾が飛び散り、わずかな衝撃が両手足を揺らす。
そして落下。
感じるはずのない重力を全身で受けながら、周囲に包囲するように設置した小型カメラに神経を集中する。なぜなら、何も考えなくても身一つで全ての肢体を破壊すること異常に、外野から狙撃するリスクがあったからだ。
まだ戦闘に参加できる肢体は、サエリが無音で着地した時点で8名にまで減っていた。
動揺している状態がなるべく続いている間に、近距離向けの装備をしている肢体から叩く。この場合、散弾銃を持つ白人タイプの肢体、短機関銃を持つ同じくメスティーソタイプの肢体。
武器の安全装置を外している前者をファイティングナイフで頸動脈を一線、最初の男が倒れる前には、後者の男の股に投げられたナイフが刺さり、膝を付くと首がひしゃげるが、そいつが見ていた光景は、ただ宙を浮くナイフのみ。
なぜ赤外線で姿を感知できないのか考え間もなく、ログアウトされた。
騒然とした半径30メートルの空間で残る肢体は6名。メスティーソタイプが持っていたをH&K MP5を手から奪いさって超高速で、対空砲をこっちに向けようとする肢体と、片腕が吹き飛んだ小銃を持つ2体の肢体の頭を打ち抜いて、短機関銃を捨てた。投げ捨てた場所に、高速で飛び込んできた大型の何かが落ちて爆発した。
近くで、馬鹿みたいに止まったままだった戦車が山勘で、攻撃を始めた。
目的を達成したことを理解したサエリは、跳び上がり、消えた。

正解とか人生とか

2009年8月9日
何が幸せかはひとによって違う。
っていう論旨の文章を読んだんだけど、確かにそれはあると思う。
歌を歌うのが好きな人もいれば、絵を描くのが好きな人もいる。


ただ、誰にでも共通する幸せもあると思う。
その共通の幸せが何かっていうのは僕にはよく分かってない。

(幸せって書くと綺麗な感じするけど、欲望ってダーティーに言い換えてもいい。)

自分に言い聞かせてることを他人にも押し付けるのはよくないって反省してる。
誰だって得意なことと苦手なことは違う。
渋谷兆楽で中華丼食ってるんだけど、ここの中華丼はまじ旨い。

外では可愛い女の子達が半乳だして歩いてる。仕事はあるけど、要領よく乗り切ってる。

夜に急に寂しくなって文章書くどころじゃないときにはどうすればいいんだろう。

家が近い女の子でも見つければいいのか。

小説は、今までと全然違う内容を書いてる。
自分の書きたいものを書く、というスタンスを全開にしている。
問題はスケールが大きくて文章量も書く力も足りないことだ。
ただ書きたい気持ちにが強すぎて書かざるを得ない。

オーバー

2009年8月5日
いま書いてる内容が明らかに自分の力量を超えてて面白い

映像じゃないと伝わらないものを無理やり文章にしてる
地下鉄の入り口の終電の時刻表を見ると、終電から15分過ぎていた。遅過ぎたのだ。「電車ないね。」と詩子は言いながら、本なんかで読んだり見たり聞いたりする通りだったら、ここで私達はラブホテルに二人仲良く入っていくに違いない。「タクシーで送るよ。」「言ったでしょ。私、帰りたくないの。」フルカワは頭を掻いて「お母さんだって、家に帰ってきて君がいなかったらびっくりするんじゃないかな。」「いつものこと。」
フルカワがここまで話をして、僕の携帯の電話が鳴って、電話に出て、自身をデリバリーすることをフルカワに伝えて、急いで部屋を出た。玄関に見送ろうとしたフルカワに「その話の着地点は予想がついてる。」と靴を履きながら言った。そう言ってフルカワが何かを考えているあいだに「急ぎなんだ。」と言って礼儀を無視していることを分かったうえで、家をすぐに出た。

フルカワの家から電車を乗り継いで、終電近い京浜東北線で彼女の家に向かう。
僕は上に書いたことの要点をブログに書いて、それから小説に書いて、少し考えた。このセンテンスを書く前に自分はカポーティの『叶えられた祈り』の文体をトレースするように書こうと思ったのに失敗した。冗長だ。







「人は真実を知らないほうがずっと幸せだ。少なくともほとんどの弱い人間にとっては、真実は重荷でしかない。」
その書き出しから、のどかの長編小説は始まっていた。
小説の序盤は一人の男が韓国の貧民街から違法入国した大男が成功について。
中盤はその男が血の繋がりの無い二人の女の子と、実の息子を得るに至った経緯と、二人の女の子と後見人になった男の話。
(その息子の母親について小説では触れられていない)
終盤は、二人の女の子が支配的な環境から逃げ出す話。
ここで『Fine Romance』の上巻は終わる。
下巻は、後見人になる男がいかにして、大男(父)に取り入って成功し、
そして、なぜ男がわざわざそのレコード会社を手に入れようとしたかの話になる。
フルカワの恋の話。
学生の頃にクラブで見つけた女の子に恋に落ちる。
金のないことや、相手には成功したミュージシャンの彼氏がいて結局恋は実らない。
落ち込んでいたところにアルバイトを見つけてシロの父親の会社の求人をみつける。
最初は社長とは接点の無い部署で働いていたが、ドライバーの職を得て気にいられる。
仕事ができることを認められ、(その数々のエピソード)相談役になりその頃、司法試験にごう合格する。
ある出来事で憧れがシロの父親にバレる。
そこでシロ(父)にその女の子のマネージする仕事を任される。(作者はこれをシロの父親の悪意として書いている)
期待を持ちの仕事につき恋人との再会を果たすが、間もなく彼女が政治家やマスコミの役員などに愛人として身体を売っていることを知る。
(このあたりのシロ(父)とフルカワの言い合いは小説の最大の見せ場だ)
フルカワは絶望し、失踪するが、見つかる。
シロの父親に打ち明けられる。女の子を二人預かっていること。
(その女の子達はシロ(父)が良く使う高級な会員制の売春の店に残された名もない子供達だ。
文章ではこのあたりは信じられないくらいあっさり書いているけれど、考えるほどタフな内容だ。
なぜならシロ(父)も同じように貧民街で両親を持たず育ったからだ。)
自分がガンを患っていて、周りには信頼できる人間がいない。遺せるものについて話す。
そして、今フルカワは新しい形で夢を手に入れたが、だがそれでもフルカワは立場として手に入るかつての恋人を自分のものとはしようとしない。
夢を失って、それ幻影であることを理解しながらも、諦めるられないままでいる。
そして、同時に、いまアイドルを目指す女の子と愛人でいること。もう信じられるものない。
物語の最後、フルカワは新しく知り合った若い友人(これは僕とムラハシをミックスした人物を作り上げたキャラクタによって行われる)に、
自分がかつて持っていた幻想を見出して、それを壊そうとするところで終わる。






その夜、のどかと僕は『真実』について話をしていた。
ひとは本当のことを知るほうがいいのか、知らないままでいたほうがいいのか。
僕は後者の立場を取り、彼女は前者を選んだ。
「いろんな連中が自分を騙す瞬間を何度も見てきた。」
そう僕は言った。いくら酒を飲んでも酔わない夜だった。
「何かを隠されたまま生きてことは損だと思うの。別に善悪の問題じゃなくてね。」
「知って損することもあるんじゃないかな?」
「例えば?」
「好きなひとが別の異性と浮気してるとか、死んだら’何も無い’っていうこととか。」
「そんなの気付くに決まってるじゃない。」
「気付かない連中もいる。」
「私、そんな無神経な連中耐えられないわ。」
「自分にとって不都合なことに目を向けようとしないのは誰だって同じだし、それは本能みたいなものだからどうにかなるものじゃないんじゃないかな。」
「でも、だとしたら、その本能を利用しようとしたら、利用としようとするやつの言いなりじゃない。」
「そうかもしれない。」
のどかは腕を胸の下で組んで斜め右下のあたりを睨んでいた。
僕はこう付け加えた。
「でも、どっちが悪いってわけじゃないんだ。騙されるやつは嘘を必要としているし、騙すやつだって与えてほしいことが分かってるから。」
「なんで虚構と欺瞞が必要なのかしら。」
「弱いからだよ。強く現実的であろうとするより、弱いままで怠惰でいるほうが損をするとしても楽なことだから。君はどう思う?」
「想像力の問題だと思う。」
腕を解いて彼女はテーブルの上に人差し指で線をひいていた。
「ねぇ、小説は嘘じゃないの?」
「嘘よ。でも、それは真実なのよ。宝石のようなもの。岩石を削って形を整えた本質が真実なの。」
僕はこんなこと話をしていてもキリがないと思った。
「そんなことよりゲームをしようよ。」
「いいよ。」
「じゃあ今日は『使ってると知的っぽい言葉。』」
「『スキーム』」
「『モダン』」
「『ロジック』」
「知的っぽい言葉といえば村上春樹の新しいの読んだ?」
いつも通り彼女の思考の飛躍と、唐突さに呆れながらも僕は答えた。
「読んだ。」
「どう?」
「面白かったよ。」
「そう、確かに面白かったけど、でも、あの『パッシバ』がなんちゃらっていうところは最悪よね。」
僕は肩をすくめた。彼女は続けた。
「面白いのは認めるわ。少なからず影響も受けたしね。でも、やっぱりあのインテリ気取りの部分が耐えられないの。」
「実際にインテリなんじゃないかな。」
「絶対に本人は認めないんじゃない。私、小難しい言葉を使って自分を良く見せようとするのって、いっつもダサいって思うの。」
「そこに置いてある君のプラダだって同じだよ。」
「これはただの商品よ。」
「小説だって、デザイナーがいて、生産があって、宣伝がある。モダンでロジカルなスキームに支えられた立派な商品だよ。」
僕も彼女もむきになっているのは分かったけど、彼女と議論ごっこをするのは飽きないので続けた。
「でも、洋服やバッグは買った人間をよく見せるものでしょ。作家が自分自身を飾るために物語を書くなんてちょっと不誠実だと思う。」
「洋服デザイナーだって、ショーの最後に出て顕示欲を満たす。」
僕はビールを飲み干して付け加えた。
「君にはきっと、色んな内心の規則が沢山あって、それには、小説かくあるべし、とか、人間かくあるべし、とか、そういうのが沢山あるんだろうね。」
「スノッブの作者が気取って書いた小説を、スノッブな読者が喜んでそれを読むのってちょっと気持ち悪いの。」
「まぁ、彼の小説を貶す人達の嫌悪感を言葉にしたら、まさにその通りだろうね。でも、ほとんどの人間にとって創作に触れることは少なからずファッション的なものだよ。」
「自己表現。」
「そう。誰かが作ったものを選び取ることが表現なんだよ。」
「その自己表現だって盗品だと思うの。」
「創作する者にとっての常識だよ。」
「じゃあ、まとめるとこういうことよね。盗作の継ぎ接ぎで出来た作品を、購入者が自己表現として身に付けて、作者とエゴを擦り合わせて快楽を得る。」
瓶からビールをグラスに注いで、僕は彼女のグラスにも注いだ。
「むかし、友達が芸術作品の展示をしていて、僕はその作品の一部を盗んだんだ。トイレの水が流れるところに転がってる透明なクリスタルもどき。」
ビールを飲む。この商品はシンプルだ。飲めば気分が良くなる。それだけだ。
「それをポケットいっぱいに詰め込んで会場を出ようとしたときに、出口の脇にあった照明のスイッチのすぐうえに小指の爪くらいの大きさのシールが張ってあったんだ。
真っ赤な色の象のシール。真っ赤な象なんて見たことないだろ。鳥肌が立ったよ。だって赤色の象だぜ?たまんないよな。
その象をシールを剥がして(千年の呪いから解き放つように)、安っぽいクリスタルもどきを一つポケットから取り出して張ろうとしたんだ。
そうすると、展示をしていた人達のなかのひとりの女の子が来て、僕は叱られたんだ。
でも、だからって自分のやったことが、自分以外の人間にとってはただの盗難だなんてことは分かってるし、罰は認めるよ。ただ、罪を認めるつもりはないけどね。」
「そのクリスタルを使った作品ってどんな作品だったの。」
「そんなことどうでもいいよ。」
その時になって急に自分の大人げなさに気付いた僕は話を逸らした。
「うちに来なよ。小説よりもアートよりもファックのほうがずっと良い。」

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